社会保障の全体像と沿革
テキストは第2章の冒頭で「特に第2節『沿革』の重要度が高まっています。おおよそいつぐらいの時期に何があったのか、少しずつ流れを意識していきましょう」と案内し、重要度をSとしています。社一の中でも最重要の節です。
年号を丸暗記するのではなく、大きな流れとして押さえます。制度が生まれ、業務上の傷病が労災に移り、皆保険皆年金が達成され、基礎年金が導入され、そして高齢化と多様化に合わせて再編されてきた、という物語です。
簡単にいうと
健康保険法は最初、業務上の傷病もカバーしていました。
大正11年 健康保険法の制定(昭和2年全面施行)
業務外だけでなく業務上の傷病も保険給付の対象として発足しました。保険給付及び費用の負担を除く規定は大正15年に施行されています。
昭和14年 船員保険法の制定(昭和15年施行)
医療、年金等を包含する総合的な社会保険として発足しました。
昭和22年 労働者災害補償保険法の制定
これに伴い、健康保険法において業務上の傷病に対する保険給付が廃止されました。同じ年に失業保険法(雇用保険法の前身となる法律)も制定されています。
昭和36年 国民皆年金・国民皆保険体制の達成
国民年金の拠出制事業の開始と、全市町村で国民健康保険事業を実施したことによります。
昭和48年 老人医療費支給制度開始(昭和47年老人福祉法改正による)
窓口無料化を実現しました。同じ年、健康保険法の改正で高額療養費支給制度が導入され、被扶養者の負担割合が5割から3割に改定されています。
流れの要点は2つです。
第一に、健康保険法が最初は業務上の傷病もカバーしていて、昭和22年の労災保険法の制定によってその部分を手放したという点です。だからこそ現在の健康保険は「業務外」に限られ、国民健康保険は業務上・外を問わないという違いが生じています。
第二に、昭和36年が国民皆保険・皆年金の達成年だという点です。国民健康保険法の節でも「昭和36年4月に全国の市町村で国民健康保険の実施が義務付けられ、国民皆保険が達成された」と説明されていました。
具体例
大正時代の健康保険は仕事中のけがも対象でしたが、昭和22年に労災保険ができてその役割を譲りました。

沿革の年表。昭和36年の皆保険皆年金、昭和61年の基礎年金、平成20年の後期高齢者、平成27年10月の一元化が節目です
試験のポイント
簡単にいうと
昭和60年改正・昭和61年施行。この組合せがよく問われます。
昭和57年 老人保健法の制定(昭和58年2月施行)
昭和60年 国民年金法、厚生年金保険法及び共済組合法の改正(昭和61年施行)
・基礎年金制度の導入
・船員保険の職務外年金部門を厚生年金保険に統合
平成12年
・ドイツとの社会保障協定(日本と諸外国との初の社会保障協定)の発効
・介護保険法の施行
平成13年
・確定給付企業年金法の制定(平成14年施行)… 基金型と規約型の2タイプの導入
・確定拠出年金法(6月制定、10月施行)… 個人型年金と企業型年金の2タイプの導入
昭和60年改正が節目です。改正が昭和60年、施行が昭和61年という「1年ずれ」を押さえます。国民年金の合算対象期間や振替加算で「昭和61年3月31日以前」「昭和61年4月1日」という日付が繰り返し出てきたのは、この改正の施行日を指しています。
簡単にいうと
社労士法の改正が2回出てきます。
平成19年
・厚生年金保険法の改正 … 70歳以上の使用される者に係る在職老齢年金の導入、離婚時分割制度の導入、65歳以後の老齢厚生年金の支給繰下げ制度の導入、65歳以後の遺族厚生年金の併給の見直し、若齢期の妻に対する遺族厚生年金の見直し
・社会保険労務士法の改正(第7次改正)… 社労士業務の拡大(紛争解決手続代理業務の追加)
平成20年
・健康保険法の改正 … 高額介護合算療養費の導入、全国健康保険協会の設立
・老人保健法を高齢者の医療の確保に関する法律に改称 … 後期高齢者医療制度の導入(75歳以上の後期高齢者については新たな保険制度を創設)
・厚生年金保険法の改正 … 離婚時の3号分割制度の導入
平成22年
・国民年金法等の改正 … 日本年金機構の設立(社会保険庁の廃止)
・船員保険法の改正 … 職務上・通勤による傷病等に関する部分の一部を労災保険に統合、失業等に関する部分を雇用保険に統合
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船員保険の縮小もここに現れます。昭和60年改正で職域外年金部門が厚生年金保険に統合され(第1次縮小)、平成22年に職務上疾病・年金部門が労災保険へ、失業部門が雇用保険へ統合されました(第2次縮小)。
平成12年の2つは、どちらも「初めて」に関わります。ドイツとの協定が日本と諸外国との初の社会保障協定であり、介護保険法の施行によって医療・年金・雇用・労災に次ぐ5番目の社会保険が動き出しました。
平成13年に2つの企業年金法が並んでいる点も特徴です。確定給付企業年金法は制定が平成13年で施行が平成14年、確定拠出年金法は同じ年の6月制定・10月施行になります。
具体例
昭和61年3月31日以前に任意加入しなかった被扶養配偶者の期間が合算対象期間になるのは、この年に基礎年金制度が始まったからです。
試験のポイント
平成27年
・介護保険法の改正 … 一定以上所得者の利用負担割合引上げ(1割→2割:平成27年8月から)
・厚生年金保険法の改正 … 被保険者等による年金記録の訂正手続の創設、被用者年金一元化(平成27年10月から)
・社会保険労務士法の改正 … 社労士業務の拡大(補佐人制度の追加)
平成29年 確定拠出年金法の改正 … 国民年金第3号被保険者が加入できるようになった
令和2年 健康保険法の改正(被扶養者の要件に国内居住要件等が加わる)、国民年金法の改正(第3号被保険者の要件に国内居住要件等が加わる)
令和4年 健康保険法及び厚生年金保険法の改正 … 法定業種に法律・会計事務を取り扱う士業(弁護士・税理士等の事務所)を追加(17業種に)、短時間労働者への適用拡大、育児休業等期間中の保険料免除の見直し
社労士法の改正が2回登場する点を押さえます。平成19年が紛争解決手続代理業務(特定社会保険労務士)、平成27年が補佐人制度です。
離婚分割も2段階で入りました。平成19年が合意分割、平成20年が3号分割です。3号分割の対象が「平成20年4月以後の第3号被保険者期間」に限られるのは、この改正の施行時期によります。
試験では、厚生年金保険法の改正により平成26年4月1日以降は経過措置に該当する場合を除き新たな厚生年金基金の設立は認められないこととされた、という記述が正しいものとして出題されています。
具体例
3号分割が平成20年4月以後の期間しか対象にしないのは、その改正がその時期に施行されたからです。
試験のポイント
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