保険関係の成立と消滅
保険関係はいつ成立するのか。答えは「事業が開始された日」です。届出をした日ではありません。ここを取り違えると、この後の期限の計算がすべてずれてしまいます。
そして届出については、提出先が労働基準監督署長なのか公共職業安定所長なのかという表が出てきます。一見ややこしいのですが、分け方には理由があります。
簡単にいうと
届出は後からするもの。成立と届出は別の話です。
労災保険、雇用保険の強制適用事業に係る保険関係の成立時期は、ともにその事業が開始された日、又は強制適用事業に該当するに至った日です。
つまり、事業主の何らの手続きを待つことなく、法律上当然に保険関係が成立します。
ここでいう保険関係とは、保険事故が生じた場合に労働者又は被保険者が保険者に対して保険給付を請求する権利を有し、事業主が保険者に保険料を納付する義務を負うという、これらの権利義務関係の基礎となる継続的な法律関係のことをいいます。
試験では『労働保険の保険関係は、適用事業の事業主が、その事業が開始された日から10日以内に保険関係成立届を所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長に提出することによって成立する』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。労働保険の保険関係は、労災保険・雇用保険のいずれについても「事業が開始された日」に成立し、保険関係成立届を提出することによって成立するのではありません。
この考え方は労災保険法・雇用保険法でも同じでした。届出を怠っていた事業所で事故が起きても労働者は給付を受けられ、その費用が事業主から徴収される(労災保険法の費用徴収)という仕組みは、保険関係が届出と無関係に成立しているからこそ成り立ちます。
具体例
4月1日に開業した会社は、その日に保険関係が成立しています。届出をまだ出していなくても、4月2日に事故が起きれば労災保険の給付が行われます。
試験のポイント
簡単にいうと
成立そのものは自動でも、届出の義務は別にあります。期限は10日以内。
法的には事業成立時に保険関係が成立しますが、事業主には事後的な届出が義務付けられています。それが保険関係成立届です。
保険関係が成立した強制適用事業の事業主は、その成立した日の翌日から起算して10日以内に、保険関係成立届を提出しなければなりません。
「翌日から起算して10日以内」という数え方に注意してください。徴収法には10日・14日・20日・30日・40日・50日・60日と多くの期限が出てきますが、起算日が「その日から」なのか「翌日から起算して」なのかも問われます。
この10日という期限は、労災保険法の費用徴収とも関係します。行政機関から指導等を受けたにもかかわらず10日以内に保険関係成立届を提出しないと「故意」と認定され、保険給付の全額が徴収され得ます。指導を受けていなくても保険関係成立日から1年を経過すれば「重大な過失」として40%が徴収されます。
もう1つ、建設の事業に固有の義務があります。労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち建設の事業に係る事業主は、労災保険関係成立票を見やすい場所に掲げなければなりません。工事現場の掲示板でよく見かける、あの表示です。
具体例
4月1日に事業を開始した会社は、4月11日までに保険関係成立届を提出する必要があります。工事現場であれば、あわせて労災保険関係成立票を掲示します。
簡単にいうと
表が出てきます。「雇用保険が絡むなら安定所」と考えると整理できます。
保険関係成立届の提出先は、所轄労働基準監督署長と所轄公共職業安定所長とに分かれます。
所轄労働基準監督署長に提出するもの
・一元適用事業で労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託していない事業(雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業を除く)
・二元適用事業で労災保険に係る保険関係が成立している事業
所轄公共職業安定所長に提出するもの
・一元適用事業で労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託している事業
・一元適用事業で労働保険事務組合に委託していない事業のうち、雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業
・二元適用事業で雇用保険に係る保険関係が成立している事業
整理のしかたを1つ紹介します。二元適用事業は分かりやすく、労災の話なら監督署、雇用の話なら安定所です。迷うのは一元適用事業のほうですが、こちらは「事務組合に委託しているか」「雇用保険のみか」のどちらかに当てはまれば安定所、それ以外は監督署、と考えます。
簡単にいうと
強制適用だった事業が小さくなったとき、いちいち手続はしません。自動で切り替わります。
労災保険又は雇用保険の強制適用事業に該当する事業が、事業内容の変更、使用労働者数の減少、経営組織の変更等により暫定任意適用事業に該当するに至ったときは、どうなるでしょうか。
この場合、その翌日に、その事業につき労災保険又は雇用保険の任意加入に係る厚生労働大臣の認可があったものとみなされ、保険関係は引き続き成立することとなります。これを擬制的任意適用といいます。
ポイントは2つです。
・時期は「その翌日」
・認可があったものと「みなされる」ので、あらためて申請する必要がない
適用事業に使用される労働者の雇用保険被保険者資格も継続することになります。
試験では『労災保険の保険関係が成立している事業が、その使用する労働者の数の減少により労災保険暫定任意適用事業に該当するに至ったときには、遅滞なく、任意加入申請書を所轄都道府県労働局長に提出し、その認可を受けなければならない』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。その翌日に自動的に保険加入の認可があったものとみなされるため、任意加入申請書を提出して認可を受ける必要はありません(整備法5条3項)。
労働者が減っただけで保険関係が切れてしまっては、それまで働いていた人の保護が失われてしまいます。それを防ぐための規定だと理解しておきましょう。
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試験のポイント
具体例
労働保険事務組合に委託していない一般の会社は労働基準監督署へ、委託している会社は公共職業安定所へ保険関係成立届を提出します。
試験のポイント
具体例
従業員6人だった個人経営の農園が5人未満に減った場合でも、あらためて申請することなく保険関係は続きます。
試験のポイント
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