ハマキョウレックス事件
最高裁第二小法廷・2018年6月1日・最二小判平30.6.1

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム4:41正社員と契約社員の手当の格差について、労働契約法20条(当時)の解釈を最高裁が初めて本格的に示したリーディングケースです。同条が私法上の効力を持つこと、違反部分は無効になるが正社員と同一の労働条件になるわけではないことを明らかにしました。同日の長澤運輸事件とセットで出題されます。
事案の概要
一般貨物運送会社と有期労働契約を結び、契約社員のトラック運転手として配送業務をしていた人が原告です。会社の就業規則では正社員が月給制、契約社員が時給制とされ、契約社員には賞与・退職金のほか無事故手当・作業手当・給食手当・皆勤手当・通勤手当が支給されませんでした。原告の業務内容と責任の程度は正社員と変わらなかったため、この支給差は不当だとして提訴しました。
- 契約有期労働契約の契約社員(トラック運転手)として勤務し、契約を順次更新しました
- 格差正社員には支給される諸手当が契約社員には支給されない扱いが続きました
- 提訴職務の内容は正社員と同じなのに手当に差があるのは不当だと主張して提訴しました
- 最高裁20条の私法上の効力を認め、無事故手当・作業手当・給食手当・皆勤手当・通勤手当の相違を不合理と評価しました
争点
有期契約の契約社員と無期契約の正社員との間で、諸手当の支給に相違を設けることは労働契約法20条(当時)の禁止する不合理な労働条件の相違に当たるか。また、同条に違反した場合、契約社員の労働条件は正社員と同一になるか。この2点が争われました。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
労働契約法20条(当時)は、(中略)有期契約労働者については、無期労働契約を締結している労働者(以下「無期契約労働者」という。)と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく、両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものである。
そして、同条は、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に、職務の内容、当該職務の内容および配置の変更の範囲その他の事情(以下「職務の内容等」という。)を考慮して、その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される。
(中略)同条の規定は私法上の効力を有するものと解するのが相当であり、有期労働契約のうち同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効となるものと解される。
(中略)有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が同条に違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当である。
結論
労働契約法20条(当時)は有期契約労働者の公正な処遇を図るための規定で、私法上の効力を持ち、同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効になります。ただし、無効になっても契約社員の労働条件が自動的に正社員と同一になるわけではありません。本件では、職務の内容が同じ正社員と契約社員の間で、無事故手当・作業手当・給食手当・皆勤手当・通勤手当の支給差が不合理と評価されました。
関連法令の解説
労働契約法20条(当時・期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の相違について、職務の内容、職務の内容および配置の変更の範囲その他の事情を考慮して「不合理と認められるものであってはならない」と定めていた規定です。本判決がその私法上の効力と補充効の否定を明らかにしました。法改正で削除され、現在の根拠条文はパートタイム・有期雇用労働法8条です。
パートタイム・有期雇用労働法8条(不合理な待遇の禁止)
旧労働契約法20条を統合した現行規定で、基本給・賞与その他の待遇のそれぞれについて、その待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮し、不合理な相違を禁止します。待遇差を「総合判断」するのではなく「個々の待遇ごと」に判断することを条文上明確にした点が、試験でのチェックポイントです。
身近な例え
同じコースを同じ責任で走る2人の配達員がいて、片方だけ「お昼代の補助なし・無事故ボーナスなし」だったら変ですよね。ただし裁判所は「不公平な差額ルールは無効」と言うだけで、「同じ給与明細にしなさい」とまでは言わない——契約書の穴を自動で埋める効果まではない、というのがこの判例の割り切りです。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
同一労働同一賃金のスタート地点になった判例だよ。ポイントは3つ。①労働契約法20条(当時)はただのお題目じゃなくて私法上の効力があって、違反する待遇差を定めた部分は無効になる。②でも無効になっても、契約社員の労働条件が自動的に正社員と同じになるわけじゃない(補充効の否定)。③仕事の中身が同じなら、皆勤手当みたいに職務内容と関係ない手当の差は不合理とされやすい。今はこのルール、パート有期法8条に引き継がれてて「待遇ごとに判断」って明文化されたから、そこまでセットで覚えてね!
◎ 選択式で狙われるポイント
①20条は私法上の効力があり違反部分は無効になる、②しかし補充効はない(正社員の労働条件と同一にはならない)、③職務の内容が同じなら職務内容と関係のない手当の支給差は不合理——この3点が柱です。旧20条は現在パートタイム・有期雇用労働法8条に統合されており、待遇差の不合理性は「個々の待遇ごと」に判断すると明確化された点まで押さえておきましょう。
- ▶20条(当時)の考慮要素は「職務の内容」「当該職務の内容および配置の変更の範囲」「その他の事情」の3つです。職務の内容とは、業務の内容とそれに伴う責任の程度を指します。
- ▶同条は私法上の効力を持ち、違反する相違を設ける部分は無効になります。「訓示規定にすぎない」とあれば誤りです。
- ▶違反しても、有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者と同一になる補充的効力はありません。「同一の労働条件となる」とあれば誤りです。
- ▶旧20条は削除され、現在はパートタイム・有期雇用労働法8条に統合されています。同条では、不合理性を個々の待遇ごとに、その待遇の性質・目的に照らして判断すると明確化されました。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したもの」
- 「職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定」
- 「同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効となる」
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