メリット制
有期事業にもメリット制があります。ただし継続事業とは要件も効果も違います。
違いが生まれる理由ははっきりしていて、有期事業には年度更新という概念がないからです。翌々年度から率を変える、ということができません。そこで別の方法が採られています。
簡単にいうと
継続事業が3要件だったのに対し、有期事業は2要件です。
有期事業のメリット制は、事業の規模及び収支率という2つの要件を満たした場合に適用されます。
1 事業の規模
有期事業である建設の事業又は立木の伐採の事業が、次の(a)又は(b)のいずれかに該当することが必要です。
・(a) 確定保険料の額が40万円以上であること
・(b) 建設の事業にあっては請負金額が1億1,000万円以上、立木の伐採の事業にあっては素材の生産量が1,000立方メートル以上であること
2 収支率
所定の期間における収支率が100分の85を超え、又は100分の75以下であることが必要です。
継続事業と比べてみましょう。
・継続事業 … 事業の規模・事業の継続性・収支率の3要件
・有期事業 … 事業の規模・収支率の2要件
継続性の要件がありません。有期事業はもともと期間が限られており、「3年以上継続していること」を求めると対象がほとんどなくなってしまうからです。
収支率の要件(85%超又は75%以下)は継続事業と同じです。ここだけは共通しています。
規模の数字には注意が必要です。1億1,000万円という数字は、有期事業の一括の1億8千万円とも、下請負事業の分離の1億8,000万円とも違います。建設業に出てくる金額は3つあると覚えておきましょう。
・有期事業の一括 … 1億8千万円未満
・下請負事業の分離 … 1億8,000万円以上
・有期事業のメリット制 … 1億1,000万円以上
40万円という数字も、継続事業のメリット制(一括有期事業の場合)や延納の要件と同じ数字です。こちらは共通しています。
具体例
請負金額1億5千万円の工事は、1億1,000万円以上なのでメリット制の対象になり得ます。有期事業の一括のほうは1億8千万円未満なので、こちらの要件も満たします。
試験のポイント
簡単にいうと
ここが継続事業との決定的な違いです。動かすものが違います。
収支率に応じて、一定の範囲内で確定保険料の額が引き上げられ、又は引き下げられます。
引き上がった場合には差額が徴収されることになりますし、反対に引き下がった場合には差額が還付されるか、他に充当されることになります。
継続事業と並べてみましょう。
・継続事業のメリット制 … 翌々年度から「労災保険率」を上下動させる制度
・有期事業のメリット制 … 「確定保険料」の額を改定する制度
なぜこの違いが生まれるのでしょうか。有期事業には年度更新という概念がないからです。
継続事業なら「来年再来年の保険料率を変える」という形で調整できます。事業がずっと続いていくからです。ところが有期事業は工事が終われば保険関係も消滅します。来年の率を変えても、そもそも来年がありません。
そこで、すでに確定した保険料そのものを事後的に改定するという方法が採られています。実績が良ければ払いすぎた分が返り、悪ければ追加で徴収される、という直接的な調整です。
引き下げられた場合に差額の還付を受けるためには手続が必要です。引下げの通知を受けた日の翌日から起算して10日以内に、官署支出官又は所轄都道府県労働局資金前渡官吏に労働保険料還付請求書を提出する必要があります。
簡単にいうと
最後に対比でまとめます。理由から覚えれば丸暗記が要りません。
継続事業と有期事業のメリット制の違いは、突き詰めれば1点に集約されます。有期事業には年度更新という概念がないからこその違いだ、ということです。
この1点から次のことが導けます。
・動かすものが違う
継続事業は将来の労災保険率、有期事業はすでに確定した保険料の額。将来がある事業と、将来がない事業の差です。
・継続性の要件の有無
継続事業は3年以上経過していることが必要ですが、有期事業にはこの要件がありません。もともと期間が限られているためです。
・時期の指定の有無
継続事業には「次の次の保険年度から」という時期の指定がありますが、有期事業にはありません。事業の終了後に精算するだけだからです。
共通しているのは収支率の基準(85%超又は75%以下)と、収支率の計算式です。ここは覚え直す必要がありません。
試験対策としては、まず「メリット制は労災保険のみ」「継続は率、有期は額」の2点を押さえます。そのうえで数字(100人・0.4・40万円・1億1,000万円・1,000立方メートル・3年・85%・75%・40%)を埋めていくのが効率的です。
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この「翌日から起算して10日以内」「官署支出官又は所轄都道府県労働局資金前渡官吏」という組み合わせは、確定保険料の還付とまったく同じです。あちらを覚えていれば、こちらは追加で覚えることがありません。
具体例
無事故で終わった大型工事では、確定保険料が引き下げられ、払いすぎていた分が戻ってきます。ただし通知から10日以内に請求書を出す必要があります。
試験のポイント
なお、一括有期事業は保険料の手続では継続事業と同じ扱いでしたが、メリット制でも継続事業のメリット制の対象になります。規模の要件に「一括有期事業である建設の事業又は立木の伐採の事業については、当該保険年度の確定保険料の額が40万円以上であるもの」という枠が用意されているのはこのためです。
具体例
同じ建設会社でも、小規模工事をまとめた一括有期事業なら継続事業のメリット制、単独の大型工事なら有期事業のメリット制が適用されます。

メリット制 ― 継続事業と有期事業の違い
試験のポイント
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