社労士になる子ちゃん
労務管理その他の労働に関する一般常識重要度B同一労働同一退職金

メトロコマース事件

最高裁第三小法廷・2020年10月13日・最三小判令2.10.13

メトロコマース事件の当事者関係図
メトロコマース事件の当事者関係図
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なる子ちゃんの判例解説動画

プレミアム4:55

駅売店の契約社員に退職金が支給されないことの是非が争われた事件です。退職金の格差も労働契約法20条(当時)の判断対象になり得るとしつつ、職務の内容と変更の範囲の相違などを踏まえ、10年前後働いた契約社員への退職金不支給も不合理でないと結論づけました。同日の大阪医科薬科大学事件(賞与)と対をなす判例です。

事案の概要

会社の従業員は「正社員」「契約社員A」「契約社員B」に区分され、原告らは契約社員Bとして売店業務に従事していました。無期契約の正社員は月給制で退職金が支給される一方、有期契約の契約社員Bは時給制で退職金がありませんでした。原告らは10年前後勤続しており、この退職金不支給は不合理な労働条件の相違だとして退職金の支払いを求めて提訴しました。

  1. 勤務契約社員Bとして売店業務に専従し、契約は原則更新で10年前後勤続しました
  2. 格差正社員には退職金が支給されますが、契約社員Bには支給されませんでした
  3. 提訴退職金不支給は不合理な労働条件の相違だと主張して提訴しました
  4. 最高裁職務の内容と変更の範囲の一定の相違を認め、退職金不支給は不合理でないと判断しました

争点

無期契約・月給制の正社員に退職金を支給する一方、有期契約・時給制の契約社員に退職金を支給しないことは、労働契約法20条(当時)の禁止する不合理な労働条件の相違に当たるのでしょうか。

判旨

判決文からの引用(原文のまま)

労働契約法20条(当時)は、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであり、両者の間の労働条件の相違が退職金の支給に係るものであったとしても、それが同条にいう不合理と認められるものに当たる場合はあり得るものと考えられる。

(中略)売店業務に従事する正社員と契約社員BであるXらの(中略)職務の内容をみると、両者の業務の内容はおおむね共通するものの、正社員は、販売員が固定されている売店において休暇や欠勤で不在の販売員に代わって早番や遅番の業務を行う代務業務を担当していたほか、複数の売店を統括し、売上向上のための指導、改善業務等の売店業務のサポートやトラブル処理、商品補充に関する業務等を行うエリアマネージャー業務に従事することがあったのに対し、契約社員Bは、売店業務に専従していたものであり、両者の職務の内容に一定の相違があったことは否定できない。

また、売店業務に従事する正社員については、業務の必要により配置転換等を命ぜられる現実の可能性があり、正当な理由なく、これを拒否することはできなかったのに対し、契約社員Bは、業務の場所の変更を命ぜられることはあっても、業務の内容に変更はなく、配置転換等を命ぜられることはなかったものであり、両者の職務の内容および配置の変更の範囲にも一定の相違があったことが否定できない。

(中略)Y社の正社員に対する退職金が有する複合的な性質やこれを支給する目的を踏まえて、売店業務に従事する正社員と契約社員Bの職務の内容等を考慮すれば、契約社員Bの有期労働契約が原則として更新するものとされ、定年が65歳と定められるなど、必ずしも短期雇用を前提としていたものとはいえず、Xらがいずれも10年前後の勤続期間を有していることをしんしゃくしても、両者の間に退職金の支給の有無に係る労働条件の相違があることは、不合理であるとまで評価することができるものとはいえない。

結論

退職金の支給差も労働契約法20条(当時)の不合理性判断の対象になり得ますが、判断はその使用者における退職金の性質・支給目的を踏まえて諸事情を考慮して行います。本件では、職務の内容(正社員は代務業務・エリアマネージャー業務あり、契約社員Bは売店業務専従)と変更の範囲(正社員は配置転換あり)の双方に一定の相違があり、契約社員Bの勤続が10年前後に及ぶことを考慮しても、退職金不支給は不合理とまではいえないとされました。

関連法令の解説

労働契約法20条(当時)と退職金

退職金は賃金の後払い・功労報償など複合的な性質を持ち、継続的な雇用の確保を目的に設計されることが多い労働条件です。本判決は、退職金の相違も20条(当時)の不合理性判断の対象になり得るとしたうえで、その複合的な性質・支給目的を踏まえて職務の内容・変更の範囲・その他の事情を考慮する枠組みを示しました。会社に正社員への段階的な登用制度があり実際に登用実績があったことも、判断で考慮された事情です。

身近な例え

長年アルバイトを続けた人が「卒業記念の積立金」をもらえなかった場面を想像してください。その積立金が「幹部候補として長く責任を担う人向け」の制度設計で、幹部は店舗異動もトラブル対応も引き受ける立場だったなら、業務の見た目が似ていても制度の対象外とすることが直ちに不公平とはいえない——制度の性質と役割の違いから考えるのがこの判例です。

なる子ちゃん

なる子ちゃんのざっくりまとめ

大阪医科薬科大学事件と同じ日に出た、退職金バージョンの判例だよ。まず一般論として、退職金の格差も労働契約法20条(当時)の不合理性判断の対象になり得る。ここを「対象外」とするひっかけに注意ね。そのうえで本件は、正社員が代務業務やエリアマネージャー業務を担って配置転換もあり得たのに対し、契約社員Bは売店業務専従で配転なし——職務の内容と変更の範囲の両方に一定の相違があった。だから、10年前後働いてても退職金なしは不合理とまではいえない、って結論。「賞与=大阪医科薬科」「退職金=メトロコマース」の組み合わせを絶対入れ替えないでね!

選択式で狙われるポイント

①退職金の相違も20条の対象になり得ます。②判断は退職金の複合的な性質・支給目的を踏まえて行います。③職務の内容と変更の範囲の双方の「一定の相違」が決め手です。④勤続10年前後・契約が原則更新・定年65歳という事情でも結論は覆りません。この4点が重要です。大阪医科薬科大学事件(賞与)と同日判決で、どちらも不支給を不合理でないと判断した対応関係が頻出です。

  • 「退職金の相違は20条の対象外」とあれば誤りです。退職金でも不合理と認められる場合はあり得る、というのが判例の一般論です。
  • 本件の決め手は、職務の内容(正社員は代務業務・エリアマネージャー業務あり)と変更の範囲(正社員のみ配置転換等の現実の可能性あり)の両面での「一定の相違」です。
  • 契約が原則更新・定年65歳で短期雇用前提とはいえず、勤続10年前後だったとしても、退職金不支給は不合理とまではいえないとされました。勤続の長さだけで結論は覆りません。
  • 「賞与=大阪医科薬科大学事件」「退職金=メトロコマース事件」の入れ替えひっかけに注意しましょう。どちらも令2.10.13の同日判決です。

穴埋めで問われるキーフレーズ

  • 労働条件の相違が退職金の支給に係るものであったとしても、それが同条にいう不合理と認められるものに当たる場合はあり得る
  • 退職金が有する複合的な性質やこれを支給する目的を踏まえて
  • 両者の職務の内容に一定の相違があったことは否定できない
  • 不合理であるとまで評価することができるものとはいえない
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