社労士になる子ちゃん
労務管理その他の労働に関する一般常識重要度Bセクシュアルハラスメント

海遊館事件

最高裁第一小法廷・2015年2月26日・最一小判平27.2.26

海遊館事件の当事者関係図
海遊館事件の当事者関係図
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なる子ちゃんの判例解説動画

プレミアム5:05

水族館の管理職2名が女性従業員への度重なるセクハラ発言を理由に出勤停止・降格の処分を受け、その有効性を争った事件です。最高裁は、防止研修を受けた管理職による1年余・多数回の行為であることなどを重視し、重い懲戒処分を有効と認めました。企業のセクハラ対応を後押しした判例として知られています。

事案の概要

水族館を経営する会社の管理職らが、同じ部署の女性従業員らに対し、約1年にわたりセクハラ発言等を続けました。被害者らの申告を受けた会社は事情聴取のうえ、行為がセクハラ禁止文書の禁止行為に該当し就業規則の「会社の秩序または職場規律を乱すこと」に当たるとして出勤停止処分とし、さらに出勤停止処分を受けたことを理由とする降格処分を行い、給与・賞与も減額しました。管理職らは、出勤停止処分の無効と降格前の等級の地位確認を求めて提訴しました。

  1. 行為管理職らが女性従業員らに、約1年にわたりセクハラ発言等を繰り返しました
  2. 申告被害者らの申告を受け、会社が事情聴取を実施しました
  3. 処分出勤停止処分と、さらにこれを理由とする降格処分を行い、給与・賞与も減額しました
  4. 提訴管理職らが処分の無効と降格前の地位の確認を求めて提訴しました
  5. 最高裁出勤停止処分は懲戒権の濫用に当たらず有効であり、降格も有効と判断しました

争点

職場における性的な内容の発言等によるセクシュアルハラスメントを理由として管理職に出勤停止の懲戒処分をすることは、懲戒権の濫用に当たるか、という点です。

判旨

判決文からの引用(原文のまま)

Xたちが職場において1年余にわたり繰り返した発言等の内容は、いずれも女性従業員に対して強い不快感や嫌悪感ないし屈辱感等を与えるもので、職場における女性従業員に対する言動として極めて不適切なものであって、その執務環境を著しく害するものであったというべきであり、当該従業員らの就業意欲の低下や能力発揮の阻害を招来するものといえる。

しかも、Y社においては、職場におけるセクハラの防止を重要課題と位置付け、セクハラ禁止文書を作成してこれを従業員らに周知させるとともに、セクハラに関する研修への毎年の参加を全従業員に義務付けるなど、セクハラの防止のために種々の取組を行っていたのであり、Xらは、上記の研修を受けていただけでなく、Y社の管理職として上記のようなY社の方針や取組を十分に理解し、セクハラの防止のために部下職員を指導すべき立場にあったにもかかわらず、派遣労働者等の立場にある女性従業員らに対し、職場内において1年余にわたり多数回のセクハラ行為等を繰り返したものであって、その職責や立場に照らしても著しく不適切なものといわなければならない。

(中略)以上によれば、Xらが過去に懲戒処分を受けたことがなく、Xらが受けた各出勤停止処分がその結果として相応の給与上の不利益を伴うものであったことなどを考慮したとしても、Xたちを出勤停止とした各出勤停止処分が本件各行為を懲戒事由とする懲戒処分として重きに失し、社会通念上相当性を欠くということはできない。

したがって、Y社がXらに対してした本件各行為を懲戒事由とする各出勤停止処分は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合に当たるとはいえないから、Y社において懲戒権を濫用したものとはいえず、有効なものというべきである。

結論

管理職が約1年にわたり繰り返したセクハラ発言等を懲戒事由とする出勤停止処分は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合に当たるとはいえず、懲戒権の濫用ではなく有効です。会社がセクハラ防止の取組(禁止文書の周知・研修の義務付け)を行っていたこと、行為者が防止指導をすべき管理職だったこと、行為が1年余・多数回に及び被害者の一人が退職を余儀なくされたことが考慮されました。出勤停止を理由とする降格処分も有効とされています。

関連法令の解説

懲戒権濫用法理(労働契約法15条参照)

使用者の懲戒は、労働者の行為の性質・態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合には、権利濫用として無効になります。本判決はこの枠組みを前提に、セクハラ行為への出勤停止処分がこの「無効となる場合」に当たらない、つまり有効だと判断しました。企業が毅然としたセクハラ処分を行う際の実務上の拠り所になっています。

身近な例え

交通ルールを教える立場の教官が、講習を毎年受けながら1年間も信号無視を繰り返していたら、初違反でも重い処分になって当然、という感覚に近いです。ルールを守らせる側の人がルールを破ったこと、そして会社が事前にルールをきちんと周知していたことが、処分の重さを正当化しました。

なる子ちゃん

なる子ちゃんのざっくりまとめ

セクハラした側の管理職が「処分が重すぎる!」と訴えて負けた判例だよ。会社はセクハラ禁止文書を周知して、毎年の研修まで義務付けてた。そのうえでXらは、部下を指導すべき管理職なのに、1年以上も多数回のセクハラ発言を繰り返して、被害者の一人は退職に追い込まれた。だから、過去に処分歴がなくて給与上の不利益が大きくても、出勤停止処分は重すぎない——懲戒権の濫用じゃなくて有効とされたんだ。しかも降格は「出勤停止処分を受けたこと」自体を降格事由とする人事権の行使として別途有効。「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合に当たるとはいえない」っていう言い回しは空欄補充の定番だから、そのまま覚えちゃってね!

選択式で狙われるポイント

①セクハラへの重い懲戒(出勤停止+降格)が有効とされた事案であること、②懲戒処分歴がなく給与上の不利益を伴うことを考慮しても重すぎないとされたこと、③会社の防止の取組と管理職としての職責が重視されたこと——この3点が柱です。降格は出勤停止処分を独立の降格事由と定める人事権の行使として有効とされた、二段構えの構造も押さえておきましょう。

  • 処分有効の決め手は、会社が禁止文書の周知・毎年の研修義務付け等の防止の取組をしていたこと、行為者がセクハラ防止のために部下を指導すべき管理職だったこと、行為が1年余・多数回に及び被害者の一人が退職を余儀なくされたことです。
  • 行為者に懲戒処分歴がなく、処分に相応の給与上の不利益が伴うことを考慮しても、出勤停止は重きに失しない(社会通念上相当性を欠かない)とされました。
  • 降格は懲戒処分そのものではなく、出勤停止処分を受けたこと自体を独立の降格事由とする規程に基づく人事権の行使として有効とされました。懲戒の有効性と人事権行使の有効性の二段構えになっています。
  • 懲戒権濫用の判断枠組みは「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」です。空欄補充では「客観的に合理的」「社会通念上相当」が問われます。

穴埋めで問われるキーフレーズ

  • 強い不快感や嫌悪感ないし屈辱感等を与えるもの
  • その職責や立場に照らしても著しく不適切
  • 客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合に当たるとはいえない
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