社労士になる子ちゃん
労務管理その他の労働に関する一般常識重要度A使用者の言論と支配介入

プリマハム事件

最高裁第二小法廷・1982年9月10日・最二小判昭57.9.10

プリマハム事件の当事者関係図
プリマハム事件の当事者関係図
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なる子ちゃんの判例解説動画

プレミアム4:36

賃上げ交渉の決裂後、会社が社長名義でスト反対を呼びかける声明文を全事業所に掲示した行為が、労働組合への支配介入(不当労働行為)とされた事件です。使用者の言論の自由と労働者の団結権が衝突したとき、どういう物差しで線を引くかを示した重要判例です。

事案の概要

賃上げ要求の団体交渉が決裂した後、会社は社長名義の声明文を全事業所に掲示しました。声明文は、スト決行をめざす組合幹部の姿勢を「ストのためのスト」と批判し、これ以上の回答は不可能で「重大な決意」をせざるを得ないと述べ、節度ある行動を求める内容でした。掲示直後から組合内部でスト反対の動きが広がり、第一波の部分スト後に不参加者・脱落者が多数出たため、組合はストを中止して賃上げ問題を妥結しました。組合は、声明文の掲示が支配介入に当たると主張して争いました。

  1. 交渉決裂賃上げ要求の団体交渉が決裂しました
  2. 声明文掲示組合幹部を批判し「重大な決意」に言及する社長声明文が、全事業所に一斉掲示されました
  3. 組合動揺組合内部でスト反対運動が広がり、部分スト後に多数の脱落者が出ました
  4. スト中止組合はストを中止して賃上げ問題を妥結しました
  5. 司法判断声明文の掲示は組合の内部運営に対する支配介入に当たると判断されました

争点

団体交渉が決裂した局面で、組合幹部を批判しストライキへの不参加を促す社長名義の声明文を全事業所に掲示することは、労働組合の運営に対する支配介入(不当労働行為)に当たるのでしょうか。

判旨

判決文からの引用(原文のまま)

「およそ使用者だからといって憲法21条に掲げる言論の自由が否定されるいわれがないことはもちろんであるが、憲法28条の団結権を侵害してはならないという制約をうけることを免れず、使用者の言論が組合の結成、運営に対する支配介入にわたる場合は不当労働行為として禁止の対象となると解すべきである。

これを具体的にいえば、組合に対する使用者の言論が不当労働行為に該当するかどうかは、言論の内容、発表の手段、方法、発表の時期、発表者の地位、身分、言論発表の与える影響などを総合して判断し、当該言論が組合員に対し威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼすような場合は支配介入となるというべきである。

(中略)以上を総合して考えると、本件社長声明文は、ストライキをいつどのような方法で行うか等という、組合が自主的に判断して行動すべきいわゆる組合の内部運営に対する支配介入行為にあたると認めるのが相当である。」

結論

使用者にも言論の自由はありますが、労働者の団結権を侵害してはならないという制約を受けます。使用者の言論が不当労働行為に当たるかは、内容・手段方法・時期・発表者の地位身分・影響などを総合して判断し、組合員に威嚇的効果を与え組合の組織・運営に影響を及ぼす場合は支配介入となります。本件の社長声明文の掲示は支配介入に当たります。

関連法令の解説

憲法21条(表現の自由)

言論の自由は使用者にも保障されます。ただし本判例は、使用者の言論は憲法28条の団結権を侵害してはならないという内在的な制約を受けるとし、支配介入にわたる場合は不当労働行為として禁止されると整理しました。

憲法28条(団結権)

労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権を保障する規定です。ストライキをいつ・どのような方法で行うかは組合が自主的に決めるべき内部運営事項であり、使用者の言論がここに威嚇的な影響を及ぼすと支配介入と評価されます。

身近な例え

生徒会の選挙前に、校長が全教室に「今の生徒会長の路線は間違っている。従う人には厳しい対応も考える」という貼り紙をしたようなものです。校長にも意見を言う自由はありますが、立場が強い人が影響力のある形で介入すれば、生徒たちの自主的な決定はゆがんでしまいます。誰が・いつ・どんな方法で言ったかまで見て判断するのがこの判例の考え方です。

なる子ちゃん

なる子ちゃんのざっくりまとめ

社長にだって言論の自由はあるよ。でも団結権を侵害しちゃダメっていう制約付きなんだ。じゃあどこからアウトかというと、①言論の内容、②発表の手段・方法、③時期、④発表者の地位・身分、⑤実際に与えた影響——を総合して判断して、組合員を威嚇して組合の組織・運営に影響を及ぼすなら支配介入!この事件では、団交決裂直後に社長名義で全事業所に一斉掲示して、実際に脱落者が続出したから支配介入とされたの。「総合判断」っていうキーワードと、ストの決定は組合の内部運営事項ってところを押さえてね!

選択式で狙われるポイント

使用者の言論の自由(憲法21条)と団結権(憲法28条)の調整問題です。判断は「内容・手段方法・時期・地位身分・影響」の総合考慮で行い、威嚇的効果+組織運営への影響があれば支配介入となります。ストをやるかどうかは組合が自主的に決める内部運営事項だ、という位置づけもセットで押さえましょう。

  • 使用者にも言論の自由(憲法21条)はありますが、団結権(憲法28条)を侵害してはならないという制約を受けます。「使用者だから言論の自由がない」も「言論の自由だから何を言ってもよい」も、どちらも誤りです。
  • 支配介入の判断は一発アウトの形式基準ではなく、内容・手段方法・時期・発表者の地位身分・影響などの総合判断によります(H24-一般2Eは、この判断枠組みを問うものです)。
  • 本件で決め手になった事情は、ユニオン・ショップ協定下で「従業員の皆さん」=組合員全員に向けられたこと、交渉継続の余地が残る時期だったこと、社長名義だったこと、掲示後に現実に脱落者が多数出たことです。

穴埋めで問われるキーフレーズ

  • 言論の内容、発表の手段、方法、発表の時期、発表者の地位、身分、言論発表の与える影響などを総合して判断
  • 組合員に対し威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼすような場合は支配介入となる
  • 組合が自主的に判断して行動すべきいわゆる組合の内部運営に対する支配介入行為

出題実績

  • H24-一般2E
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