事業場に置く人と会議体
建設現場では、元請の社員と何社もの下請の職人が同じ場所で同時に働きます。それぞれの会社が自社の労働者だけを見ていたのでは、上でクレーンが荷を吊っている真下で別の会社が作業を始める、といった事故が防げません。
そこで安衛法は、前の節で見た一般的な体制に「重ねて」もう1つの体制を求めています。この節では、そこに登場する4人と、一般的体制との対応関係を整理します。
簡単にいうと
一般的な体制の代わりではなく、上乗せです。建設会社は両方を用意することになります。
請負関係における安全衛生管理体制には、4人の登場人物がいます。
・統括安全衛生責任者 ― 元請側のトップとして現場全体をまとめる
・元方安全衛生管理者 ― 統括安全衛生責任者の下で実務を担う
・安全衛生責任者 ― 下請側に置かれ、元請と連絡調整する
・店社安全衛生管理者 ― 現場ではなく支店等から中小規模現場を指導する
関係を整理すると、元方事業者が統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者を選任し、下請負人が安全衛生責任者を選任します。店社安全衛生管理者は現場に常駐せず、店社(支店・営業所)から現場を指導する立場です。
ここで大事なのは、これが一般的安全衛生管理体制と入れ替わるものではないという点です。建設会社であれば、自社の事業場に総括安全衛生管理者や衛生管理者を置いたうえで、現場ごとにこの体制も整えることになります。
具体例
オフィスビルの新築現場で、元請の大手建設会社が統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者を置き、鉄骨工事を請け負った下請会社が安全衛生責任者を置く、という形です。
試験のポイント
簡単にいうと
対象は「特定事業」だけ。そして人数の線引きが仕事の中身で2つに割れます。
元方事業者のうち特定事業を行う者を、特定元方事業者といいます。特定事業とは、建設業及び造船業のことです。
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が一の場所において作業を行うとき、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、次の規模の作業場所ごとに統括安全衛生責任者を選任しなければなりません。
・ずい道や橋梁の建設、圧気工法による作業 ― 常時30人以上
・上記以外の建設業、造船業 ― 常時50人以上
トンネルや橋、圧気工法といった特に危険な工事は、少ない人数から選任が必要になる、という組み立てです。
資格の要件はありません。当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもって充てなければならないとされているだけで、特別の資格・免許・経験は不要です。ここは総括安全衛生管理者と同じ扱いです。
行政上の措置として、都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、統括安全衛生責任者の業務の執行について事業者に勧告することができます。
用語の確認をしておきましょう。元方事業者とは、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているものをいいます。関係請負人とは、その請負人のことです。
簡単にいうと
統括安全衛生責任者を置いた会社のうち、建設業だけに追加で求められます。造船業は対象外です。
統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業を行うものは、元方安全衛生管理者を選任しなければなりません。
注意すべきは対象の絞り込みです。統括安全衛生責任者は建設業と造船業の両方に必要ですが、元方安全衛生管理者は建設業だけです。造船業には求められません。
選任は、その事業場に専属の者を選任して行わなければなりません。一般的体制の安全管理者・衛生管理者が原則として専属であるのと同じです。
行政上の措置として、労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、当該元方安全衛生管理者を選任した事業者に対し、元方安全衛生管理者の増員又は解任を命ずることができます。
具体例
造船所の元請が統括安全衛生責任者を選任したとしても、元方安全衛生管理者を置く必要はありません。同じ規模の建設現場であれば、専属の元方安全衛生管理者が必要です。
試験のポイント
簡単にいうと
残る2人は立ち位置が独特です。片方は下請の側、もう片方は現場の外から。
安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人、つまり元方事業者ではなく下請負人において選任しなければならないとされています。
その役割は、下請として行う作業の施工工程や工法等を通じて把握している混在作業による危険の有無等について、施工工程全般を把握管理している統括安全衛生責任者と打合せをすることです。そのうえで、他の職方との段取りをつけていきます。元請と下請の間に立つ連絡役、と捉えるとイメージしやすいでしょう。
店社安全衛生管理者は、統括安全衛生責任者を選任する義務のない中小規模の建設現場を対象とします。小さな現場でも労働災害は多発しているため、建設現場の現場所長や安全担当者に対して指導を行う者として、支店等から関与させるものです。
選任が必要な規模は次のとおりです。
・ずい道や橋梁の建設、圧気工法による作業 ― 常時20人以上30人未満
・主要構造部が鉄骨造又は鉄骨鉄筋コンクリート造である建築物の建設の仕事 ― 常時20人以上50人未満
上限に注目してください。統括安全衛生責任者の選任義務が発生する人数(30人・50人)の、ちょうど手前までが店社安全衛生管理者の担当範囲になっています。統括安全衛生責任者が置かれる規模になれば、店社安全衛生管理者の出番は終わる、という関係です。
具体例
簡単にいうと
バラバラに覚えると混乱します。階層をそろえて並べると、共通点が浮かび上がります。
一般的安全衛生管理体制と請負関係における安全衛生管理体制は、階層をそろえて比較すると効率的に覚えられます。
第1階層は、一般的体制の総括安全衛生管理者と、請負関係の統括安全衛生責任者です。この2人には共通点があります。
・特別の資格、免許又は経験は不要(統括管理していればよい)
・都道府県労働局長が、業務の執行について事業者に勧告することができる
第2階層は、一般的体制の安全管理者・衛生管理者と、請負関係の元方安全衛生管理者です。こちらにも共通点があります。
・その事業場に専属の者を選任しなければならない
・労働基準監督署長が、事業者に対し増員又は解任を命ずることができる
つまり、勧告するのは都道府県労働局長で第1階層、増員・解任を命じるのは労働基準監督署長で第2階層、という対応です。「トップには勧告、実務担当者には増員・解任」と結びつけると、行政庁の取り違え問題に強くなります。
具体例
動画・テキスト・過去問・図解まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
山あいのトンネル工事で、元請と下請を合わせて常時35人が働いていれば統括安全衛生責任者が必要です。同じ35人でも、一般的な住宅の建築工事であれば50人に届かないので選任義務はありません。
試験のポイント
鉄骨造のマンション建設現場で常時25人が働いている場合、50人に届かないため統括安全衛生責任者は不要ですが、20人以上なので店社安全衛生管理者を選任することになります。
試験のポイント
現場の元方安全衛生管理者が明らかに手薄だと監督署が判断すれば、増員を命じることができます。一方、統括安全衛生責任者の仕事ぶりに問題があるときは、都道府県労働局長が事業者に勧告する、という役割分担です。

階層をそろえると、共通するルールが見えてくる
試験のポイント
プレミアムプラン
¥7,800/ 購入日から1年間有効(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。