危険と健康障害を防ぐ措置
同じ場所で複数の会社が働くと、自社の労働者を守るだけでは事故は防げません。そこで安衛法は、元請や注文者、機械や建物を貸す者にまで義務を広げています。
この節の最大の山場は「誰が対象か」の切り分けです。すべての業種の元方事業者に課されるもの、建設業・造船業(特定事業)だけに課されるもの、製造業等に課されるもの。ここを混ぜないことが得点の分かれ目になります。
簡単にいうと
まずは全業種が対象の規定から。特定事業に限られない点が引っかけどころです。
元方事業者とは、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているものをいいます。
【条文】労働安全衛生法第29条
第1項 元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならない。
第2項 元方事業者は、関係請負人又は関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行わなければならない。
違反しないように「指導」し、違反していると認めるときは「是正のため必要な指示」をする、という2段構えです。
この規定が対象としているのは、特定元方事業者ではなく「元方事業者」です。したがって特定事業(建設業又は造船業)だけでなく、すべての業種が対象になります。次に見る特定元方事業者の措置と混同しやすいので、ここは意識して区別してください。
具体例
システム開発を請け負わせている発注元の企業でも、下請の作業員が安衛法令に違反する使い方をしていれば、是正の指示をしなければなりません。建設業でなければ関係ない、という規定ではないということです。
試験のポイント
簡単にいうと
建設業と造船業だけに課される、いちばん重い義務です。「協議組織」が入るのはここだけ。
特定元方事業者(建設業又は造船業を行う元方事業者)は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、次の事項等に関する必要な措置を講じなければなりません。
・協議組織の設置及び運営を行うこと
・作業間の連絡及び調整を行うこと
・毎作業日に少なくとも1回、作業場所を巡視すること
・関係請負人が行う労働者の安全又は衛生のための教育に対する指導及び援助を行うこと
巡視の頻度に注目してください。「毎作業日に少なくとも1回」です。衛生管理者の毎週1回、産業医の毎月1回と混ざりやすいところなので、危険度の高い混在現場は毎日見る、と結びつけて覚えましょう。
そして最重要なのが、協議組織の設置及び運営がこの4つに含まれていることです。次のテーマで見る製造業等の元方事業者には、この協議組織の義務がありません。試験では「協議組織の設置及び運営は、造船業を除く製造業の元方事業者が講ずべき措置として義務付けられている」という誤りの選択肢が出題されたことがあります。協議組織が出てきたら特定元方事業者の話、と判断してください。
具体例
簡単にいうと
似た規定がもう1つあります。違いはただ1点、協議組織があるかないか。
製造業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業を除く)の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講じなければなりません。
前のテーマの特定元方事業者の措置と比べると、義務の中身が絞られていることが分かります。ここでは「作業間の連絡及び調整」が中心であり、協議組織の設置及び運営は入っていません。
3つの規定を対象で並べると、次のようになります。
・29条の指導・指示 ― すべての業種の元方事業者
・特定元方事業者の措置(協議組織など4つ)― 建設業・造船業
・製造業等の元方事業者の措置(連絡調整など)― 製造業等(特定事業を除く)
「どの業種に、どの義務が」という組み合わせで問われるので、この3段を対比で覚えるのが最短ルートです。
具体例
簡単にいうと
「そのやり方は法律違反ですよ」という作業を、注文する側が命じてはいけません。
注文者は、その請負人に対して、労働安全衛生法令に違反するような指示をしてはなりません。
典型例として挙げられるのが、クレーンによってつり上げ能力を超える荷をつり上げることを指示する、といったケースです。請負人が断りにくい立場にあることを踏まえ、指示を出す側に直接の禁止をかけています。
総則で学んだ注文者の責務(施工方法・工期等について安全で衛生的な作業の遂行を損なう恐れのある条件を付さないように配慮する)とセットで押さえておきましょう。総則が「配慮」という努力義務であるのに対し、こちらは違法な指示そのものを禁じる規定です。
具体例
運送を請け負わせている荷主が「積載量を少し超えても1回で運んでほしい」と指示するようなケースが、この規定に触れる典型です。
試験のポイント
簡単にいうと
使わせる側にも責任があります。ただし「丸ごと貸したら借りた側」という例外に注意。
現場に物を提供する立場の者にも、災害防止の義務があります。
・機械等貸与者
機械等貸与者(いわゆるリース業者のように、機械等を相当の対価を得て業として他の事業者に貸与する者)は、貸与を受けた事業者の事業場における当該機械等による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。ただし、当該機械等を実際に使う者が借りた側の労働者ではない場合には、借りた側(機械等の貸与を受けた者)がこの災害防止義務を負います。
・建築物貸与者
【条文】労働安全衛生法第34条
建築物で、政令で定めるものを他の事業者に貸与する者(以下「建築物貸与者」という)は、当該建築物の貸与を受けた事業者の事業に係る当該建築物による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。ただし、当該建築物の全部を一の事業者に貸与するときは、この限りでない。
ただし書きの趣旨は、原則として建物を貸した側が災害防止義務を負うが、建物一棟を丸ごと1つの事業者に貸した場合は借りた側が義務を負う、というものです。複数のテナントが入るビルでは共用部分を管理できるのは貸主だけなので、貸主に義務を課しているわけです。
・重量表示
一の貨物で、重量が1トン以上のものを発送しようとする者は、見やすく、かつ、容易に消滅しない方法で、当該貨物にその重量を表示しなければなりません。ただし、包装されていない貨物で、その重量が一見して明らかであるものを発送しようとするときは、表示の義務はありません。
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マンション建設現場で、元請が毎月の安全協議会を開いて全下請の職長を集め、翌月の工程の重なりを調整する。これが協議組織の設置及び運営と作業間の連絡調整にあたります。現場所長が毎日現場を一巡するのが巡視です。
試験のポイント
試験のポイント
具体例
テナントビルのオーナーが、共用階段の手すりや非常口を整備するのが建築物貸与者の措置です。一方、倉庫を一棟丸ごと1社に貸したのであれば、その借り主が義務を負います。
試験のポイント
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