労働保険事務組合とその他の規定
徴収法の締めくくりです。不服申立て・時効・立入検査・書類の保存・罰則を扱います。
最大のポイントは、徴収法には「〜審査官」も「〜審査会」も出てこないという点です。労災保険・雇用保険との3科目対比で押さえると、選択肢を見た瞬間に判断できるようになります。
簡単にいうと
他の2科目と決定的に違うところです。まずここを刻んでください。
労働保険徴収法の規定による処分に不服がある場合は、厚生労働大臣に対して審査請求をすることができます。そして、厚生労働大臣の裁決を経なくても処分取消しの訴えを提起することが可能です。
つまり、審査請求をするか訴えを提起するかを自由に選択できます。
労災保険・雇用保険と並べてみましょう。
・労災保険 … 労働者災害補償保険審査官への審査請求 → 労働保険審査会への再審査請求。保険給付に関する処分は審査請求前置
・雇用保険 … 雇用保険審査官への審査請求 → 労働保険審査会への再審査請求。審査官の決定後は自由選択
・徴収法 … 厚生労働大臣への審査請求のみ。自由選択
徴収法には専門の審査機関が置かれていません。「〜審査官」も「〜審査会」も出てこない、というのがこの科目の特徴です。
理由は、徴収法には行政庁の処分に対する不服申立ての独自の規定が定められていないことにあります。よって、行政庁の処分に不服がある場合には、行政不服審査法の規定に基づき審査請求をすることになります。
一般法である行政不服審査法によるので、審査請求の相手方は処分庁の最上級行政庁である厚生労働大臣になります。雇用保険の「保険給付に関する処分以外の処分」が厚生労働大臣への審査請求だったのと同じ構造です。
試験では『概算保険料に係る認定決定に不服のある事業主は、当該認定決定について、その処分庁である都道府県労働局歳入徴収官に対し、異議申立てを行うことができる』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。処分庁ではなく厚生労働大臣に対して、異議申立てではなく審査請求をすることができます(行政不服審査法2条、同法4条)。
具体例
概算保険料の認定決定に納得できない事業主は、厚生労働大臣に審査請求をしてもよいですし、いきなり取消訴訟を起こすこともできます。

労働保険3科目の対比(不服申立て・時効・保存期間)
試験のポイント
簡単にいうと
2つの期限が「かつ」でつながります。どちらか早いほうで締め切られます。
審査請求の期限は次のとおりです。
・処分があったことを知った日の翌日から起算して3月以内、かつ
・処分があった日の翌日から起算して1年を経過する前まで
2つの条件を両方満たす必要があります。方式は書面によります。
1つ目は主観的な期限です。本人が処分を知ってから3月以内。労災保険・雇用保険の審査請求も同じ3月以内でした。
2つ目は客観的な期限です。知っているかどうかにかかわらず、処分から1年で締め切られます。処分を知らないまま何年も経ってから争われては、法律関係が安定しないからです。
この2つの期限は行政不服審査法の一般的なルールです。徴収法独自の規定がないので、一般法のルールがそのまま適用されるという構造がここにも表れています。
流れを図で描いておきましょう。
・労働保険徴収法上の処分 → 処分に不服
・自由選択で「審査請求(書面)→ 厚生労働大臣」か「処分取消しの訴え → 裁判所」を選ぶ
簡単にいうと
雇用保険と同じ2年です。国税の5年ではありません。
労働保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅します。
徴収する権利も還付を受ける権利も、どちらも2年です。政府の側からも事業主の側からも、2年で権利が消えます。
試験では『労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金を徴収する権利は、国税通則法第72条第1項の規定により、これらを行使することができる時から5年を経過したときは時効によって消滅する』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。労働保険徴収法41条1項の規定により2年です(法41条1項)。
国税は5年ですが、労働保険料は徴収法に独自の規定があるので2年になります。滞納処分について「国税滞納処分の例により」とされているからといって、時効まで国税のルールになるわけではありません。
3科目の時効を並べておきましょう。
・労災保険法 … 2年(療養・休業・葬祭・介護・二次健診)と5年(障害・遺族)
・雇用保険法 … すべて2年
・労働保険徴収法 … すべて2年
5年があるのは労災保険だけです。
簡単にいうと
最後の雑則です。保存期間の3科目対比がポイントになります。
立入検査
行政庁は、この法律の施行のため必要があると認めるときは、当該職員に、保険関係が成立し、若しくは成立していた事業の事業主又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であった団体の事務所に立ち入り、関係者に対して質問させ、又は帳簿書類の検査をさせることができます。検査対象となる帳簿書類には、賃金台帳、労働者名簿等も含まれます。
対象に「労働保険事務組合であった団体」まで含まれている点に注目してください。すでに組合をやめた団体にも検査が及びます。
書類の保存義務
事業主若しくは事業主であった者又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であった団体は、労働保険徴収法又は同法施行規則による書類を、その完結の日から3年間保存しなければなりません。ただし、労働保険事務組合が備えなければならないとされる雇用保険被保険者関係届出事務等処理簿にあっては4年間です。
3科目の保存期間を並べておきましょう。
・労災保険法 … 完結の日から3年間
・雇用保険法 … 完結の日から2年間(被保険者に関する書類は4年間)
・労働保険徴収法 … 完結の日から3年間(雇用保険被保険者関係届出事務等処理簿は4年間)
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・厚生労働大臣の裁決にも不服なら、処分取消しの訴え → 裁判所
審査請求を経てから訴えることもできますし、最初から訴えることもできます。どちらのルートも裁判所に行き着きます。
労災保険の保険給付に関する処分だけが「審査官の決定を経なければ提訴できない」という縛りを持っている点と対比して覚えてください。
具体例
4月1日に認定決定の通知を受けたなら、7月1日までに審査請求をするか、それを飛ばして訴えを起こすかを選べます。
試験のポイント
もう1つ、時効の更新について定めがあります。徴収金の徴収の告知は、時効更新の効力を生じます。したがって、納入告知書に指定された納期限の翌日から、新たな時効が進行することになります。
告知によって時計がリセットされる、ということです。そして、この2年という時効があるからこそ、それを超えて徴収するための特例納付保険料という制度が用意されているわけです。
具体例
5年前の申告漏れが見つかっても、2年を超える部分は時効で徴収できません。ただし雇用保険については特例納付保険料の制度があります。
試験のポイント
罰則
事業主及び労働保険事務組合は、立入検査の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。
試験では『行政庁の職員が、確定保険料の申告内容に疑いがある事業主に対して立入検査を行う際に、当該事業主が立入検査を拒み、これを妨害した場合、30万円以下の罰金刑に処せられるが懲役刑に処せられることはない』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。6月以下の懲役又は30万円以下の罰金ですから、懲役刑に処せられることもあります(法46条)。
「又は」で結ばれている以上、どちらもあり得るという読み方をしてください。
具体例
労働局の職員が来て賃金台帳を見せるよう求めたのに拒めば、罰金だけでなく懲役の対象にもなり得ます。
試験のポイント
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