日本郵便事件
最高裁第二小法廷・2018年9月14日・最二小判平30.9.14

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム5:46期間雇用社員の就業規則にある「満65歳で契約を更新しない」という上限条項に基づく雇止めの適法性が争われた事件です。最高裁は、周知された合理的な就業規則の定めは労働契約の内容になるという労働契約法7条の枠組みを適用し、多数回更新されていた社員に対する雇止めも適法と判断しました。就業規則の効力と雇止め法理の関係を学ぶ判例です。
事案の概要
Y社は郵政民営化に関連して設立された会社で、Xらは期間雇用社員として有期労働契約を結び、7〜9回にわたり契約を更新してきました。Y社の期間雇用社員就業規則には、会社都合の特別な場合を除き、満65歳に達した日以後の最初の契約期間満了日をもって契約を更新しないという上限条項がありました(民営化前の公社時代の規程には同様の定めはありませんでした)。Y社がこの条項を適用してXらを雇止めしたところ、Xらが雇止めの無効を主張して提訴しました。
- 民営化郵政民営化に伴い設立されたY社で、Xらが期間雇用社員として勤務していました
- 上限条項就業規則に満65歳到達後の最初の契約期間満了日で更新しない旨の条項が設けられ、周知されていました
- 多数回更新Xらは有期労働契約を7〜9回にわたり更新して働き続けました
- 雇止め満65歳到達を理由に上限条項が適用され、Xらが雇止めの無効を主張して提訴しました
- 最高裁上限条項は合理的な労働条件で契約内容になっているとして、雇止めを適法と判断しました
争点
期間雇用社員の就業規則に「満65歳到達日以後の最初の契約期間満了日をもって契約を更新しない」という上限条項を定めて周知していた場合、多数回更新してきた労働者に対する上限年齢を理由とする雇止めは適法なのでしょうか。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
労働者および使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、当該労働条件は、当該労働契約の内容になる(労働契約法7条)。
本件上限条項は、期間雇用社員が屋外業務等に従事しており、高齢の期間雇用社員について契約更新を重ねた場合に事故等が懸念されること等を考慮して定められたものであるところ、高齢の期間雇用社員について、屋外業務等に対する適性が加齢により逓減し得ることを前提に、その雇用管理の方法を定めることが不合理であるということはできず、Y社の事業規模等に照らしても、加齢による影響の有無や程度を労働者ごとに検討して有期労働契約の更新の可否を個別に判断するのではなく、一定の年齢に達した場合には契約を更新しない旨をあらかじめ就業規則に定めておくことには相応の合理性がある。
(中略)本件上限条項は、Y社の期間雇用社員について、労働契約法7条にいう合理的な労働条件を定めるものであるということができる。
(中略)本件上限条項の定める労働条件が労働契約の内容になっており、Xらは、本件各雇止めの時点において、いずれも満65歳に達していたのであるから、本件各有期労働契約は、更新されることなく期間満了によって終了することが予定されたものであったというべきである。
これらの事情に照らせば、XらとY社との間の各有期労働契約は、本件各雇止めの時点において、実質的に無期労働契約と同視し得る状態にあったということはできない。
(中略)Xらにつき、本件各雇止めの時点において、本件各有期労働契約の期間満了後もその雇用関係が継続されるものと期待することに合理的な理由があったということはできない。
したがって、本件各雇止めは適法であり、本件各有期労働契約は期間満了によって終了したものというべきである。
結論
合理的な労働条件を定めた就業規則が周知されていれば、その労働条件は労働契約の内容になります(労働契約法7条)。屋外業務等への適性が加齢により逓減し得ることを前提に、個別判断ではなく一定年齢で一律に更新しない旨をあらかじめ定めることには相応の合理性があり、本件上限条項は合理的な労働条件に当たります。上限条項が契約内容となっている以上、多数回更新されていても契約は期間満了で終了することが予定されており、無期契約と同視し得る状態にも、雇用継続への合理的期待にも当たらないため、雇止めは適法です。
関連法令の解説
労働契約法7条(労働契約の内容と就業規則の関係)
労働契約の締結時に、合理的な労働条件が定められた就業規則を労働者に周知させていた場合には、その労働条件が労働契約の内容になると定める規定です。個別の契約で細かい労働条件まで定めない実務を踏まえ、就業規則と契約内容の関係を明文化しました。本判決は65歳の上限条項をこの「合理的な労働条件」に当たると判断しています。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
定年を定める場合は60歳を下回れないこと、65歳までの雇用確保措置を講ずべきことを事業主に義務付ける法律です。本判決は、満65歳以後の最初の契約期間満了日で更新を打ち切る本件上限条項がこの法律に抵触しないことを確認しました。65歳という数字の整合性がそのまま論点になっています。
身近な例え
スポーツクラブの会員規約に「レンタルコートの利用は安全のため65歳まで」と最初から書いてあり、入会時に説明も受けていたとします。何年も継続利用していた人でも、65歳になれば規約どおり更新は終わります。「ずっと使えると思っていた」とは言いにくいですよね。最初から示されていた合理的なルールは、長く続いた関係でも約束として生きている、という話です。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
65歳の上限条項での雇止めが争われた判例だよ。土台は労働契約法7条。合理的な労働条件を定めた就業規則を労働者に周知させていたら、その条件は労働契約の内容になるっていうルールね。本件の上限条項は、屋外業務への適性が年齢とともに下がり得ることを前提に、一人ひとり個別判断じゃなくて一定年齢で一律に更新しないと決めたもので、これには「相応の合理性」があるとされたんだ。そして注目ポイントは、契約を6〜9回も更新してた人たちでも、上限条項が契約内容になってる以上、期間満了で終わることが予定されてた=無期と同視できる状態でも、更新への合理的期待があるともいえないとされたこと。「更新回数が多い=雇止めできない」って単純化はひっかけだから注意してね!
◎ 選択式で狙われるポイント
①周知+合理性で就業規則の定めが労働契約の内容になります(労契法7条の枠組み)。②年齢上限を個別判断でなく一律に定めることにも相応の合理性が認められました。③6〜9回の多数回更新でも、上限条項が契約内容なら「無期と同視し得る状態」や「更新への合理的期待」は否定され得ます。雇止め法理との関係が最大のポイントです。
- ▶労働契約法7条の要件は「合理的な労働条件」+「労働者への周知」です。周知させていなければ就業規則の定めは契約内容にならないので、「周知していなくても契約内容になる」とする肢は誤りです。
- ▶加齢の影響を労働者ごとに個別判断せず、一定年齢で一律に更新しないと定めることにも「相応の合理性」が認められました。一律の定め=不合理、と即断させる肢に注意しましょう。
- ▶契約が6〜9回と多数回更新されていても、上限条項が契約内容になっている以上、期間満了での終了が予定されていたとして「無期契約と同視し得る状態」も「更新への合理的期待」も否定されました。更新回数の多さだけで雇止め法理の保護が及ぶわけではありません。
- ▶上限条項は、定年60歳下限と65歳までの雇用確保措置を定める高年齢者雇用安定法にも抵触しないとされました。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、当該労働条件は、当該労働契約の内容になる」
- 「一定の年齢に達した場合には契約を更新しない旨をあらかじめ就業規則に定めておくことには相応の合理性がある」
- 「実質的に無期労働契約と同視し得る状態にあったということはできない」
- 「雇用関係が継続されるものと期待することに合理的な理由があったということはできない」
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