事業場に置く人と会議体
安衛法でいちばん点を取りやすく、いちばん取りこぼしやすいのがこの節です。誰を、どの業種で、何人以上の事業場に置くのか。この3点の組み合わせがそのまま択一の問題文になります。
覚え方のコツは、「危険な業種だけに必要な人」と「業種を問わず必要な人」に分けて頭に入れることです。安全は危険な業種だけ、衛生と健康は全業種。この軸が通っていると、細かい数字も迷いません。
簡単にいうと
登場人物が多いので、最初に「誰が誰の下につくのか」だけ掴んでしまいましょう。
一般的な安全衛生管理体制には、6人の登場人物がいます。
・総括安全衛生管理者 ― 事業場全体の安全衛生を統括する司令塔
・安全管理者 ― 総括安全衛生管理者の下で安全面を担当
・衛生管理者 ― 総括安全衛生管理者の下で衛生面を担当
・安全衛生推進者・衛生推進者 ― 小規模事業場で管理者の代わりを務める
・産業医 ― 労働者の健康管理を担う医師
・作業主任者 ― 危険な作業の区分ごとに現場を指揮する
上下関係でいうと、事業者が総括安全衛生管理者を選任し、その下に安全管理者と衛生管理者がぶら下がる形です。産業医、推進者、作業主任者は総括安全衛生管理者の指揮系統に入らず、事業者が直接選任します。
この節では6人それぞれの「選任が必要になる事業場」と「巡視義務の有無」を見ていきます。この2点が試験のほぼすべてです。
具体例
従業員400人の運送会社であれば、100人以上なので総括安全衛生管理者が必要、危険な業種で50人以上なので安全管理者も必要、業種を問わず50人以上なので衛生管理者と産業医も必要、という順に埋めていきます。

業種と規模の組み合わせで、置くべき人が決まる
試験のポイント
簡単にいうと
100人・300人・1,000人。この3つの数字がどの業種に対応するかが、そのまま出題されます。
事業者は、次の業種及び規模の事業場ごとに、総括安全衛生管理者を選任しなければなりません。
・林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 ― 常時100人以上
・製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、各種商品卸売業、各種商品小売業、自動車整備業、機械修理業など ― 常時300人以上
・その他の業種 ― 常時1,000人以上
危険度が高い業種ほど少ない人数で選任義務がかかる、という並びになっています。
資格の要件はありません。当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもって充てなければならない、と定められているだけで、特別の資格・免許・経験は不要です。実際には工場長や支店長といった、その事業場のトップが就くことになります。
行政上の措置として、都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができます。勧告の主体が都道府県労働局長である点に注意してください。
具体例
簡単にいうと
この人だけは、危ない業種にしか出てきません。ここが最大の引っかけポイントです。
事業者は、次の業種の事業場で常時50人以上の労働者を使用する場合に、安全管理者を選任しなければなりません。
・林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業
・製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、各種商品卸売業、各種商品小売業、自動車整備業、機械修理業など
業種の並びは総括安全衛生管理者の1つ目・2つ目とまったく同じです。決定的に違うのは、総括安全衛生管理者にあった「その他の業種」の区分が存在しないことです。つまり危険度の低い業種では、何人規模になっても安全管理者を選任する必要がありません。
安全管理者になるには、学歴等の要件を満たした者や労働安全コンサルタント等であることが必要です。例えば、大学で理系の学部を卒業し、その後2年以上の産業安全の実務を経験して所定の研修を修了した者などが該当します。
そのほかの特徴は次のとおりです。
・原則としてその事業場に専属でなければならない
・現場の安全担当者なので、常に作業場を巡視する義務がある(週◯回といった頻度の定めはない)
・所轄労働基準監督署長は、事業者に対し安全管理者の増員又は解任を命ずることができる
簡単にいうと
衛生は業種を問いません。そして規模が大きくなるほど人数が増える、階段状の表がついてきます。
事業者は、業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生管理者を選任しなければなりません。安全管理者と違い、業種による絞り込みがない点が大きな違いです。
さらに、事業場の規模に応じた最低選任人数が決まっています。
・50人以上200人以下 ― 1人以上
・200人超500人以下 ― 2人以上
・500人超1,000人以下 ― 3人以上
・1,000人超2,000人以下 ― 4人以上
・2,000人超3,000人以下 ― 5人以上
・3,000人超 ― 6人以上
衛生管理者になれるのは、都道府県労働局長の免許を受けた者、医師又は歯科医師、労働衛生コンサルタントなどです。免許には第1種衛生管理者免許・第2種衛生管理者免許・衛生工学衛生管理者免許の3種類があります。
職務上の特徴は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視する義務があることです。安全管理者の「常に」に対し、衛生管理者は「毎週1回」と頻度が明示されています。専属であることが原則である点と、所轄労働基準監督署長が増員又は解任を命じることができる点は、安全管理者と同じです。
簡単にいうと
管理者を置くほどではない小さな事業場のために用意された、いわば簡易版です。
事業者は、安全管理者を選任すべき事業場及び衛生管理者を選任すべき事業場以外で、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場ごとに、安全衛生推進者又は衛生推進者を選任しなければなりません。
呼び名の使い分けは業種で決まります。
・危険な業種(安全管理者を選任すべき業種)― 安全衛生推進者
・危険ではない業種 ― 衛生推進者
50人以上の規模でどうなるかと並べると、構造がよく見えます。危険な業種で50人以上なら安全管理者と衛生管理者の両方、危険ではない業種で50人以上なら衛生管理者だけ、というのが上の段です。
選任は、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者等から行わなければなりません。
そして重要なのが、安全衛生推進者及び衛生推進者には作業場等の巡視義務がないことです。安全管理者・衛生管理者・産業医にはそれぞれ巡視義務があるので、ここだけ「なし」である点が対比で問われます。
具体例
簡単にいうと
医師だからこその独立性が与えられている人です。勧告できる、というのが他の管理者にはない特徴。
事業者は、業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、医師のうちから産業医を選任しなければなりません。労働者数が3,000人を超えると、産業医は最低2人の選任が必要になります。
産業医になれるのは、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について、厚生労働大臣が指定する法人が行う研修を修了した医師等です。
巡視は、原則として少なくとも毎月1回です。ただし、産業医が事業者から毎月1回以上所定の情報提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも2か月に1回とすることができます。
専属の要件もあります。次のいずれかに当たる事業場では、その事業場に専属の産業医を選任しなければなりません。
・常時1,000人以上の労働者を使用する事業場
・一定の有害な業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場
そのほか、押さえておきたいルールが4つあります。
・事業者が法人の場合、当該法人の代表者がその事業場の産業医になることはできない
・事業者は、労働者の労働時間に関する情報など、産業医が健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければならない
簡単にいうと
ここまでの5人と発想が違います。事業場の規模は関係なく、危ない作業をするかどうかで決まります。
事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業については、都道府県労働局長の免許を受けた者等が行う技能講習を修了した者のうちから、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任しなければなりません。
他の管理者と違い、選任のきっかけが労働者数ではありません。政令で定められた危険・有害な作業を行うかどうかで決まります。したがって小さな事業場でも、対象作業を行えば選任が必要です。
資格は、都道府県労働局長の免許を受けた者、または技能講習を修了した者です。作業の区分ごとに必要な資格が決まっているため、1人の作業主任者があらゆる作業をカバーできるわけではありません。
職務は、労働災害を防止するための管理を必要とする作業に従事する労働者の指揮を執ることです。
なお、作業主任者は後の節で扱う職長教育の対象外とされています。ここは教育の節と合わせて確認してください。
具体例
従業員15人の小さな塗装業者でも、有機溶剤を使う屋内作業を行うなら、有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者を作業主任者として選任しなければなりません。
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常時120人が働く清掃会社の営業所には総括安全衛生管理者が必要です。同じ120人でも、業種が一般の事務サービス業であれば「その他の業種」なので1,000人に届かず、選任は不要になります。
試験のポイント
「専属」とは、その事業所のみに勤務する状態のことです。原則として複数の事業場をかけ持つことはできません。
具体例
従業員80人のソフトウェア開発会社は「その他の業種」なので、安全管理者を選任する必要がありません。同じ80人でも自動車整備工場であれば選任義務があります。
試験のポイント
具体例
常時600人が働く百貨店では、衛生管理者を3人以上選任しなければなりません。仮に従業員が200人ちょうどであれば1人以上で足り、201人になった時点で2人以上が必要になります。
試験のポイント
試験のポイント
・産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し必要な勧告をすることができる。事業者はこの勧告を尊重しなければならない
・産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、事業者は遅滞なく、その旨及び理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない
なお、産業医の選任義務がない50人未満の事業場についても、事業者は医師や保健師に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければなりません。
試験では「産業医は少なくとも毎年1回作業場等を巡視しなければならない」という誤りの選択肢が出題されたことがあります。正しくは原則として毎月1回です。また「産業医にはいかなる場合も専属の規定はない」という誤りも出ています。上記2つの事業場では専属が必要です。
具体例
常時1,200人が働く食品メーカーの工場では、専属の産業医が必要です。産業医のあおいさんが健康診断の結果から作業転換の必要を認めて事業者に勧告した場合、事業者はその勧告を尊重しなければなりません。
試験のポイント
試験のポイント
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