3つの一括
小さな工事のたびに保険関係を作って、そのつど申告して精算する。これでは事業主も役所も持ちません。そこで一定の条件を満たす小規模な有期事業をまとめて処理するのが有期事業の一括です。
3つある一括のうち、要件がいちばん細かいのがこれです。5つの要件と3つの数字を確実に押さえましょう。
簡単にいうと
「いずれも」満たすことが必要です。1つでも欠ければ一括されません。
2以上の有期事業の一括が行われるためには、次の要件のいずれも満たしていなければなりません。
・事業主が同一人であること
・それぞれの事業が有期事業であること
・それぞれの事業の規模が一定以下であること(次のテーマで詳述)
・それぞれの事業が、他のいずれかの事業の全部又は一部と同時に行われること
・それぞれの事業が、労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち建設の事業であり、又は立木の伐採の事業であること、事業の種類を同じくすること、それぞれの事業に係る労働保険料の納付の事務が一括事務所で取り扱われること
最後の要件はさらに3つに分かれていますが、まとめて「業種と事務処理の場所がそろっていること」と理解しておけば足ります。
注目したいのは「一括される保険関係は労災保険のみ」という点です。要件に「労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち」とあるとおり、雇用保険は対象外です。建設の事業は二元適用事業ですから、雇用保険のほうは本社などで別に成立し続けます。
もう1つ、「同時に行われること」という要件があります。順番に1つずつ工事をしているだけでは一括されません。期間が重なっていることが必要です。
そして重要な留意点があります。当初、独立の有期事業として保険関係が成立した事業は、その後に事業規模の縮小等による変更があったとしても、有期事業の一括の対象とはされません。最初の時点で判定され、後から入り直すことはできないということです。
具体例
同じ建設会社が同時期に進めている複数の小規模な内装工事は、要件を満たせばまとめて1つの保険関係として扱われます。

3つの一括の比較 ― 認可の要否から見分ける
試験のポイント
簡単にいうと
3つの数字が出てきます。「かつ」でつながっている点に注意です。
それぞれの事業の規模が、次のいずれにも該当していることが必要です。
・概算保険料の額が160万円未満であること
・立木の伐採の事業にあっては素材の見込生産量が1,000立方メートル未満であり、建設の事業にあっては請負金額が1億8千万円未満であること
2つの条件が「いずれにも」でつながっています。片方だけ満たしても足りません。
数字を整理しましょう。
・概算保険料 … 160万円未満
・建設の事業の請負金額 … 1億8千万円未満
・立木の伐採の事業の素材の見込生産量 … 1,000立方メートル未満
いずれも「未満」です。小規模なものだけを一括の対象にするという趣旨ですから、上限を下回っている必要があります。
ここで注意したいのは、人数の要件がないという点です。試験では『有期事業の一括の対象となる事業に共通する要件として、それぞれの事業の規模が、労働保険徴収法による概算保険料を算定することとした場合における当該保険料の額が160万円未満であり、かつ期間中に使用する労働者数が常態として30人未満であることとされている』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。規模要件に人数要件は規定されていません(法7条、則6条)。
簡単にいうと
まとめる最大のメリットです。有期事業なのに継続事業のように扱えます。
2以上の有期事業の一括が行われると、労働保険料の納付の事務が一括して行われるのはもちろんのこと、労働保険料の申告・納付について継続事業と同様に労働保険料の年度更新の手続をとることが可能となります。
これが一括の最大の効果です。本来なら工事ごとに概算を納めて完成のたびに精算しなければならないところ、年に一度の年度更新でまとめて処理できるようになります。
このため、一括有期事業は保険料の申告・納付の場面では継続事業と同じ扱いになります。条文や問題文で「継続事業(一括有期事業を含む)」と書かれるのはこのためです。
重要な手続が1つあります。一括有期事業報告書の提出です。
・提出期限 … 次の保険年度の6月1日から起算して40日以内、又は保険関係が消滅した日から起算して50日以内
・提出先 … 所轄都道府県労働局歳入徴収官
一括されているとはいえ、どの工事をいくらで行ったかは報告する必要があります。この報告書をもとに確定保険料が計算されます。
もう1つ、一括されない事務があります。有期事業の一括が行われた場合であっても、次の事務はそれぞれの事業ごとに行わなければなりません。
・雇用保険の被保険者に関する事務
簡単にいうと
3つの一括のうち、申請が要るのは継続事業の一括だけです。
有期事業の一括は、要件を満たせば法律上当然に行われます。厚生労働大臣の認可は不要です。
3つの一括を認可の要否で並べてみましょう。
・有期事業の一括 … 認可不要(法律上当然に一括)
・請負事業の一括 … 認可不要(法律上当然に一括)
・継続事業の一括 … 認可が必要(申請して厚生労働大臣の認可を受ける)
認可が必要なのは継続事業の一括だけです。ここが3つを区別する最初の手がかりになります。
なぜ継続事業だけ認可が要るのでしょうか。有期事業の一括と請負事業の一括は、要件が客観的に定まっていて判定が容易です。これに対して継続事業の一括は、どの事業をどの指定事業にまとめるかを行政が指定する必要があるため、申請と認可という手続を経ることになります。
なお、有期事業の一括には認可申請の手続がない代わりに、下請負事業の分離のような「一括を外す」手続もありません。要件を満たせば一括され、満たさなければ一括されない。それだけです。
分離の手続があるのは請負事業の一括のほうです。この違いも押さえておきましょう。
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後で学ぶ下請負事業の分離では、同じ160万円と1億8,000万円という数字が「以上」「又は」という形で出てきます。方向と接続詞が逆になるので、混同しないよう注意してください。
具体例
請負金額1億5千万円で概算保険料が150万円の工事は、両方とも基準を下回るため一括の対象になります。どちらか一方でも超えれば対象外です。
試験のポイント
・労災保険及び雇用保険の給付に関する事務
・印紙保険料の納付に関する事務
一括されるのはあくまで保険料の納付の事務であって、給付や被保険者の管理は別だということです。この「一括されない3つ」は、次に学ぶ請負事業の一括でも同じです。
具体例
年間に何十件も小規模工事を請け負う建設会社は、工事ごとではなく年1回の年度更新でまとめて保険料を精算できます。
試験のポイント
具体例
要件を満たす小規模工事は、事業主が何も申請しなくても自動的に一括されます。逆に、一括を望まないという選択もできません。
試験のポイント
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