メリット制
労災保険率は事業の種類で決まります。ということは、同じ業種なら災害が多かろうと少なかろうと同じ率になってしまいます。
これでは安全対策に力を入れる意味がありません。そこで、災害の実績に応じて率を上下させるのがメリット制です。労災保険だけの制度です。
簡単にいうと
制度の趣旨から入ります。ここを押さえると要件が覚えやすくなります。
メリット制は労災保険のみの規定です。雇用保険にはありません。
労災保険率は「事業の種類」で決定されます。そのままだと、同じ業種の場合、業務災害が多かろうと少なかろうと労災保険率は不変なものとなってしまいます。
そこで、事業主の災害防止努力を促進し、事業者間の不公平感を是正するため、一定規模以上の事業にメリット制が導入されています。
・災害が少ない事業主 … 労災保険率が引き下げられる(努力が報われる)
・災害が多い事業主 … 労災保険率が引き上げられる(負担が増える)
「一定規模以上の事業に」という限定にも意味があります。労働者が少ない事業では、たまたま1件事故が起きただけで収支率が大きく振れてしまいます。統計的に意味のある規模がないと、努力の反映になりません。
継続事業のメリット制と有期事業のメリット制の2つがあり、この節では継続事業のほうを扱います。
なお、メリット制の対象になるのは労災保険率(又は確定保険料の額)であって、雇用保険率は動きません。一元適用事業では、一般保険料率のうち労災保険率の部分だけが変わることになります。
具体例
同じ建設業でも、10年間無災害の会社と毎年事故を起こす会社とでは、メリット制によって労災保険率に差がつきます。
試験のポイント
簡単にいうと
継続事業は3要件。有期事業は2要件です。この差が出発点になります。
継続事業のメリット制は、事業の規模・事業の継続性・収支率という3つの要件を満たした場合に適用されます。
1 事業の規模
連続する3保険年度中の各保険年度において、次のいずれかに該当する事業であることが必要です。
・100人以上の労働者を使用する事業
・20人以上100人未満の労働者を使用する事業であって、いわゆる災害度係数が0.4以上であるもの
・一括有期事業である建設の事業又は立木の伐採の事業については、当該保険年度の確定保険料の額が40万円以上であるもの
2 事業の継続性
連続する3保険年度中の最後の保険年度に属する3月31日(基準日といいます)において、労災保険に係る保険関係が成立した後3年以上経過している事業が対象です。
3 収支率
連続する3保険年度における収支率が100分の85を超え、又は100分の75以下であることが必要です。
簡単にいうと
計算式を見ると「政府から見た採算」だと分かります。
収支率とは、保険者である政府からみた「収入に占める支出」の割合です。
【計算式】収支率 = 政府の支出 ÷ 政府の収入 =(保険給付の額 + 特別支給金の額)÷(保険料の額 × 所定の率)
分子に保険給付だけでなく特別支給金も入る点に注意してください。特別支給金は保険給付ではありませんが、実際に支払われるお金なので支出として計上されます。
効果は次のとおりです。
・収支率が100分の85を超える場合 … 労災保険率が引き上げられる
・収支率が100分の75以下である場合 … 労災保険率が引き下げられる
85%から75%の間は、引上げも引下げもありません。中間の帯があるということです。
試験では『継続事業に対する労働保険徴収法第12条による労災保険率は、メリット制適用要件に該当する事業のいわゆるメリット収支率が100%を超え、又は75%以下である場合に、厚生労働大臣は一定の範囲内で、当該事業のメリット制適用年度における労災保険率を引き上げ又は引き下げることができる』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。100%ではなく85%です(法12条3項)。
85と75という数字は、有期事業のメリット制でも同じです。収支率の要件だけは継続事業と有期事業で共通しているので、まとめて覚えられます。
簡単にいうと
いつから変わるのかが問われます。翌年ではなく翌々年です。
要件を満たした場合、労災保険率は基準日の属する保険年度の次の次の保険年度から、収支率に応じて変更されます。
「次の次の」つまり翌々年度です。翌年度ではありません。集計と決定に時間がかかるためです。
変更の幅にも限度があります。事業主に与える影響を考慮して、原則として上限40%という範囲内で率が変更されます。
試験では『平成30年度から令和2年度までの連続する3保険年度の各保険年度における確定保険料の額が100万円以上であった有期事業の一括の適用を受けている建設の事業には、その3保険年度におけるメリット収支率により算出された労災保険率が令和3年度の保険料に適用される』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。
計算してみましょう。
・連続する3保険年度 … 平成30年度・令和元年度・令和2年度
・基準日 … 最後の保険年度(令和2年度)に属する3月31日
・基準日の属する保険年度 … 令和2年度
・その次の次の保険年度 … 令和4年度
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・100人以上/20人以上100人未満で災害度係数0.4以上/一括有期事業は確定保険料40万円以上
・基準日は連続する3保険年度中の最後の保険年度に属する3月31日
・保険関係成立後3年以上経過
・収支率85%超 又は 75%以下
「3保険年度」「3年以上」と3が並びます。労災保険率が過去3年間の災害率で決まるのと同じ数字です。
具体例
従業員150人の工場が3年連続でその規模を保ち、保険関係成立から3年以上経っていて、収支率が70%であれば、メリット制で労災保険率が下がります。
試験のポイント
具体例
3年間で保険料相当額の6割しか給付が出ていない会社は、収支率75%以下にあたるため労災保険率が引き下げられます。
試験のポイント
「3年分を集計 → 基準日 → 翌々年度から適用」という時間の流れを図で描けるようにしておくと、この手の問題で迷いません。
具体例
令和2年度を最後とする3年分の実績で判定された結果は、令和4年度の労災保険率に反映されます。令和3年度ではありません。
試験のポイント
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