個別の労働契約をめぐるルール
労一は「労働に関する内容で、他の科目に属さないものをすべて含む科目」です。範囲が広く、それだけで敬遠されがちですが、出題頻度には大きな偏りがあります。テキストも「特に、スタートの労働契約法が試験での出題頻度も高く、重要」と案内しています。
その労働契約法は、平成20年から施行された比較的新しい法律です。労働基準法が「守らなければ罰せられる最低基準」を定めるのに対し、労働契約法は「労使が合意で決めるときのルールブック」を定めます。この立ち位置の違いが、そのまま出題ポイントになります。
簡単にいうと
労働基準法と並べたときの違いが、そのまま最初の論点になります。
労働契約法1条は、この法律の目的を次のように定めています。
「この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。」
キーワードは「合意の原則」と「個別の労働関係の安定」です。労働基準法が集団的・画一的に最低基準を押し付けるのに対し、労働契約法は個々の労使が話し合って決めることを前提にしています。
そこから、決定的な違いが生まれます。労働契約法には、労働基準法とは異なり「労働基準監督官による監督指導」や「罰則」の規定が設けられていません。違反しても罰金や懲役はなく、最終的には民事の裁判で争うことになります。
背景には、働き方や働く意識の多様化があります。労働者ごとに個別に労働条件が決定・変更される場面が増え、それに伴って個々の労働者と使用者との間のトラブルも増加していました。集団的なルールだけでは対応しきれなくなったため、労働契約そのもののルールを条文にしたということです。
具体例
就業規則の不利益変更をめぐって会社と争う場合、労働基準監督署に申告しても是正勧告は出ません。労働契約法違反は裁判所で争う問題だからです。
試験のポイント
簡単にいうと
労働者の定義は同じなのに、使用者の定義だけがずれています。
労働契約法における用語の定義は次のとおりです。
・労働者 … 使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者
・使用者 … その使用する労働者に対して賃金を支払う者
労働者の定義は労働基準法の考え方と同じですが、使用者の定義は労働基準法とは異なります。
労働基準法の使用者は、次の3つを含む広い概念でした。
❶事業主(法人そのもの、個人事業の事業主個人)
❷事業の経営担当者(社長、理事、支配人など)
❸事業主のために労務管理を行うすべての者
労働契約法の「使用者」は、このうち❶だけに相当します。つまり労働基準法の「使用者」より狭く、労働基準法でいう「事業主」に相当する概念だということです。
理由は立て付けにあります。労働契約法は労働契約の当事者を規律する法律なので、契約の相手方である法人そのもの(又は個人事業主本人)を指すのが自然です。一方、労働基準法は現場で実際に指揮命令する人にも義務を課さなければ実効性がないため、部長や工場長まで使用者に含めています。
簡単にいうと
労働契約の5原則。並べると、どれも当たり前のことを条文にしたものです。
労働契約法には「労働契約の5原則」が規定されています。
・労使対等の原則 … 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきもの
・均衡考慮の原則 … 労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきもの
・仕事と生活の調和への配慮の原則 … 労働者及び使用者が仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきもの
・信義誠実の原則 … 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない
・権利濫用の禁止の原則 … 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない
5つのうち前3つは「締結し、又は変更すべきもの」という努力目標の書きぶり、後2つは「しなければならない」「あってはならない」という義務の書きぶりになっています。
これに続く規定が、労働契約の内容の理解の促進です。使用者には、労働者に提示する労働条件や労働契約の内容について、労働者の理解を深める姿勢が求められます。労働基準法では契約締結時に絶対的明示事項の書面での明示が義務付けられていますが、労働契約法はその後の場面でも契約内容があいまいなまま続くことのないよう、書面での確認を望んでいます。
簡単にいうと
契約書がなくても労働契約は成立します。では中身は何で決まるのでしょう。
労働契約は、労使間の「合意」によって成立します。労働契約の成立に書面(契約書)は必要とされていません。
試験では、労働契約は労働者及び使用者が必ず書面を交付して合意しなければ有効に成立しない、という誤りの選択肢が出題されたことがあります。労働契約は当事者の合意のみにより成立するものであり、成立の要件として書面を交付することまでは求められていません。
もっとも、合意だけでは細かい労働条件までは決まりません。日本では、個々の労働契約では細かい労働条件を定めずに、就業規則によって統一的に労働条件を設定することが一般的です。そこで労働契約法7条は次のように定めています。
「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」
条件は2つです。
・就業規則の内容が合理的であること
・就業規則が労働者に周知されていること
この2つがそろって初めて、就業規則の内容が労働契約の内容になります。逆にいえば、金庫にしまい込んで誰も見られない就業規則では労働契約の内容になりません。
動画・テキスト・過去問・図解まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
試験では、労働契約法2条2項の「使用者」は労働基準法10条の「使用者」と同義である、という誤りの選択肢が出題されたことがあります。同義なのは「事業主」のほうです。
具体例
課長が部下に不利益な変更を押し付けた場合、労働基準法では課長も使用者として責任を問われ得ますが、労働契約法上の使用者はあくまで会社そのものです。
試験のポイント
具体例
内定を出す前の面接で給与体系を説明する場面も、労働契約の内容の理解の促進が求められる場面に含まれます。
試験のポイント
具体例
口頭で「月給25万円で来月から」と合意しただけでも労働契約は成立し、細かい休暇や手当の扱いは周知された就業規則の内容になります。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥7,800/ 購入日から1年間有効(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。