3つの一括
建設現場には元請の下に一次下請、二次下請と何層もの会社が入ります。それぞれが保険関係を持っていたら、現場で事故が起きたときに誰が責任を負うのか分からなくなります。
そこで元請負人にまとめてしまうのが請負事業の一括です。そして、大きな下請けだけは元請から切り離すこともできます。この2つをセットで押さえます。
簡単にいうと
規模は問われません。建設の事業で下請けが入っていれば、それだけで一括です。
請負事業の保険関係の一括は、労災保険に係る保険関係が成立している建設の事業が、数次の請負(つまり元請けと下請けの構造)によって行われていることにより、法律上当然に行われます。
有期事業の一括のような規模の要件は問われません。ここが大きな違いです。
要件を整理しましょう。
・労災保険に係る保険関係が成立していること
・建設の事業であること
・数次の請負によって行われていること
この3つだけです。金額も人数も関係ありません。
業種にも注目してください。有期事業の一括は建設の事業と立木の伐採の事業の両方が対象でしたが、請負事業の一括は建設の事業のみです。立木の伐採の事業は含まれません。
そして一括されるのは労災保険のみです。有期事業の一括と同じで、雇用保険は対象外です。
厚生労働大臣の認可も不要で、要件を満たせば自動的に一括されます。この点も有期事業の一括と共通しています。
具体例
ビル建設で元請の下に電気工事・内装工事などの下請けが入っている場合、その現場の労災保険関係は自動的に1つにまとめられます。
試験のポイント
簡単にいうと
一括の効果です。下請けの分もすべて元請けが背負います。
請負事業の一括が行われると、元請負人の事業と下請負人の事業が合わせて1つの事業として取り扱われ、元請負人のみが徴収法上の事業主となります。
すなわち、元請負人はその請負に係る事業について、下請負をさせた部分を含め、そのすべてについて事業主として保険料の納付等の義務を負うこととなります。
下請負人は徴収法上の事業主ではなくなるので、その工事について保険料を納める必要がありません。そのぶん、元請負人が全部まとめて納めます。実務では、元請けが下請けに支払う請負代金の中に保険料相当分が織り込まれる形になります。
この仕組みの利点は、現場で働く労働者から見て「誰の労災保険を使うのか」が明確になることです。何次の下請けの労働者であっても、元請けの労災保険から給付を受けられます。
ただし、一括されない事務があります。有期事業の一括の場合と同様に、次の事務はそれぞれの事業ごと(元請負人、下請負人の事業ごと)に行わなければなりません。
・雇用保険の被保険者に関する事務
・労災保険及び雇用保険の給付に関する事務
・印紙保険料の納付に関する事務
下請けの会社も、自社の従業員の雇用保険については自分で手続をするということです。
簡単にいうと
大きな下請けは切り離せます。数字の向きと接続詞に注意してください。
下請負人の請負に係る事業が大きい場合には、一括された事業を分離させることができます。
分離の要件は次のとおりです。
・下請負人の請負に係る事業の概算保険料の額が160万円以上であること、又は
・下請負人の請負に係る事業の請負金額が1億8,000万円以上であること
この2つのどちらかを満たせば分離できます。「以上」であること、そして「又は」でつながっていることが重要です。
有期事業の一括の規模要件と比べてみましょう。
・有期事業の一括 … 160万円未満 かつ 1億8千万円未満
・下請負事業の分離 … 160万円以上 又は 1億8,000万円以上
数字は同じですが、方向(未満と以上)も接続詞(かつと又は)も逆になっています。ちょうど裏返しの関係です。
試験では『厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって行われる場合の元請負人及び下請負人が、下請負事業の分離の認可を受けるためには、当該下請負人の請負に係る事業が建設の事業である場合は、その事業の規模が、概算保険料を算定することとした場合における概算保険料の額に相当する額が160万円未満、かつ、請負金額が1億8,000万円未満でなければならない』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。正しくは160万円「以上」、「又は」1億8,000万円「以上」です(則9条)。
簡単にいうと
一括は自動でも、分離には手続が要ります。3つのポイントを押さえます。
下請負事業を元請負事業から分離するためには、規模の要件を満たしたうえで手続が必要です。
・誰が … 元請負人及び下請負人が共同で
・いつまでに … 原則として、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内
・どこへ … 下請負人を事業主とする認可申請書を、所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局長に提出
・何を得る … 厚生労働大臣の認可(都道府県労働局長に権限委任)
押さえるべきポイントは3つです。
1つ目は「共同で」という点です。元請負人だけ、あるいは下請負人だけでは申請できません。分離すれば元請けは責任を免れ、下請けは責任を負うことになるため、双方の合意が必要だという趣旨です。
2つ目は「翌日から起算して10日以内」という期限です。保険関係成立届の期限と同じ数え方で、同じ日数です。
3つ目は経路です。所轄労働基準監督署長を「経由して」所轄都道府県労働局長に提出します。最終的な提出先は都道府県労働局長で、監督署は通り道です。この構造は暫定任意適用事業の任意加入申請と同じです。
動画・テキスト・過去問・図解まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
具体例
三次下請けの作業員が現場でけがをしても、元請けの労災保険から療養補償給付を受けられます。ただしその作業員の雇用保険の資格取得届は、三次下請けの会社が出します。
試験のポイント
この選択肢は、有期事業の一括の要件をそのまま持ってきたひっかけです。両方を並べて覚えておけば見破れます。
具体例
請負金額2億円の下請工事は、1億8,000万円以上にあたるため分離できます。概算保険料が160万円に届いていなくても、どちらか一方を満たせば足ります。
試験のポイント
具体例
大型の下請工事を分離したい場合、元請けと下請けが連名で申請書を作り、保険関係成立の翌日から10日以内に労働基準監督署を経由して労働局へ提出します。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥7,800/ 購入日から1年間有効(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。