厚生年金保険のしくみ
厚生年金保険は、会社員や公務員のための2階部分を担う制度です。目的条文は国民年金法とよく似た構造をしていますが、主語が「国民」ではなく「労働者」になっています。この違いを入れ替えた誤りの選択肢が定番なので、並べて覚えるのが確実です。
もうひとつ、この科目には「実施機関」という独特の概念があります。平成27年10月の被用者年金一元化でできた仕組みで、被保険者の種別ごとに事務の担当者が変わります。
簡単にいうと
国年は「国民の共同連帯」、厚年は「労働者及びその遺族」。ここが入れ替わります。
厚生年金保険法は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としています。
国民年金法の目的条文と並べると違いがはっきりします。
・厚生年金保険法 … 労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与する
・国民年金法 … 日本国憲法の理念に基づき、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、健全な国民生活の維持及び向上に寄与する
主語が「労働者」か「国民」かが最大の違いです。厚生年金保険は雇われて働く人のための制度なので、労働者という言葉が前面に出ます。
試験では、国民年金法の文言をそのまま厚生年金保険の目的として示す誤りの選択肢が出題されたことがあります。「国民の共同連帯」「健全な国民生活の維持及び向上」と書いてあれば国年、「労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上」と書いてあれば厚年です。
保険事故が老齢・障害・死亡の3つである点は両者共通です。また、厚生年金保険の保険者は国民年金と同じく政府で、政府が管掌することとされています。
なお、厚年では「保険給付」という言葉を使います。国民年金が「給付」と呼ぶのとは違い、保険料の拠出を前提としない給付がないためです。
具体例
会社員が65歳になれば、国民年金から老齢基礎年金が、厚生年金保険から老齢厚生年金が支給されます。1階と2階の両方から受け取れるということです。
試験のポイント
簡単にいうと
被保険者の種別ごとに、事務の担当者が変わります。
厚生年金の被保険者には第1号から第4号までの種別があります。そして被保険者の種別に応じて、被保険者資格の得喪から保険料の徴収、給付の支給に至るまでの事務担当者が異なります。この事務担当のことを実施機関といいます。
実施機関は次のとおりです。
・第1号厚生年金被保険者(会社員) … 厚生労働大臣
・第2号厚生年金被保険者(国家公務員) … 国家公務員共済組合及び国家公務員共済組合連合会
・第3号厚生年金被保険者(地方公務員) … 地方公務員共済組合、全国市町村職員共済組合連合会及び地方公務員共済組合連合会
・第4号厚生年金被保険者(私立学校教職員) … 日本私立学校振興・共済事業団
この仕組みは平成27年10月の被用者年金制度一元化によってできました。公務員共済制度に加入している者であっても厚生年金保険の被保険者とすることになりましたが、事務の流れは一元化前のものが踏襲されたためです。
国民年金法では裁定を行うのが厚生労働大臣でしたが、厚生年金保険では実施機関が行います。原簿を備えるのも、ねんきん定期便を通知するのも実施機関です。条文に「実施機関」と出てきたら、種別に応じた担当者を指していると読み替えてください。
具体例
簡単にいうと
保険料納付済期間などの言葉は、国民年金法の定義を借りています。
厚生年金保険法における用語には、国民年金法の定義をそのまま使うものがあります。
保険料納付済期間とは、国民年金法に規定されている保険料納付済期間をいいます。具体的には次を合算した期間です。
・国民年金の第1号被保険者としての被保険者期間のうち納付された保険料に係るもの
・産前産後期間の保険料免除により納付することを要しないものとされた保険料に係るもの
・第2号被保険者としての被保険者期間
・第3号被保険者としての被保険者期間
保険料免除期間とは、国民年金法に規定される保険料免除期間をいい、保険料全額免除期間と4分の3免除期間、半額免除期間及び4分の1免除期間を合算した期間です。学生納付特例と50歳未満納付猶予はここに入りません。
権限の委任についても押さえておきます。平成22年1月1日に日本年金機構が設立され、同時に社会保険庁が廃止されました。これにより、政府管掌年金事業における厚生労働大臣の権限に係る一定の事務等は日本年金機構に行わせるものとされています。
また、日本年金機構が行う滞納処分に係る認可や、特定厚生年金保険原簿記録に係る厚生年金保険原簿の訂正に関する厚生労働大臣の権限は、地方厚生局長に委任されています。
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地方公務員が老齢厚生年金を請求する窓口は日本年金機構ではなく、地方公務員共済組合になります。会社員であれば厚生労働大臣(日本年金機構)が担当です。
試験のポイント
国民年金では地方厚生局長に委任されるのが国民年金基金に係る権限の一部(設立や解散を除く)でした。厚年では滞納処分の認可と原簿訂正が委任対象という違いになります。
具体例
老齢厚生年金の受給資格期間を判定するときに使う「保険料納付済期間」は、厚年独自の定義ではなく国民年金法の定義をそのまま用います。
試験のポイント
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