社労士になる子ちゃん
労務管理その他の労働に関する一般常識重要度B企業施設の使用拒否

池上通信機事件

最高裁第三小法廷・1988年7月19日・最三小判昭63.7.19

池上通信機事件の当事者関係図
池上通信機事件の当事者関係図
🎬

なる子ちゃんの判例解説動画

プレミアム4:56

労働組合が会社の承諾なく従業員食堂で集会を繰り返した事案で、会社側の食堂使用拒否や警告書交付が不当労働行為に当たらないとされた判例です。組合に施設利用の権限はなく使用者に受忍義務もない、という原則を「使用拒否は不当労働行為か」という角度から確認しました。

事案の概要

会社の従業員で組織される労働組合が、結成直後から会社の承諾なく従業員食堂で集会を開きました。翌年の話合いで会社は、食堂の自由利用は認めないとしつつ、年4回の定期大会・臨時大会での利用許諾や外部会場費用の負担など、一定の譲歩を示しました。しかし組合はその後も合意形成の努力をせず無許可使用を繰り返し、役員が就業時間外に工場内へ立ち入って無許可集会に参加したため、会社はその役員に警告書を交付しました。組合は、食堂の利用拒否や警告書交付等が不当労働行為だと主張して争いました。

  1. 無許可集会組合が結成直後から、会社の承諾なく従業員食堂で集会を開催しました
  2. 会社の譲歩会社は自由利用は否定しつつ、年4回の大会利用許諾や外部会場費用の負担を提示しました
  3. 無許可使用継続組合は合意形成の努力をせず無許可使用を続け、役員が無許可集会に参加しました
  4. 警告書交付会社が集会に参加した役員に警告書を交付しました
  5. 最高裁食堂使用拒否や警告書交付等は不当労働行為に当たらないと判断しました

争点

使用者が、労働組合からの従業員食堂の使用申入れを許諾しないことは、不当労働行為に当たるか、という点です。

判旨

判決文からの引用(原文のまま)

「本来企業施設は企業がその企業目的を達成するためのものであっ(中略)使用者の許諾なしに当然に企業施設を利用する権限を有するものではないし、使用者において労働組合または組合員が組合活動のために企業施設を使用するのを受忍すべき義務を負うというものではないことはいうまでもなく、このことは、当該組合がいわゆる企業内組合であって、労働組合または組合員において企業施設を組合活動のために使用する必要性がいかに大であってもいささかも変わるところがない。

このように解すべきことは、労働組合法が使用者の労働組合に対する経費援助等を不当労働行為として禁止し、ただ最小限の広さの事務所の供与等を例外的に許容しているに過ぎない(同法7条3号)ところの法の趣旨に適合する当然のことである。

労働組合または組合員による企業施設の利用関係は、この点において、企業が労働安全衛生法70条の規定に基づいて労働者の体育活動、レクリエーションその他の活動のために企業施設の使用を認める場合とは、基本的に性格を異にするものといわなければならない。

そして、使用者は、企業目的に適合するように従業員の企業施設の利用を職場規律として確立する一方、企業目的の達成に支障を生じさせ秩序を乱す従業員の企業施設の使用行為を禁止または制限しあるいは違反者を就業規則等違反を理由として懲戒処分に付するなどにより、企業目的にそわない施設使用を企業秩序違背として規制し排除することができるのはいうまでもないところである。」

結論

労働組合は使用者の許諾なしに当然に企業施設を利用する権限を持たず、使用者に受忍義務もありません。これは企業内組合で利用の必要性が大きくても変わりません。使用者は企業目的にそわない施設使用を企業秩序違背として規制・排除でき、本件の食堂使用拒否等は不当労働行為に当たりません。

関連法令の解説

労働組合法7条3号(経費援助の禁止)

使用者が労働組合の運営経費の支払につき経理上の援助を与えることを不当労働行為として禁止し、例外として最小限の広さの事務所の供与等を許容する規定です。本判決は、組合への施設提供が例外的にしか認められていないこの法の趣旨から、組合に当然の施設利用権限がないことを裏付けました。

労働安全衛生法70条(体育活動等についての便宜供与)

事業者が労働者の体育活動、レクリエーション等の活動について便宜を供与するよう努める趣旨の規定です。本判決は、これに基づく福利厚生目的の施設使用と、組合活動のための施設利用とは基本的に性格が異なると位置づけました。同じ「食堂を使う」でも法的な意味が違う、という整理です。

身近な例え

会社の会議室を、サークル活動のために無断で使い続けるようなものです。会社が「月1回までなら貸すし、外部会場の費用も持つよ」と歩み寄ったのに、話し合いもせず無断使用を続けたら、会社が貸さないのを「嫌がらせだ」とは言えません。貸すかどうかを決める権限はあくまで持ち主にある、という話です。

なる子ちゃん

なる子ちゃんのざっくりまとめ

国鉄札幌運転区事件とセットで覚える判例だよ。組合には会社の施設を当然に使う権限はないし、会社に受忍義務もない——それは施設の「使用拒否が不当労働行為か」って場面でも同じなんだ。しかもこの事件、会社は年4回の大会利用OKとか外部会場の費用負担とか、けっこう譲歩してたのに組合側が無許可使用を続けてたの。だから拒否しても不当労働行為じゃない。あと独自ポイントは条文との接続!労組法7条3号(経費援助禁止・事務所供与だけ例外)の趣旨に合うこと、安衛法70条の福利厚生目的の施設利用とは性格が違うこと、この2つを整理しておいてね!

選択式で狙われるポイント

国鉄札幌運転区事件の枠組み(無許諾利用は原則不可・受忍義務なし・例外は権利濫用となる特段の事情)を、施設使用「拒否」が不当労働行為かという場面に適用した判例です。労組法7条3号(経費援助禁止と最小限の事務所供与の例外)や、安衛法70条に基づく福利厚生目的の施設利用とは性格が異なる、という条文との接続が独自の出題ポイントです。

  • 組合活動が施設利用として正当とされるには、使用者の許諾があるか、利用を許さないことが権利濫用となる「特段の事情」が必要です。本件では特段の事情なしと判断され、使用拒否は不当労働行為になりませんでした。
  • 労組法7条3号は経費援助を不当労働行為として禁止し、最小限の広さの事務所供与等だけを例外としています。施設をどんどん使わせることはむしろこの趣旨に反する、という論理の向きに注意しましょう。
  • 安衛法70条に基づき体育活動・レクリエーション等のために施設使用を認める場合とは「基本的に性格を異にする」とされています。福利厚生目的の利用と組合活動目的の利用を混同させる出題に注意しましょう。

穴埋めで問われるキーフレーズ

  • 使用者の許諾なしに当然に企業施設を利用する権限を有するものではない
  • 使用する必要性がいかに大であってもいささかも変わるところがない
  • 企業目的にそわない施設使用を企業秩序違背として規制し排除することができる
独学で社労士合格を目指すなら

独学でも合格をつかみ取れる!

動画・テキスト・過去問・図解まですべて網羅!

予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます

なる子ちゃん
無料登録後、アカウントページからかんたんにプレミアムへ切り替えられるよ。解説動画・テキストPDF・過去問演習まで全機能が使い放題になるの!
  • 全10科目の解説動画が見放題!連続再生・科目別・ブックマーク再生でスキマ時間に効率よく学べます。プレミアム限定
  • 択一式・選択式の年度別/科目別演習が無制限!何度も解きなおせます。マイページで苦手管理もばっちり。プレミアム限定
  • 節ごとの解説動画とテキストPDFで、通勤中もオフラインで復習できる。図解つきでイメージが残る。プレミアム限定
  • 科目別テキストPDFダウンロード可能!ダウンロード後は半永久的に利用可能で、印刷して好きな使い方で学べます。プレミアム限定
  • テキストのブックマーク管理で苦手分野・何度も確認したい部分を徹底管理可能!プレミアム限定
  • 学習記録・成績管理で自分の進捗を可視化。どの科目に集中すべきか一目でわかる。プレミアム限定

プレミアムプラン

¥7,800/ 購入日から1年間有効(税込)

買い切り自動更新なし

決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。

同じ科目の判例