就業規則と監督のしくみ
労基法の最後は「その他の規定」ですが、油断は禁物です。災害補償の無過失責任、帳簿の保存年限、付加金、時効、罰則と、数字がそのまま出題される雑則の宝庫です。
労災保険法や安衛法など後の科目につながる入口でもあるので、ここで骨組みを作っておくと後の学習が楽になります。
簡単にいうと
仕事中のケガは「会社が悪かったかどうか」を問わず補償される。この無過失責任が労災保険制度の原点です。
労働現場で災害が起きた場合、民法の原則論では、労働者側が使用者の故意または過失を立証しなければ賠償を求められません。労働基準法はこの原則を修正し、使用者に過失があろうとなかろうと「災害補償」の責任を負わせています。これを無過失責任といいます。
災害補償は全部で7種類です。
・療養補償
・休業補償
・障害補償
・遺族補償
・葬祭料
・打切補償
・分割補償
このうち療養補償から葬祭料までの5つは、労災保険の業務災害に関する保険給付へとつながっていきます。実際の支払いは労災保険が肩代わりする構造になっているためです。打切補償は、解雇制限の例外(療養開始後3年経過+平均賃金1,200日分)として既に登場した論点です。
具体例
町工場でプレス機に手を挟まれてけがをしたたいがさんは、社長に過失がなかったとしても、労基法上の災害補償を受ける権利があります。実際の給付は労災保険から支払われる、という関係です。
試験のポイント
簡単にいうと
社員寮では「私生活に干渉しない」が大原則。寮のルールブックを作るには寮生代表の同意書が要ります。
事業の附属寄宿舎については、労働基準法94条が2つの自治のルールを定めています。
・使用者は、寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない
・使用者は、寮長・室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない
また、寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、寄宿舎規則を作成して労働基準監督署長に届け出なければなりません(変更時も同様です)。
記載事項のうち、起床・就寝・外出・外泊に関する事項、行事に関する事項、食事に関する事項、安全及び衛生に関する事項の作成・変更については、寄宿労働者の過半数を代表する者の同意を得る必要があり、届出には同意書の添付が必要です。
就業規則の手続が「意見聴取(同意不要)」だったのに対し、寄宿舎規則は「同意が必要」という違いが出題ポイントです。生活の場のルールだからこそ、住んでいる本人たちの同意を要求しています。
具体例
建設会社の寮で「門限21時・外泊は事前届出制」というルールを作るには、寮生の過半数代表の同意書を付けて監督署長に届け出る必要があります。また会社が寮長を一方的に指名して選任に干渉することはできません。
簡単にいうと
労働基準監督官は「労働の警察官」。臨検・尋問の権限を持ち、労働者は違反をいつでも申告できます。
労働基準監督官は国家公務員で、労働基準監督官採用試験に合格した者が任命されます。労働基準監督署長や都道府県労働局長も、前提として労働基準監督官です。
監督官の権限は次のとおりです。
・事業場、寄宿舎その他の附属建設物への臨検(立入検査)
・帳簿及び書類の提出要求
・使用者・労働者への尋問
・労基法違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務
悪質な違反には逮捕・送検までできる、強い権限を持った存在です。
労働者側の武器が申告制度です。事業場に労基法又はこれに基づく命令に違反する事実がある場合、労働者はその事実を労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告できます。そして、申告をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いは禁止されています。
具体例
簡単にいうと
「ルールはみんなに見えるように」「記録はきちんと残す」。周知の3つの方法と保存年限が問われます。
使用者は、次の4つを労働者に周知させる義務があります。
・労働基準法及びこれに基づく命令の要旨
・就業規則
・労基法に基づく労使協定
・労基法に基づく労使委員会の決議
周知の方法は次の3つのいずれかに限られます。
・常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付ける
・書面を労働者に交付する
・電子的記録に記録し、かつ各作業場に労働者が内容を常時確認できる機器を設置する(社内イントラネットでいつでも閲覧できる形が典型)
帳簿のルールも整理しましょう。
・労働者名簿 ― 各事業場ごとに、労働者(日々雇い入れられる者を除く)の各人ごとに調製
簡単にいうと
特定の手当を払わない会社には、裁判所が「未払金と同じ額をもう一度払え」と命じられます。対象の4つを覚えれば得点源です。
裁判所は、次の4つの規定に違反して支払いをしなかった使用者に対して、労働者の請求により、未払金のほかに、これと同一額の付加金の支払いを命ずることができます(労働基準法114条)。
・解雇予告手当(20条)
・休業手当(26条)
・割増賃金(37条)
・年次有給休暇の賃金(39条9項)
未払金と同額が上乗せされるので、実質的に「倍返し」の制裁です。
ポイントは次のとおりです。
・命じるのは裁判所(監督署長ではありません)
・労働者の請求が必要
・請求は違反のあった時から5年(当分の間は3年)以内
対象は上の4つに限られます。例えば通常の賃金の未払いは付加金の対象ではない、という形で出題されます。
簡単にいうと
権利は放っておくと消えます。「年休2年・賃金3年・退職金5年」。罰則は強制労働違反が最重量級です。
労基法の規定により生ずる権利は、一定期間行使しないと時効により消滅します。
・年次有給休暇の権利、退職時等の証明書の請求権、帰郷旅費請求権など ― 2年間
・賃金(退職手当を除く)― 当分の間3年間
・退職手当の請求権 ― 5年間
年休は2年、毎月の給料の未払いは3年、退職金だけは5年と、対象で年数が分かれます。
罰則の代表も整理しましょう。
・1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金 ― 強制労働の禁止(5条)違反。労基法で最も重い刑罰です
・1年以下の懲役又は50万円以下の罰金 ― 中間搾取の排除や最低年齢等の違反
また、違反行為をした本人だけでなく、その者を雇っている事業主にも罰金刑を科す「両罰規定」があります。罰則規定のある法律には基本的にこの両罰規定が存在します。
具体例
動画・テキスト・過去問・図解まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
試験のポイント
残業代が支払われないことに悩む事務員のみさきさんは、労働基準監督署に違反の事実を申告できます。会社が「監督署にチクったから」という理由でみさきさんを解雇すれば、それ自体が労基法違反になります。
試験のポイント
名簿は日雇労働者を除き、台帳は日雇労働者も含む、という対比に注意してください。
さらに、労働者名簿・賃金台帳と、雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類(タイムカードや残業命令書など)は、5年間(当分の間は3年間)保存しなければなりません。
具体例
従業員がいつでも見られるよう社内ポータルに就業規則と36協定を掲載し、各作業場のPCから閲覧できるようにしていれば、周知義務を満たします。退職者のタイムカードも当分の間3年間は捨てられません。
試験のポイント
具体例
解雇予告手当30万円を払わずにひかるさんを即日解雇した会社に対し、ひかるさんが裁判所に請求すると、未払いの30万円に加えて付加金30万円、合計60万円の支払いが命じられる可能性があります。

付加金のしくみ
試験のポイント
3年前の未払い残業代を請求しようとしたゆずきさんの場合、賃金の時効は当分の間3年なのでぎりぎり間に合います。一方、5年前に取り損ねた年休を今から使うことはできません(時効2年で消滅済み)。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥7,800/ 購入日から1年間有効(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。