日本食塩製造事件
最高裁第二小法廷・1975年4月25日・最二小判昭50.4.25

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム5:19「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合は無効」——いまの労働契約法16条そのままの言い回しを、最高裁が初めて判決文に書き込んだ判例です。同時に、無効な除名を理由とするユニオン・ショップ解雇も無効になることを示しました。
事案の概要
会社と労働組合支部との間に「組合を脱退し、または除名された者を解雇する」というユニオン・ショップ条項を含む労働協約が結ばれていました。組合が組合員1名を組合から離籍(実質は除名)した旨を会社に通知したため、会社は3日後、この条項に基づいて解雇の意思表示をしました。本人は離籍そのものが無効であり、したがって解雇も無効だと主張しましたが、原審は「除名の有効・無効は解雇の効力に影響しない」として請求を退けたため、この点が最高裁の争点となりました。
- 協約会社と組合支部がユニオン・ショップ条項を含む労働協約を締結しました
- 除名組合が組合員1名を組合から離籍(実質は除名)し、会社にも通知しました
- 解雇会社がユニオン・ショップ条項を根拠に解雇の意思表示をしました
- 原審除名の有効・無効は解雇の効力に影響しないとして請求を棄却しました
- 最高裁解雇権濫用法理を示し、除名の効力を審理させるため原判決を破棄・差戻ししました
争点
使用者の解雇権の行使にはどのような限界があるのでしょうか。また、ユニオン・ショップ協定に基づいて労働組合から除名された労働者を解雇した場合、その除名が無効であったときに解雇は有効なのでしょうか。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
思うに、使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。
ところで、ユニオン・シヨツプ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失つた場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化をはかろうとする制度であり、このような制度としての正当な機能を果たすものと認められるかぎりにおいてのみその効力を承認することができるものであるから、ユニオン・シヨツプ協定に基づき使用者が労働組合に対し解雇義務を負うのは、当該労働者が正当な理由がないのに労働組合に加入しないために組合員たる資格を取得せず又は労働組合から有効に脱退し若しくは除名されて組合員たる資格を喪失した場合に限定され、除名が無効な場合には、使用者は解雇義務を負わないものと解すべきである。
(中略)右除名が無効な場合には、前記のように使用者に解雇義務が生じないから、かかる場合には、客観的に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、解雇権の濫用として無効であるといわなければならない。
結論
使用者の解雇権の行使も、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認できない場合には権利の濫用として無効になります。ユニオン・ショップ協定に基づく解雇義務が生じるのは、労働者が有効に組合員資格を失った場合に限られ、除名が無効なら使用者に解雇義務は生じないため、他に合理性を裏づける特段の事由がない限り解雇は権利濫用で無効となります。
関連法令の解説
労働契約法16条(解雇)
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めます。本判例が示した判例法理を、平成15年改正で労働基準法18条の2として条文化し、平成19年の労働契約法制定時に同法16条へ移したものです。判例の言葉がほぼそのまま条文になっている珍しい例なので、判旨と条文を並べて覚えるのが早道です。
労働組合法7条1号(不当労働行為・ユニオンショップ)
黄犬契約などを禁じる一方、ただし書で、労働者が特定の労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約(ユニオン・ショップ協定)を、その組合が当該工場事業場の労働者の過半数を代表する場合に限り認めています。本判例は、この制度が組織強化のための手段である以上、正当な機能を果たす範囲でのみ効力を持つと位置づけました。
民法1条3項(権利濫用の禁止)
権利の濫用は許されないという一般原則です。労働契約法ができる前は、解雇の自由(民法627条)に対する歯止めをこの一般条項から導いていました。本判例はその代表例で、現在は労働契約法16条という個別の条文が受け皿になっています。
身近な例え
サークルの規約に「部を追い出された人はバイト先も辞めてもらう」と書いてあったとします。でも、その「追い出し」の手続き自体がデタラメだったなら、それを理由にバイトを辞めさせる根拠もなくなりますよね。土台が崩れれば、その上に乗っていた処分も崩れる——というのがこの判例のイメージです。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
解雇のルールを語るとき、必ず最初に出てくるのがこの判例だよ。「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効」——この一文、いまの労働契約法16条とほぼ同じでしょ? 判例が先にあって、あとから条文になったんだ。もう一つの論点がユニオン・ショップ。組合を除名された人を会社が解雇する仕組みだけど、その除名が無効なら会社に解雇義務は生じない。だから解雇の合理性を裏づける別の事情がない限り、解雇も権利濫用で無効になる。「除名の有効・無効は解雇と関係ない」っていう考え方を最高裁がはっきり否定した、っていうところまでセットで覚えてね!
◎ 選択式で狙われるポイント
「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効」という一文が、のちに労働基準法18条の2を経て労働契約法16条へ明文化されました。解雇権濫用法理の出発点として、条文とセットで押さえましょう。もう一つの軸は「除名が無効なら解雇義務は生じない=解雇も無効」というユニオン・ショップの効力論です。
- ▶判旨の言い回しは労働契約法16条の条文とほぼ同じです。「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」の2要件はセットで、どちらか一方だけを満たせば足りるわけではありません。
- ▶ユニオン・ショップ協定によって使用者が解雇義務を負うのは、労働者が正当な理由なく組合に加入しない場合、有効に脱退した場合、有効に除名された場合に限られます。「除名されれば常に解雇義務が生じる」とあれば誤りです。
- ▶除名が無効でも「他に解雇の合理性を裏づける特段の事由」があれば解雇が有効になる余地は残されています。「除名が無効なら解雇は必ず無効」と言い切る記述は判旨より強すぎます。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」
- 「間接的に労働組合の組織の拡大強化をはかろうとする制度」
- 「除名が無効な場合には、使用者は解雇義務を負わない」
- 「他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、解雇権の濫用として無効」
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