徴収法のしくみと事業の区分
徴収法は、労災保険と雇用保険の「保険料まわり」だけを切り出してまとめた法律です。給付の話は出てきません。そのぶん手続と数字の科目になります。
この節では、なぜこの法律ができたのかという成り立ちと、これから何度も出てくる基本用語を押さえます。特に「賃金」の範囲は、雇用保険法の賃金日額と正反対のルールになっているので要注意です。
簡単にいうと
労災と雇用、別々に納めていた保険料を1つにしたのがこの法律の出発点です。
徴収法ができる前は、雇用保険料と労災保険料がそれぞれ別々に徴収・納付されていました。小規模事業所への労働保険の適用が広がるにつれ、政府にとっても事業所にとっても事務処理の負担が増えることが予想されました。
そこで、事務処理の効率化を図ることを目的として徴収法が成立しました。雇用保険料と労災保険料を「労働保険料」として1つにまとめ、徴収・納付することとしたのです。
ここでいう労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称です。
【条文】労働保険の保険料の徴収等に関する法律第1条
この法律は、労働保険の事業の効率的な運営を図るため、労働保険の保険関係の成立及び消滅、労働保険料の納付の手続、労働保険事務組合等に関し必要な事項を定めるものとする。
条文に並んでいる3つ、すなわち保険関係の成立及び消滅、労働保険料の納付の手続、労働保険事務組合が、そのままこの法律の中身になります。
条文構成の上では、労災保険のみに関連する制度(特別加入保険料・メリット制など)と、雇用保険のみに関連する制度(印紙保険料・特例納付保険料)が混在しています。どちらの保険の話をしているのかを意識しながら読み進めるのが理解のコツです。
具体例
会社が年に一度まとめて納める「労働保険料」は、労災保険分と雇用保険分を合算したものです。別々に2回納めるわけではありません。
試験のポイント
簡単にいうと
雇用保険法の賃金日額とは正反対のルールです。ここは必ず対比で覚えてください。
徴収法における賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うものをいいます。
重要なのは、臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金についても、この賃金の中に含まれるという点です。つまり賞与が入ります。
雇用保険法で学んだ賃金日額の計算では、臨時に支払われる賃金や3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は「含まれない」とされていました。まったく逆になります。
・雇用保険法の賃金日額 … 賞与を含まない(給付の計算だから)
・徴収法の賃金 … 賞与を含む(保険料の計算だから)
保険料は賞与からも徴収されるのに、給付の計算には入らない。この非対称を押さえてください。
賃金にあたるかどうかの具体例も整理しておきましょう。
・賃金と解されるもの … 休業手当、通勤手当、年次有給休暇の給与、社会保険料等の労働者負担分を事業主が負担したもの 等
・賃金と解されないもの … 解雇予告手当、退職金、祝金・見舞金等、事業主が全額負担する生命保険の掛金 等
簡単にいうと
この科目の時間の単位です。年度で区切って保険料を計算します。
徴収法における保険年度とは、4月1日から翌年3月31日までをいいます。
継続事業においては、労働保険料の算定を原則として保険年度単位で行います。年に一度、この単位で概算と確定を精算していく仕組みです。
この単位の存在が、後で学ぶ年度更新という手続きにつながります。毎年6月1日から7月10日までの間に、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料をまとめて申告・納付するのが年度更新です。
一方、有期事業には年度更新という概念がありません。事業の全期間を単位として保険料を計算するためです。たとえば3年間の建築工事であれば、3年分の概算保険料をまず払って、3年経ったら確定精算をします。
・継続事業 … 保険年度単位。毎年の年度更新がある
・有期事業 … 事業の全期間が単位。年度更新はない
この違いは、この科目のあらゆる場面で顔を出します。概算保険料の納期限も、延納の方法も、メリット制の効果も、継続と有期で違ってきます。いま押さえておくと後がずっと楽になります。
なお、保険料率は毎年、おおむね4月の第2週金曜に官報で公示されます。
具体例
簡単にいうと
適用の入口です。労災保険法・雇用保険法で学んだ内容とつながります。
適用事業には2種類あります。
・強制適用事業
その事業が開始された日、又はその事業が強制適用事業に該当するに至った日に、事業主の意思にかかわりなく法律上当然に保険関係が成立する事業をいいます。
・暫定任意適用事業
事業主が保険加入の申請をして、厚生労働大臣の認可(都道府県労働局長に権限委任)があった日に、保険関係が成立する事業をいいます。
「法律上当然に」成立するのか、「認可があった日に」成立するのかという違いが、この2つを分ける核心です。強制適用事業では届出をしていなくても保険関係が成立しています。
それぞれの範囲は、労災保険と雇用保険で違います。
・労災保険の暫定任意適用事業 … 個人経営で規模の小さい農林水産の事業
・雇用保険の暫定任意適用事業 … 常時5人未満の労働者を雇用する個人経営の農林水産業
いずれも「個人経営」「農林水産」という条件が共通しています。法人であれば強制適用です。
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試験では、慶弔見舞金は就業規則に支給に関する規定があり、その規定に基づいて支払われたものであっても労働保険料の算定基礎となる賃金総額に含めない、という記述が正しいものとして出題されています(昭25.2.16基発127号)。
具体例
夏冬の賞与も労働保険料の計算に入りますが、退職金や解雇予告手当は入りません。就業規則に定めた慶弔見舞金も入りません。
試験のポイント
4月に始まる保険年度の保険料は、6月1日から7月10日までの間に概算で申告・納付し、翌年の同じ時期に確定精算します。
試験のポイント
この後の章では、強制適用事業と暫定任意適用事業とで、保険関係の成立の仕方も消滅の仕方も違ってくることを見ていきます。まずは2つの区分があるということを頭に入れておいてください。
具体例
従業員3人の個人経営の農園は暫定任意適用事業になり得ますが、法人化すれば従業員1人でも強制適用事業になります。
試験のポイント
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