印紙保険料と特例納付保険料
保険料を徴収する権利は2年で時効消滅します。ところが、その2年を超えて納めさせることを可能にする制度があります。それが特例納付保険料です。
重要度はそれほど高くないので、大枠だけイメージできれば十分です。「誰のための制度か」を押さえるのが近道になります。
簡単にいうと
時効の壁を越えるための例外規定です。まず誰が対象かを押さえます。
この制度は、保険料徴収に関する消滅時効である2年を超えて労働保険料を事業者に納付させることを可能とする制度です。
特例納付保険料の対象となる事業主は、特例対象者を雇用していた事業主であって、雇用保険に係る保険関係が成立していたにもかかわらず、保険関係成立届を提出していなかった事業主です。
なぜ保険関係成立届が出ていないことが要件になるのでしょうか。届が出ていなければ、政府の側から保険料の納付を勧奨しようがないからです。役所が存在を把握していない事業所には請求のしようがありません。
そのまま2年が経てば時効で徴収できなくなってしまいます。しかしその間、労働者からは雇用保険料相当額が賃金から控除されていた。これでは労働者が救われません。
そこで、簡単にいえば「2年を超えて労働保険料を納めていない事業主」から、例外的に保険料を徴収できるようにしたのがこの制度です。
押さえるべき2つの要件を整理します。
・特例対象者を雇用していたこと
・雇用保険に係る保険関係が成立していたにもかかわらず保険関係成立届を提出していなかったこと
この制度は雇用保険のみの制度です。労災保険には特例納付保険料がありません。労働保険料の6種類のうち、印紙保険料と特例納付保険料が雇用保険のみであることを思い出してください。
具体例
10年前から従業員を雇っていたのに保険関係成立届を出していなかった会社は、その従業員が被保険者だったことを確認された時点で、特例納付保険料の対象になり得ます。
試験のポイント
簡単にいうと
この制度で救われる人の定義です。長い条文ですが構造は単純です。
特例対象者とは、雇用保険法の規定による「被保険者となったことの確認」があった日の2年前の日より前に、被保険者の負担すべき雇用保険料相当額が当該被保険者に支払われた賃金から控除されていたにもかかわらず、事業主が雇用保険法の被保険者資格取得届を行わなかったことにより雇用保険の被保険者とされていなかった者(当該事実を知っていた者を除く)をいいます。
長い定義ですが、要素に分けると次のようになります。
・被保険者となったことの確認があった日の2年前の日より前の期間について
・賃金から雇用保険料相当額が控除されていた
・にもかかわらず、事業主が資格取得届を行わなかったために被保険者とされていなかった
・その事実を知っていた者は除かれる
つまり、給与から雇用保険料を天引きされていたのに、会社が手続をしていなかったために被保険者になっていなかった人です。
雇用保険法で学んだ「確認」の制度を思い出してください。被保険者又は被保険者であった者は、自ら確認の請求をすることができました。この請求によって、さかのぼって被保険者であったことが確認されます。
ただし、確認によって被保険者期間が復活しても、2年より前の分については事業主から保険料を取れません。時効にかかっているからです。保険料を取れないのに給付だけ出すのはおかしい、ということで特例納付保険料が用意されているわけです。
簡単にいうと
計算はシンプルです。加算額の率だけ覚えれば足ります。
特例納付保険料の額は、基本額に加算額を加算した額です。そして加算額とは、基本額の10%です。
【計算式】特例納付保険料の額 = 基本額 + 加算額(基本額の10%)
つまり、本来納めるべきだった額の1.1倍を納めることになります。
試験では、特例納付保険料はその基本額のほか、その額に100分の10を乗じて得た額を加算したものとされている、という記述が正しいものとして出題されています(法26条1項ほか)。
10%という数字は、この科目の他の場面でも出てきます。
・確定保険料の認定決定に係る追徴金 … 納付すべき額の100分の10
・特例納付保険料の加算額 … 基本額の100分の10
どちらも10%です。一方、印紙保険料の認定決定に係る追徴金は100分の25で、こちらだけ率が高くなっています。
なお、特例納付保険料は概算・確定の仕組みから外れています。条文で「労働保険料(印紙保険料及び特例納付保険料を除く)」と除外されているとおりです。過去の分を後から納めるものなので、先に概算で払うという発想が当てはまりません。
動画・テキスト・過去問・図解まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
「当該事実を知っていた者を除く」という限定にも意味があります。会社が手続をしていないことを知りながら黙っていた人まで保護する必要はない、という趣旨です。
具体例
給与明細に雇用保険料の控除があったのに、退職して初めて被保険者になっていなかったと分かった人が、確認の請求をして救済されるケースです。
試験のポイント
この制度は重要度がそれほど高くないので、次の3点だけ押さえておけば十分です。
・2年を超えて納めていない事業主が対象
・きっかけは保険関係成立届の不提出
・額は基本額+10%
具体例
本来納めるべきだった保険料が100万円なら、10万円を加算した110万円が特例納付保険料になります。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥7,800/ 購入日から1年間有効(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。