日立メディコ事件
最高裁第一小法廷・1986年12月4日・最一小判昭61.12.4

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム4:47更新への期待がある有期契約労働者の雇止めに解雇法理が類推されることを認めつつ、その判断基準は正社員の解雇より緩やかでよい、と整理した最高裁判決です。労働契約法19条2号(更新期待型)のもとになった判例で、R4選択式で判旨が出題された最重要判例のひとつです。
事案の概要
Y社工場の臨時員制度は、景気変動に伴う受注の増減に応じて雇用量を調整するための制度で、採用も学科・技能試験なしの簡易な方法で行われていました。Xは期間2カ月の契約で臨時員として雇われ、期間満了の都度合意する形で5回更新を重ねましたが、Y社が不況に伴う業務上の都合を理由に更新を拒絶したため、Xが雇止めの無効を主張して提訴しました。判決が前提とした事実として、臨時員は比較的簡易な作業に従事しており、同時期採用の臨時員90名のうち翌年秋まで雇用が続いた者は14名程度でした。
- 採用雇用調整目的の臨時員として、試験なしの簡易な手続で期間2カ月の契約を締結しました
- 反復更新期間満了の都度、本人の意思確認を経て5回契約を更新しました
- 雇止め不況に伴う業務上の都合を理由に、Y社が更新を拒絶しました
- 提訴Xが雇止めの無効を主張して裁判で争いました
- 最高裁解雇法理の類推は認めつつ、本工の解雇とは判断基準に合理的な差異があるとして、Y社の雇止めを是認しました
争点
雇用継続への期待から解雇法理が類推される有期契約の臨時員の雇止めについて、その効力の判断基準は、期間の定めのない契約を締結している正社員(本工)の解雇の場合と同じか、それとも合理的な差異があるか、という点です。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
原審の確定した右事実関係の下においては、本件労働契約の期間の定めを民法90条に違反するものということはできず、また、5回にわたる契約の更新によって、本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいはXとY社との間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできないというべきである。
(中略)Y社工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、Xとの間においても5回にわたり契約が更新されている。
このような労働者を契約期間満了によって雇止めにするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反または不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。
しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。
したがって、(中略)独立採算制がとられているY社の工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかったとしても、それをもって不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。
結論
臨時的作業のためではなく、ある程度の雇用継続が期待され契約更新も重ねられた臨時員の雇止めには、解雇に関する法理が類推されます。ただし、簡易な採用手続による短期的有期契約が前提である以上、雇止めの効力の判断基準は、終身雇用の期待の下に無期契約を結ぶ本工の解雇の場合とはおのずから合理的な差異があります。人員削減がやむを得ない場合、正社員の希望退職募集より先に臨時員を雇止めしてもやむを得ないとされました。
関連法令の解説
労働契約法19条(有期労働契約の更新等)
雇止め法理を明文化した規定で、本判例は「契約期間の満了時に更新されるものと期待することについて合理的な理由がある」場合(2号)のもとになりました。東芝柳町工場事件が実質無期型(1号)、本判例が更新期待型(2号)という対応関係で整理して覚えます。
民法90条(公序良俗)
Xは短期の期間の定め自体が公序良俗に反すると主張しましたが、最高裁は本件の期間の定めが民法90条に違反するとはいえないと判断しました。雇用調整目的の有期契約という仕組み自体は否定されていません。
身近な例え
繁忙期だけ手伝いに来てもらうアルバイトさんに「たぶん来月もお願いすると思う」と言い続けてきたら、突然ゼロにするときには一応きちんとした理由が要ります。ただ、正社員をクビにするときほどの厳しいハードルまでは要求されません。「期待は守るけど、守り方のレベルは契約の性質次第」という考え方です。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
東芝柳町工場事件との違いをハッキリさせるのがこの判例のミッションだよ。5回の更新だけじゃ「実質無期」とまではいえない。でも雇用継続への期待はあったから、解雇に関する法理は類推される。ここまでが第一段階。そのうえで、簡易な手続で採用された短期契約の臨時員なんだから、雇止めのハードルは終身雇用の本工の解雇より低くていい=「合理的な差異」があるんだ。だから正社員の希望退職募集より先に臨時員を雇止めしてもOKとされたの。R4の選択式で「ある程度の継続が期待され」「従前の労働契約が更新された」が穴埋めで出たから、この言い回しは絶対覚えてね!
◎ 選択式で狙われるポイント
①更新への期待があれば解雇法理が類推されること(労働契約法19条2号のもとになった判例です)、②ただし判断基準は本工の解雇とは合理的な差異があってよいこと、③正社員の希望退職募集に先立つ臨時員の雇止めも不当・不合理ではないこと——この3点が柱です。東芝柳町工場事件(実質無期型)との型の違いが最重要です。R4の選択式で判旨がそのまま出題されました。
- ▶R4選択式では「ある程度の継続が期待され」「従前の労働契約が更新された(のと同様の法律関係)」の部分が穴埋めで出題されました。判旨の言い回しをそのまま覚えましょう。
- ▶解雇無効とされるような事実関係の下で雇止めされた場合の効果は、「従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係になる」というものです。契約が無期に転化するわけではありません。
- ▶臨時員の雇止めの判断基準は本工の解雇と同一ではなく、「合理的な差異」があります。正社員の希望退職募集より先に臨時員を雇止めしても不当・不合理とはいえない、とされた点もひっかけどころです。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「その雇用関係はある程度の継続が期待されていた」
- 「解雇に関する法理が類推され」
- 「期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となる」
- 「本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである」
出題実績
- R4選-一般D・E
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