概算保険料と確定保険料
概算保険料をめぐっては、3つの「後から動く」場面があります。役所が正しい額を決める認定決定、事業が大きくなったときの増加概算保険料、そして料率が上がったときの追加徴収です。
似た場面なのに、要件も書類も違います。特に「納付書か納入告知書か」は繰り返し問われるポイントです。
簡単にいうと
申告しない、あるいは間違えた場合に役所が決めます。書類名がカギです。
所轄都道府県労働局歳入徴収官は、次のいずれかに該当する事業主が申告・納付すべき正しい概算保険料の額を決定(認定決定)し、これを事業主に納付書によって通知します。
・事業主が所定の期限までに概算保険料申告書を提出しないとき
・事業主が提出した概算保険料申告書の記載に誤りがあると政府が認めるとき
通知を受けた事業主は、通知を受けた日の翌日から15日以内に、係る金額を納付書によって納付しなければなりません。
ここで押さえるべきは書類名です。概算保険料の認定決定の通知は「納付書」によって行われます。後で学ぶ確定保険料の認定決定は「納入告知書」です。
試験では『都道府県労働局歳入徴収官により認定決定された概算保険料の額及び確定保険料の額の通知は、納入告知書によって行われる』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。概算保険料の認定決定に係る通知は納付書によって行われます(則38条4項・5項)。
覚え方としては、概算は「これから払ってもらう」ものなので納付書、確定は「債権として確定した」ものなので納入告知書、と結びつけるとよいでしょう。
もう1つ重要な違いがあります。概算保険料について認定決定が行われた場合には、追徴金は徴収されません。確定保険料の認定決定では10%の追徴金が徴収されるのと対照的です。この点も後の章で扱います。
具体例
申告書を出し忘れていた会社に労働局から納付書が届いたら、受け取った日の翌日から15日以内に納めることになります。
試験のポイント
簡単にいうと
事業が大きくなったときの追加払いです。2つの要件を両方満たす必要があります。
事業主は、賃金総額等の見込額が増加した場合において、次のいずれにも該当するときは、増加概算保険料を申告・納付しなければなりません。
・増加後の賃金総額等の見込額が、増加前の賃金総額等の見込額の100分の200を超える場合
・増加後の賃金総額等の見込額に基づき算定した概算保険料の額と既に納付した概算保険料の額との差額が13万円以上である場合
2つの要件が「いずれにも」でつながっています。片方だけでは足りません。
・100分の200を超える … 2倍を超えて増えること
・13万円以上 … 差額の絶対額
2倍を超えるほど大きくなり、なおかつ差額が13万円以上ある場合にだけ、追加で納めるということです。少し増えたくらいでは手続きさせない、という割り切りです。
期限は、賃金総額等の増加が見込まれた日から30日以内(翌日起算)です。
「100分の200」という数字は、概算保険料の見込額の特例でも出てきました。あちらは「直前の年度の100分の50以上100分の200以下なら前年度の額を使える」という規定でした。裏返せば、200を超えたら前年度の額は使えず、見込みを立て直すことになります。同じ200という数字が、別の場面で対になっているわけです。
簡単にいうと
料率が上がったときの話です。増加概算保険料と違って、金額の下限がありません。
政府は、一般保険料率、第1種特別加入保険料率、第2種特別加入保険料率又は第3種特別加入保険料率の引上げを行ったときは、労働保険料を追加徴収するとされています。
この追加徴収による概算保険料は、増加概算保険料の場合とは異なり、額の多少を問わず徴収されます。13万円以上といった下限がありません。
試験では、政府が保険年度の中途に一般保険料率、第1種特別加入保険料率、第2種特別加入保険料率又は第3種特別加入保険料率の引上げを行ったときは、増加した保険料の額の多少にかかわらず法律上当該保険料の額について追加徴収が行われる、という記述が正しいものとして出題されています(法17条1項)。
手続についても定めがあります。所轄都道府県労働局歳入徴収官は、概算保険料を追加徴収しようとする場合には、通知を発する日から起算して30日を経過した日をその納期限と定め、事業主に納付書によって通知しなければなりません。
・納期限 … 通知を発する日から起算して30日を経過した日
・書類 … 納付書
そしてもう1つ重要な点があります。料率が引き下げられた場合、年度の途中で還付されることはありません。上がったときは追加で取るが、下がったときは返さないという非対称になっています。下がった分は年度末の確定精算で調整されます。
増加概算保険料と追加徴収を並べて整理しておきましょう。増加概算保険料は事業主側の事情(賃金総額の増加)、追加徴収は政府側の事情(料率の引上げ)がきっかけです。
簡単にいうと
似た名前の役職が2つ出てきます。申告する先と納める先が別です。
事業主は、概算保険料の申告・納付を行う場合、次のように処理します。
・申告 … 概算保険料申告書を所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出する
・納付 … 納付書によって所轄都道府県労働局収入官吏又は日本銀行に納付する
申告書を出す先が歳入徴収官、お金を納める先が収入官吏又は日本銀行です。名前が似ていますが役割が違います。
実務上は、日本銀行(日銀の代理店である金融機関を含みます)の窓口で申告書と現金を一緒に出すことが多いので、あまり意識されません。
もう1つ、経由の特例があります。保険関係成立届を労働基準監督署に提出した事業主は、概算保険料申告書の提出を労働基準監督署経由で行うことができます。
最初の届出を監督署に出したのだから、続く申告書も同じ窓口で受け付ける、という実務上の配慮です。
なお、確定保険料の申告・納付先も原則として概算保険料と同様です。ただし、納付すべき確定保険料がない場合における確定保険料申告書の提出については、日本銀行を経由して行うことができません。お金の動きがないのに日銀を通す意味がないからです。この違いは確定保険料の節で扱います。
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なお、継続事業の一括が行われたときは、指定事業の規模が拡大するため通常この増加概算保険料の手続が必要になります。
具体例
見込額1億円で概算保険料を納めた後、受注が増えて見込額が2億5千万円になり、差額が13万円以上あれば、30日以内に増加分を納めます。
試験のポイント
具体例
年度の途中で労災保険率が引き上げられた場合、差額がわずかでも追加徴収されます。逆に引き下げられても、その場では返ってきません。
試験のポイント
多くの会社は金融機関の窓口で申告書と保険料をまとめて処理します。保険関係成立届を監督署に出していれば、申告書も監督署経由で出せます。
試験のポイント
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