公的年金のしくみと国民年金の位置づけ
日本の公的年金は「2階建て」とよく言われます。1階が全国民共通の国民年金(基礎年金)、2階が会社員や公務員のための厚生年金保険です。この形になったのは昭和61年4月のことで、それ以前はまったく別の風景が広がっていました。
この節では、公的年金がどんな順序で今の姿になったのかをたどります。年金科目の学習では「昭和61年4月1日」が何度も顔を出します。そのとき何が起きたのかを先に押さえておくと、あとで出てくる合算対象期間や振替加算といった制度の理由がすんなり腹に落ちます。
簡単にいうと
国民年金と厚生年金保険。この2つを合わせたものが公的年金です。
公的年金とは、国民年金と厚生年金保険をあわせた概念をいいます。
・国民年金(基礎年金) … 20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する1階部分
・厚生年金保険(被用者年金) … 会社員や公務員が加入する2階部分
会社員や公務員は、原則として厚生年金保険にも国民年金にも加入します。厚生年金保険の被保険者は、同時に国民年金の第2号被保険者になるという仕組みです。
ですから老後には、国民年金から老齢基礎年金が、厚生年金保険から老齢厚生年金が、それぞれ支給されます。障害や死亡の場合も同じで、障害基礎年金と障害厚生年金、遺族基礎年金と遺族厚生年金が2階建てで支給されます。
具体例
同じ会社に30年勤めた人は、65歳になると老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取ります。一方、ずっと自営業だった人は老齢基礎年金だけです。この差が「2階部分があるかどうか」ということになります。
試験のポイント
簡単にいうと
被用者が先、自営業者が後。この順番が制度の形を決めました。
公的年金は、次の順序で今の姿になりました。
・昭和15年から19年 … 船員保険や労働者年金保険(厚生年金保険の前身)など、被用者のための年金制度が創設された
・昭和36年 … 自営業者のための国民年金制度が創設され、すべての国民が年金制度に加入できるようになった(国民皆年金)
・昭和61年 … 国民年金が全国民共通の1階部分(基礎年金)という位置づけに変更された
・平成27年10月 … 公務員の2階部分であった共済年金が厚生年金保険に統合された(被用者年金一元化)
注目したいのは順番です。会社で働く人のための年金が先にでき、自営業者のための年金があとから加わりました。そのため昭和36年から昭和61年までの国民年金は「自営業者等のためのもの」であり、全国民共通の土台ではありませんでした。
具体例
昭和36年の国民皆年金で「すべての国民が年金制度に加入できる」状態にはなりましたが、このときの国民年金はあくまで自営業者向けでした。会社員の妻が国民年金に入るかどうかは任意のままだったのです。
簡単にいうと
年金科目で最も重要な日付です。ここを押さえないと先に進めません。
昭和61年4月1日の改正は、それまでの制度を一変させる大改正でした。起きたことは次の3つです。
・基礎年金制度が創設された(国民年金が全国民共通の1階部分になった)
・船員保険の職務外年金部門が厚生年金保険に統合された
・会社員に扶養されている配偶者は、それまで国民年金への加入が任意であったが、強制加入となった
3つ目が特に重要です。昭和61年3月以前、専業主婦(主夫)は国民年金に入るかどうかを自分で選べました。入らなかった人も多く、そのままでは老後に年金が受け取れないという問題が生じます。そこで昭和61年4月からは第3号被保険者として強制加入とし、あわせて過去に任意加入しなかった期間の救済策も用意されました。
この3つは、このあと学ぶ合算対象期間、振替加算、第3号被保険者といった制度すべての出発点になります。
具体例
昭和60年に結婚して専業主婦になった人が国民年金に任意加入していなかった場合、その期間は保険料を納めていません。しかし昭和61年4月からは第3号被保険者として強制加入となり、保険料を納めなくても納付済期間として扱われるようになりました。
簡単にいうと
誰が保険料を払い、誰が払わないのか。ここに第1号から第3号の違いが出ます。
国民年金の被保険者は、保険料の納め方が種類によってまったく違います。
・第1号被保険者(自営業者等) … 自分で国民年金保険料を納付する(免除・追納・前納・付加保険料の制度がある)
・第2号被保険者(会社員・公務員等) … 厚生年金保険料を事業主と折半して納める。国民年金の保険料を納付することを要しない
・第3号被保険者(第2号被保険者に扶養される配偶者) … 国民年金の保険料を納付することを要しない
第2号と第3号が国民年金保険料を納めなくてよいのは、厚生年金保険の側から基礎年金拠出金として国民年金にお金が渡っているからです。払っていないのではなく、まとめて払われていると理解してください。
そして保険事故が起きると給付が行われます。老齢なら老齢基礎年金、障害なら障害基礎年金、死亡なら遺族基礎年金です。受け取るのは被保険者又は被保険者であった者及びその遺族になります。
具体例
夫が会社員、妻が専業主婦という世帯では、夫の給与から厚生年金保険料が引かれるだけで、妻の国民年金保険料の請求は来ません。妻の分は制度全体の中で手当てされているからです。
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