エッソ石油事件
最高裁第一小法廷・1993年3月25日・最一小判平5.3.25

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム5:22会社と組合のチェック・オフ協定だけでは、組合員の賃金から組合費を天引きする権限は生まれない——協定の効力を免罰的効力に限定し、個々の組合員の委任を必要とした最高裁判決です。労基法24条(賃金全額払)と労働組合法分野の両方から出題される頻出判例です。
事案の概要
Y社の従業員XらはA労働組合の組合員でしたが、闘争方針の違いから執行部と対立し、B労働組合を結成しました。B労組はY社に対し、Xらの賃金からチェック・オフしたA労組の組合費をA労組に交付せず、B労組指定の銀行口座に入金するよう申し入れ、さらに組合費引去停止依頼書を添えてチェック・オフに抗議しました。しかしY社はその後も約半年間、Xらの賃金からA労組の組合費をチェック・オフしてA労組に交付し続けたため、Xらが不当労働行為に当たるとしてY社に損害賠償を求めて提訴しました。
- 対立・新組合A労組の組合員だったXらが執行部と対立し、B労働組合を結成しました
- 中止申入れB労組がチェック・オフの停止と控除額の指定口座への入金をY社に申し入れました
- 継続Y社は約半年間、Xらの賃金からA労組の組合費を控除してA労組に交付し続けました
- 提訴Xらが不当労働行為に当たるとしてY社に損害賠償を請求しました
- 最高裁個々の組合員の委任がなければチェック・オフはできず、中止の申入れがあれば中止すべきと判断しました
争点
使用者と労働組合の間にチェック・オフ協定(労働協約)がある場合、使用者はそれだけで有効なチェック・オフを行えるのでしょうか。また、組合員からチェック・オフの中止の申入れがされたとき、使用者は中止する必要があるのでしょうか。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)24条1項ただし書の要件を具備するチェック・オフ協定の締結は、これにより、右協定に基づく使用者のチェック・オフが同項本文所定の賃金全額払の原則の例外とされ、同法120条1号所定の罰則の適用を受けないという効力を有するにすぎないものであって、それが労働協約の形式により締結された場合であっても、当然に使用者がチェック・オフをする権限を取得するものでないことはもとより、組合員がチェック・オフを受忍すべき義務を負うものではないと解すべきである。
したがって、使用者と労働組合との間に右協定(労働協約)が締結されている場合であっても、使用者が有効なチェック・オフを行うためには、右協定の外に、使用者が個々の組合員から、賃金から控除した組合費相当分を労働組合に支払うことにつき委任を受けることが必要であって、右委任が存しないときには、使用者は当該組合員の賃金からチェック・オフをすることはできないものと解するのが相当である。
そうすると、チェック・オフ開始後においても、組合員は使用者に対し、いつでもチェック・オフの中止を申し入れることができ、右中止の申入れがされたときには、使用者は当該組合員に対するチェック・オフを中止すべきものである。
結論
チェック・オフ協定の効力は、賃金全額払の原則の例外として罰則の適用を受けないという免罰的効力にとどまり、労働協約の形式で締結されていても、使用者に控除権限が当然に生じるわけでも、組合員に受忍義務が生じるわけでもありません。有効なチェック・オフには、協定とは別に、個々の組合員から「賃金から控除した組合費相当分を組合に支払うこと」についての委任が必要で、委任がなければ控除できません。組合員はいつでも中止を申し入れることができ、申入れがあれば使用者は中止しなければなりません。
関連法令の解説
労働基準法24条1項(賃金全額払の原則)
賃金は全額を労働者に支払わなければならず、例外として法令に別段の定めがある場合、または労使協定(過半数組合か過半数代表者との書面協定)がある場合に限り控除が認められます。チェック・オフはこのただし書の協定を根拠に行われる賃金控除ですが、本判決は、協定の効力を罰則を免れる免罰的効力に限定しました。
労働基準法120条1号(罰則)
賃金全額払の原則(24条)違反に対する罰金の規定です。チェック・オフ協定があれば使用者はこの罰則の適用を受けない——それがまさに協定の「免罰的効力」の意味で、選択式の空欄補充では「賃金全額払の原則」「罰則の適用」がそのまま問われた実績があります。
身近な例え
マンションの管理組合と大家さんが「家賃から町内会費を天引きしてよい」と取り決めても、それだけで住人全員の家賃から勝手に引いてよいことにはなりません。天引きしてほしい人が「私の分はお願いします」と頼んで初めて引けるし、「もうやめて」と言われたら即ストップです。取り決めは「天引きしても罰せられない」という免罪符にすぎない、という関係です。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
チェック・オフっていうのは、組合費を会社が賃金から天引きして組合に渡す仕組みね。会社と組合の間にチェック・オフ協定があっても、その効力は「賃金全額払の原則(労基法24条1項)の例外になって罰則を受けない」っていう免罰的効力だけなんだ。労働協約の形式でも、会社に控除する権限が当然生まれるわけじゃないし、組合員に我慢する義務もない。有効に天引きするには、協定とは別に個々の組合員からの委任が必要だよ。だから組合員はいつでも中止を申し入れられて、申入れがあったら会社は中止しなきゃいけないの。労基でも一般常識でも繰り返し出てる頻出判例だから、「免罰的効力+個別の委任」のキーワードで完璧にしておいてね!
◎ 選択式で狙われるポイント
「協定=免罰的効力のみ」「有効なチェック・オフ=協定+個々の組合員の委任」「中止の申入れはいつでも可能で、あれば中止義務」の3点セットです。H17-労基1C・H24-一般2B・H25-一般2Cと、労基・一般の両方から繰り返し出題される頻出判例です。
- ▶チェック・オフ協定の効力は「賃金全額払の原則の例外として罰則(労基法120条1号)を受けない」免罰的効力にとどまります。「協定があれば当然に控除できる」とする肢は誤りです。
- ▶有効なチェック・オフには、協定+個々の組合員からの委任が必要です。委任がなければ当該組合員の賃金から控除できません(H24-一般2B・H17-労基1C)。
- ▶組合員はチェック・オフ開始後でも「いつでも」中止を申し入れることができ、申入れがあれば使用者は中止しなければなりません(H25-一般2C・正しい肢)。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「賃金全額払の原則の例外とされ、同法120条1号所定の罰則の適用を受けないという効力を有するにすぎない」
- 「当然に使用者がチェック・オフをする権限を取得するものでないことはもとより、組合員がチェック・オフを受忍すべき義務を負うものではない」
- 「個々の組合員から…委任を受けることが必要」
- 「いつでもチェック・オフの中止を申し入れることができ」
出題実績
- H17-労基1C
- H24-一般2B
- H25-一般2C
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