二事業・費用・不服申立て
雇用保険の最後は、決定に納得できないときの手段と、期限と、罰則です。
どの科目にも登場するテーマなので、常に比較するクセをつけましょう。特に不服申立てのルートは、労災保険と決定的に違うところが1点あります。そこを押さえれば、この節は取り切れます。
簡単にいうと
何にでも審査請求できるわけではありません。対象が限定されています。
次の事項について不服のある者は、雇用保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができます。
・被保険者となったこと又は被保険者でなくなったことの確認
・失業等給付等に関する処分
・不正受給に係る失業等給付等の返還命令若しくは納付命令についての処分
3つに限定されている点が重要です。この3つ以外の処分については、この専用ルートを使えません。
専用の機関が2つ置かれています。
・雇用保険審査官 … 第一段階
・労働保険審査会 … 第二段階
労災保険では労働者災害補償保険審査官でしたが、雇用保険では雇用保険審査官です。第二段階の労働保険審査会は労災保険と共通です。
第一段階の名称が科目ごとに違い、第二段階は共通、と整理してください。
試験では『雇用安定事業について不服がある事業主は、雇用保険審査官に対して審査請求をすることができる』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。雇用安定事業に関する処分は上の3つに該当しないため、雇用保険審査官への審査請求はできません(法69条1項)。この場合は行政不服審査法に基づいて不服申立てを行うことになります。
助成金の不支給決定に不服がある事業主は、専用ルートではなく一般ルートを使う、ということです。
具体例
被保険者資格の確認や基本手当の不支給決定には雇用保険審査官へ審査請求できますが、雇用調整助成金の不支給決定には使えません。
試験のポイント
簡単にいうと
労災保険との最大の違いがここです。審査請求前置ではありません。
不服申立ての流れと期限は次のとおりです。
・審査請求 … 雇用保険審査官に対して、文書又は口頭で。原処分があったことを知った日の翌日から起算して3月以内
・再審査請求 … 労働保険審査会に対して、文書で。決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2月以内
期限の3月と2月、方式の「文書又は口頭」と「文書」は、労災保険とまったく同じです。
違うのは訴訟との関係です。雇用保険では、雇用保険審査官の決定を経た後、再審査請求をするか処分取消しの訴えを提起するかを自由に選択できます。
労災保険と並べてみましょう。
・労災保険 … 保険給付に関する処分の取消しの訴えは、審査官の決定を経た後でなければ提起できない(審査請求前置)
・雇用保険 … 審査官の決定の後は、再審査請求と訴訟のどちらを選んでもよい(自由選択)
ただし、労災保険でも労働保険審査会の裁決までは待つ必要がありませんでした。したがって、審査官の決定の後は両者とも選択できる、という点では結論が近くなります。
簡単にいうと
雇用保険はここが単純です。労災保険の2年と5年との対比で覚えます。
失業等給付等の支給を受け、又はその返還を受ける権利、及び返還命令等の規定により納付をすべきことを命ぜられた金額を徴収する権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅します。
雇用保険はすべて2年です。給付の種類によって年数が変わることはありません。
労災保険と比べておきましょう。
・労災保険 … 療養・休業・葬祭・介護・二次健康診断等給付が2年、障害・遺族が5年
・雇用保険 … すべて2年
労災保険では給付の性質によって2年と5年に分かれていましたが、雇用保険は一律です。この単純さが逆に覚えやすいところです。
注意したいのは、時効にかかるのが給付を受ける権利だけではないという点です。次の3つが並んでいます。
・失業等給付等の支給を受ける権利
・失業等給付等の返還を受ける権利
・返還命令等により納付をすべきことを命ぜられた金額を徴収する権利
簡単にいうと
最後は雑則です。罰金の額が2種類あるので、誰に対するものかで区別します。
まず立入検査です。行政庁は、必要があると認めるときは、その職員に、被保険者や受給資格者等を雇用している(もしくは雇用していた)事業主の事業所に立ち入り、関係者に対して質問させ、又は帳簿書類の検査をさせる権限があります。
この立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはなりません。
試験では、行政庁は雇用保険法の施行のため必要があると認めるときは当該職員に被保険者を雇用していた事業主の事務所に立ち入らせることができるが、この権限は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない、という記述が正しいものとして出題されています(法79条1項・3項)。なお、立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければなりません。
次に罰則です。2種類あり、対象者によって罰金の額が違います。
・事業主等の違反行為に対する罰則
事業主又は労働保険事務組合が、届出の規定に違反して届出をせず、又は偽りの届出をした等の場合には、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。
・被保険者等の違反行為に対する罰則
被保険者や受給資格者等が、行政庁の報告の命令に違反して報告をせず、若しくは偽りの報告等をした場合には、6か月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられます。
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図で描くと、審査請求 → 雇用保険審査官 → 自由選択 → 再審査請求(労働保険審査会)または処分取消しの訴え → 裁判所、という流れになります。
具体例
基本手当の不支給決定を知った日の翌日から3月以内に審査請求をし、その決定にも納得できなければ、再審査請求と訴訟のどちらを選んでもかまいません。
試験のポイント
労働者が請求する側の権利だけでなく、政府が回収する側の権利も同じ2年です。不正受給があっても、2年を過ぎれば徴収できなくなるということです。
起算点は「これらを行使することができる時から」です。この表現は労災保険と共通しています。
具体例
基本手当を請求しないまま2年が過ぎればその権利は消滅しますし、不正受給の納付命令についても2年を過ぎれば徴収できなくなります。
試験のポイント
労災保険の罰則が「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」でしたから、事業主側の額は労災保険と共通です。
具体例
資格取得届を偽って提出した会社は30万円以下の罰金の対象になり得ますが、受給資格者が虚偽の報告をした場合は20万円以下の罰金です。
試験のポイント
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