社労士になる子ちゃん
労務管理その他の労働に関する一般常識重要度B同一労働同一賞与

大阪医科薬科大学事件

最高裁第三小法廷・2020年10月13日・最三小判令2.10.13

大阪医科薬科大学事件の当事者関係図
大阪医科薬科大学事件の当事者関係図
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なる子ちゃんの判例解説動画

プレミアム4:38

フルタイムのアルバイト職員に賞与が支給されないことの是非が争われた事件です。賞与の格差も労働契約法20条(当時)の判断対象になり得るとしつつ、賞与の性質・支給目的と職務の内容の相違を踏まえ、本件の不支給は不合理でないと結論づけました。同日のメトロコマース事件(退職金)と対で覚える判例です。

事案の概要

大学と有期労働契約を結んだ時給制のアルバイト職員が原告です。フルタイムの所定労働時間で勤務し、契約を3度更新して約3年2カ月間在籍しました(うち最後の約1年1カ月は年休と欠勤で出勤していません)。大学では月給制の正職員に通年で基本給4.6カ月分程度の賞与が支給される一方、アルバイト職員には賞与がなく、原告はこの不支給が不合理な相違だとして賞与の支払い等を求めて提訴しました。

  1. 契約時給制のアルバイト職員として有期労働契約を締結し、フルタイムで勤務していました
  2. 更新契約を3度更新し、約3年2カ月間在籍しました(末期は年休・欠勤で出勤していません)
  3. 格差正職員には基本給4.6カ月分程度の賞与が支給される一方、アルバイト職員には賞与がありませんでした
  4. 提訴賞与の不支給は不合理な労働条件の相違だと主張して提訴しました
  5. 最高裁賞与の性質・支給目的と職務の内容の相違を踏まえ、不支給は不合理でないと判断しました

争点

月給制の正職員に賞与を支給する一方、有期契約・時給制のアルバイト職員に賞与を支給しないことは、労働契約法20条(当時)の禁止する不合理な労働条件の相違に当たるのでしょうか。

判旨

判決文からの引用(原文のまま)

労働契約法20条(当時)は、有期労働契約を締結した労働者と無期労働契約を締結した労働者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期労働契約を締結した労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであり、両者の間の労働条件の相違が賞与の支給に係るものであったとしても、それが同条にいう不合理と認められるものに当たる場合はあり得るものと考えられる。

もっとも、その判断に当たっては、他の労働条件の相違と同様に、当該使用者における賞与の性質やこれを支給することとされた目的を踏まえて同条所定の諸事情を考慮することにより、当該労働条件の相違が不合理と評価することができるものであるか否かを検討すべきものである。

(中略)上記賞与は、通年で基本給の4.6カ月分が一応の支給基準となっており、その支給実績に照らすと、Y大学の業績に連動するものではなく、算定期間における労務の対価の後払いや一律の功労報償、将来の労働意欲の向上等の趣旨を含むものと認められる。

(中略)Y大学は、正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から、正職員に対して賞与を支給することとしたものといえる。

(中略)Xの業務は、その具体的な内容や、Xが欠勤した後の人員の配置に関する事情からすると、相当に軽易であることがうかがわれるのに対し、教室事務員である正職員は、これに加えて、学内の英文学術誌の編集事務等、病理解剖に関する遺族等への対応や部門間の連携を要する業務または毒劇物等の試薬の管理業務等にも従事する必要があったのであり、両者の職務の内容に一定の相違があったことは否定できない。

結論

賞与の支給差も労働契約法20条(当時)の不合理性判断の対象になり得ます。ただし判断に当たっては、その使用者における賞与の性質や支給目的を踏まえて諸事情を考慮します。本件の賞与は業績非連動で、労務の対価の後払い・一律の功労報償・労働意欲向上等の趣旨を含み、正職員人材の確保・定着が支給目的であり、職務の内容にも一定の相違があったため、アルバイト職員への不支給は不合理とまでは評価できないとされました。

関連法令の解説

労働契約法20条(当時)と賞与

20条(当時)は有期・無期間の不合理な労働条件の相違を禁止する規定で、基本給や手当だけでなく賞与の相違も対象になり得ます。ただし賞与は使用者ごとに性質・目的が異なるため、判断ではまずその使用者における賞与の性質(本件では業績非連動・労務の対価の後払い・功労報償・労働意欲向上)と支給目的(人材の確保・定着)を認定し、それを踏まえて職務の内容等の諸事情を考慮するという二段構えになります。

身近な例え

部活の「レギュラー定着ボーナス」を想像してください。これは試合の勝敗(業績)へのご褒美ではなく、長くチームの中核を担ってほしい人への定着インセンティブです。だとすれば、練習の一部だけ手伝う助っ人に同じボーナスを出さなくても、直ちに不公平とはいえない——賞与の「目的」から逆算して考えるのがこの判例の発想です。

なる子ちゃん

なる子ちゃんのざっくりまとめ

「アルバイトにも賞与を払うべき?」が正面から争われた判例だよ。まず大事なのは、賞与の格差も労働契約法20条(当時)の不合理性判断の対象になり得るってこと。「賞与は対象外」って肢が出たら×だからね。そのうえで、判断はその会社での賞与の性質と支給目的を踏まえて行う。この大学の賞与は業績連動じゃなくて、労務の対価の後払いや功労報償の趣旨で、正職員の人材確保・定着が目的だった。しかもアルバイト職員の業務は相当に軽易で、正職員は英文学術誌の編集や病理解剖の遺族対応まで担ってた。だから不支給でも不合理じゃない、って結論になったんだ。同じ日のメトロコマース事件(退職金)とペアで覚えてね!

選択式で狙われるポイント

①賞与の相違も20条の対象になり得ること(対象外ではありません)、②判断はその使用者における賞与の性質・支給目的を踏まえて行うこと、③本件では職務の内容の一定の相違(アルバイト職員の業務は相当に軽易、正職員は英文学術誌の編集・病理解剖の遺族対応・毒劇物管理等も担当)が結論を分けたこと——という流れで押さえましょう。「賞与=本件」「退職金=メトロコマース事件」の対応関係も頻出です。

  • 「労働条件の相違が賞与に係るものである場合は20条の対象外」とあれば誤りです。賞与の相違でも不合理と認められる場合はあり得る、というのが判例です。
  • 不合理性の判断は、当該使用者における賞与の性質・支給目的を踏まえて諸事情を考慮します。本件の賞与は業績に連動しない性質と認定されました。
  • 本件で賞与不支給が不合理でないとされた決め手は、賞与の支給目的(正職員人材の確保・定着)と職務の内容の一定の相違です。アルバイト職員の業務は相当に軽易とされました。
  • 同日のメトロコマース事件は退職金がテーマです。「賞与=大阪医科薬科大学」「退職金=メトロコマース」の対応を入れ替えるひっかけに注意しましょう。

穴埋めで問われるキーフレーズ

  • 労働条件の相違が賞与の支給に係るものであったとしても、それが同条にいう不合理と認められるものに当たる場合はあり得る
  • 当該使用者における賞与の性質やこれを支給することとされた目的を踏まえて
  • 労務の対価の後払いや一律の功労報償、将来の労働意欲の向上等の趣旨
  • 正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的
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