社労士になる子ちゃん
労務管理その他の労働に関する一般常識重要度B企業秩序と懲戒

関西電力事件

最高裁第一小法廷・1983年9月8日・最一小判昭58.9.8

関西電力事件の当事者関係図
関西電力事件の当事者関係図
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なる子ちゃんの判例解説動画

プレミアム4:54

就業時間外に社宅で会社を中傷するビラを配った従業員への譴責処分を有効とした最高裁判決です。労働者の企業秩序遵守義務を正面から認め、職場外・私生活上の行為に懲戒が及ぶ場合とその限界を示した、懲戒法理の基礎となる判例です。

事案の概要

電力会社の発電所で働く従業員が、就業時間外の元日深夜に、職場外である会社の従業員社宅でビラ350枚を配布しました。ビラには、前年に会社が常識や法に反するやり方で労働者を締め付けた、今年はさらに醜いやり方をするだろう、といった会社を非難攻撃し中傷誹謗する記載がありました。会社はこの行為が就業規則の懲戒事由「その他特に不都合な行為があったとき」に当たるとして、懲戒の中で最も軽い譴責処分にしたところ、従業員が処分の無効を主張して提訴しました。

  1. ビラ配布元日深夜、従業員社宅で会社を中傷誹謗するビラ350枚を配布しました
  2. 譴責処分会社が就業規則の懲戒事由に当たるとして最も軽い譴責処分にしました
  3. 提訴従業員が就業時間外・職場外の行為への処分は無効だと主張しました
  4. 最高裁企業秩序に関係する行為として懲戒の対象になり得るとし、処分を有効と判断しました

争点

就業時間外に職場外で行われた、職務遂行と関係のない労働者の行為(会社を中傷誹謗するビラの配布)を理由に、使用者は懲戒処分を課すことができるでしょうか。

判旨

判決文からの引用(原文のまま)

労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るために、その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種の制裁罰である懲戒を課することができるものである。

右企業秩序は、通常、労働者の職場内または職務遂行に関係のある行為を規制することにより維持しうるのであるが、職場外でされた職務遂行に関係のない労働者の行為であっても、企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなど企業秩序に関係を有するものもあるのであるから、使用者は、企業秩序の維持確保のために、そのような行為をも規制の対象とし、これを理由として労働者に懲戒を課することも許されるのであり、右のような場合を除き、労働者は、その職場外における職務遂行に関係のない行為について、使用者による規制を受けるべきいわれはないものと解するのが相当である。

(中略)Xによる本件ビラの配布は、就業時間外に職場外であるY社の従業員社宅において職務遂行に関係なく行われたものではあるが、前記就業規則所定の懲戒事由にあたると解することができ、これを理由としてXに対して懲戒として譴責を課したことは懲戒権者に認められる裁量権の範囲を超えるものとは認められない。

結論

労働者は労働契約により労務提供義務とともに企業秩序遵守義務を負います。企業秩序は通常、職場内・職務遂行に関係のある行為の規制で維持できますが、職場外・職務遂行と無関係な行為でも、企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなど企業秩序に関係するものは懲戒の対象にできます。本件ビラ配布への譴責処分は裁量権の範囲内で有効とされました。

関連法令の解説

労働契約法15条(懲戒)

懲戒が「労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして」客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でないときは権利濫用で無効とする規定です。本判例は、その前提となる「使用者はなぜ懲戒できるのか」(企業秩序維持の権能)と「どの範囲の行為まで懲戒対象にできるのか」(職場外の行為は企業秩序に関係する場合に限る)を示したもので、懲戒権の根拠と限界の両方を学べます。本件の譴責は最も軽い処分だったこともあり、裁量権の範囲内とされました。

身近な例え

学校の校則に例えると、放課後に学校の外でしたことは基本的に学校に口出しされる筋合いはありません。でも、学校の悪口をでたらめ交じりで書いたチラシを生徒の家々に配って学校運営を混乱させたら、さすがに指導の対象になりますよね。「外での行動は原則自由、ただし組織の運営を乱すなら例外」という線引きです。

なる子ちゃん

なる子ちゃんのざっくりまとめ

労働契約を結ぶと、労務提供義務だけじゃなくて企業秩序を遵守する義務も負うんだ。企業秩序って普通は職場内や仕事に関係する行為を規制すれば守れるんだけど、職場外・仕事と無関係の行為でも、企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなら懲戒の対象にできるよ。この事件は社宅での中傷ビラ配りに一番軽い譴責処分をして、それが有効とされたケース。ただし大事なのは裏側で、企業秩序に関係しない純粋な私生活上の行為までは規制できないって限界もセットで示されてるの。「全部規制できる」も「全部規制できない」もどっちも誤りだから、両面で覚えてね!

選択式で狙われるポイント

「職場外・就業時間外の私生活上の行為でも、企業秩序に関係すれば懲戒できる」が本体ですが、同時に「そのような場合を除き、職場外の職務遂行に関係のない行為は使用者の規制を受けない」という限界も示しています。この裏表の両方がひっかけに使われます。処分が懲戒の中で最も軽い「譴責」だった点も事実関係として押さえておきましょう。

  • 空欄補充では「労務提供義務」「企業秩序」「(懲戒を課することも)許される」の部分が狙われます。労働契約から労務提供義務と企業秩序遵守義務の2つが導かれる構造を覚えましょう。
  • 「職場外・就業時間外の行為は一切懲戒の対象にならない」は誤りです。企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなど企業秩序に関係する行為なら懲戒できます。
  • 逆に「私生活上の行為はすべて懲戒の対象になる」も誤りです。企業秩序に関係する場合を除き、職場外の職務遂行に関係のない行為は使用者の規制を受けない、という限界が明示されています。

穴埋めで問われるキーフレーズ

  • 労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負い
  • 企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなど企業秩序に関係を有するもの
  • 職場外における職務遂行に関係のない行為について、使用者による規制を受けるべきいわれはない
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