健康保険のしくみと2つの保険者
全国健康保険協会、いわゆる協会けんぽは、中小企業で働く人の多くが加入している保険者です。もとは政府が運営していた政府管掌健康保険を引き継いだ組織で、いまは非公務員型の公法人という独立した形になっています。
この節では、協会の役員構成、意見を反映させるための会議体、厚生労働大臣による監督、そして積み立てなければならない準備金までを順に見ていきます。数字と「誰が任命するか」がそのまま出題される分野なので、人と権限をセットで押さえてください。
簡単にいうと
保険者は協会なのに、実は大臣がやっている仕事があります。ここが最初の関門です。
協会が運営する健康保険であっても、その事業に関する業務のうち次の4つは厚生労働大臣が行います。協会が全部を仕切っているわけではない、という点が重要です。
・被保険者の資格の取得及び喪失の確認
・標準報酬月額及び標準賞与額の決定
・保険料の徴収(任意継続被保険者を除く)
・上記に附帯する業務
これらの権限は、実務上さらに日本年金機構に委任されています。会社が資格取得届や算定基礎届を年金事務所に出しているのは、この流れがあるからです。
なお、保険者が健康保険組合である場合、保険料の徴収業務は健康保険組合が行います。ここは協会と組合で担当者が入れ替わるので、混同しないよう注意が必要です。
具体例
従業員25人の食品卸会社が新入社員の資格取得届を提出する先は、協会ではなく日本年金機構(年金事務所)です。一方、健康保険組合に加入している会社であれば、保険料は組合が直接徴収します。

協会けんぽと健康保険組合の違いを9つの論点で並べた比較表。数字の入れ替えで出題されるところをまとめています
試験のポイント
簡単にいうと
理事長と監事は大臣、理事は理事長。任命者が入れ替わるところが出題ポイントです。
協会には、役員として理事長1人、理事6人以内及び監事2人が置かれます。役員の任期はいずれも3年です。
任命する人は次のように分かれています。
・理事長及び監事 … 厚生労働大臣が任命する
・理事 … 理事長が任命する(任命したときは厚生労働大臣に届け出るとともに公表する)
それぞれの役割も条文どおり押さえます。
・理事長 … 協会を代表し、その業務を執行する
・監事 … 協会の業務の執行及び財務の状況を監査する
・理事 … 理事長の定めるところにより、理事長を補佐して協会の業務を執行することができる
なお、厚生労働大臣が理事長を任命するときは、あらかじめ運営委員会の意見を聴くこととされています。
具体例
簡単にいうと
事業主と加入者の声を運営に届けるための会議体が、本部と支部にそれぞれあります。
協会には、事業主及び被保険者の意見を反映させ、業務の適正な運営を図るため、運営委員会が置かれます。
運営委員会の委員は9人以内とされ、事業主、被保険者、協会の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、厚生労働大臣が各同数を任命します。つまり3者が3人ずつという形になります。委員の任期は2年です。
議事を開くための定足数にも決まりがあります。運営委員会は、委員の総数の3分の2以上、又は事業主・被保険者・学識経験者である委員の各3分の1以上が出席しなければ、議事を開くことができません。
これとは別に、都道府県ごとの実情を反映させるため、支部ごとに評議会が設けられます。協会は、当該支部における業務の実施について評議会の意見を聴くものとされています。
具体例
ある県の支部で保険料率の見直しが議題になった場合、地域の事業主や加入者の実情は支部の評議会を通じて吸い上げられ、本部の運営委員会での議論につながっていきます。
試験のポイント
簡単にいうと
予算は事前に「認可」、決算は事後に「承認」。動詞の違いが答えを分けます。
協会は独立した法人ですが、公的な医療保険を運営する以上、厚生労働大臣の監督を受けます。手続ごとに動詞と期限が異なるので、セットで覚えます。
・予算等 … 毎事業年度、事業計画及び予算を作成し、その年度の開始前に厚生労働大臣の認可を受けなければならない
・決算 … 毎事業年度の決算を翌事業年度の5月31日までに完結しなければならない
・財務諸表 … 事業報告書及び決算報告書を添え、監事及び会計監査人の意見を付けて、決算完結後2か月以内に厚生労働大臣に提出し、承認を受けなければならない
・業績評価 … 厚生労働大臣は協会の事業年度ごとの業績について評価を行い、評価したときは遅滞なく協会に通知するとともに公表しなければならない
・事業状況の報告 … 毎月の事業状況を翌月末日までに厚生労働大臣に報告しなければならない
毎月の事業状況の報告期限は、健康保険組合が翌月20日までであるのに対し、協会は翌月末日までです。数字が違うので、必ず並べて確認してください。
具体例
簡単にいうと
急な支出に備えて、剰余金を貯めておきなさいというルールです。
協会は、健康保険事業に要する費用の支出に備えるため、毎事業年度末において準備金を積み立てなければなりません。
積立額の基準は次のとおりです。その事業年度及びその直前の2事業年度内において行った保険給付等に要した費用の額の、一事業年度当たりの平均額の12分の1に相当する額に達するまで、当該事業年度の剰余金の額を準備金として積み立てます。
直近3年分の給付費の平均をとり、その12分の1、つまり約1か月分に相当する額が目標水準ということです。
健康保険組合の準備金は計算式がより細かく、給付費部分の12分の3(当分の間は12分の2)と、納付金等部分の12分の1を合算した額まで積み立てることとされています。協会と組合で分数が異なる点が比較の的になります。
具体例
直近3年間の保険給付等の費用が1年あたり平均12兆円だったとすると、その12分の1、すなわち1兆円に達するまで剰余金を準備金として積み立てる、という関係になります。
試験のポイント
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理事長のポストが空いたとき、厚生労働大臣がいきなり指名するのではなく、まず運営委員会の意見を聴いたうえで任命します。理事の補充であれば、理事長が任命し、大臣には届け出るという流れになります。
試験のポイント
試験のポイント
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