傷病に関する現物給付
健康保険のいちばん中心にある給付が療養の給付です。保険証(いまは資格確認書やマイナ保険証)を出して病院にかかると、窓口では3割だけ払えば済む。あの仕組みがこれにあたります。
この節では、療養の給付として受けられる5つの範囲、年齢と所得で変わる一部負担金の割合、そして通達で示されている細かい取扱いを押さえます。健康保険の全給付の中で最も出題される分野です。
簡単にいうと
お金が振り込まれるのではなく、医療そのものが給付される。ここが出発点です。
健康保険の給付は、大きく現物給付と現金給付に分かれます。
現物給付とは、被保険者側が一定の額(割合)まで負担し、残りは負担しなくてよいというものです。負担しなかった部分は保険者が代わりに医療機関へ支払います。療養の給付はこの典型です。
現金給付とは、文字どおりお金で支給されるタイプの給付です。傷病手当金や出産手当金、療養費などがこれにあたります。
療養の給付は、被保険者の業務災害以外の事由による疾病又は負傷に関し、保険医療機関等から被保険者に直接の療養を行う現物給付です。
この区別は、あとで出てくる療養費との対比で効いてきます。療養の給付を受けることが困難な場合に、例外的に現金でまかなうのが療養費だからです。
具体例
病院で1万円分の診療を受けた場合、療養の給付では窓口で3,000円を払うだけで治療という現物を受け取ります。もし現金給付であれば、いったん1万円を全額払い、あとから7,000円が振り込まれる形になります。

健康保険の保険給付マップ。被扶養者側は「家族〇〇」に名前が変わり、傷病手当金と出産手当金だけが空欄になります
試験のポイント
簡単にいうと
診察から入院看護まで。条文の5項目をそのまま押さえます。
療養の給付の範囲は、健康保険法63条1項に列挙されています。
・診察
・薬剤又は治療材料の支給
・処置、手術その他の治療
・居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
・病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
条文どおりの並びで問われることがあるので、順序ごと覚えておくと安全です。
注意したいのは、この5つに入らないものです。健康診断は疾病の治療ではないため、療養の給付の対象になりません。また、単に経済的理由により医師の人工妊娠中絶手術を受けた場合も、療養の給付の対象とならないとされています。
逆に、身体に違和感があるとして診察を受けたが結果的に何ら疾病と認めるべき兆候がない場合でも、その診察は療養の給付と認められます。結果が空振りだったからといって給付を受けられないわけではありません。
具体例
簡単にいうと
70歳が最初の境目、その先は所得でもう一度分かれます。
保険医療機関又は保険薬局から療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際に一部負担金を支払います。割合は年齢と所得で決まります。
・70歳未満 … 100分の30
・70歳以上で所得が一定未満の者 … 100分の20
・70歳以上で所得が一定以上の者(標準報酬月額28万円以上) … 100分の30
70歳になれば必ず2割になるわけではなく、現役並みの所得がある人は3割のままだという点が重要です。
ただし例外もあります。70歳以上で標準報酬月額が28万円以上であっても、当該被保険者及びその70歳以上の被扶養者の世帯トータル年収が520万円未満のときなどは、一部負担金の割合は100分の20とされます。
被保険者が支払わなかった残りの部分は、保険者が保険医療機関等に対して支払います。これが診療報酬です。
具体例
簡単にいうと
病院は誰に請求し、誰からお金を受け取るのか。ここも図で覚えます。
療養の給付にかかった費用のうち、患者が払わなかった部分は次の経路で病院に届きます。診療報酬の審査・支払を社会保険診療報酬支払基金等に委託した場合の流れです。
・被保険者が保険料を保険者に納める(実際は事業主が納付する)
・保険医療機関等が被保険者に療養の給付を行う
・被保険者が保険医療機関等に一部負担金を支払う
・保険医療機関等が社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に診療報酬を請求する
・審査支払機関が審査したうえで保険者に請求する
・保険者が審査支払機関に支払う
・審査支払機関が保険医療機関等に支払う
審査支払機関が間に入ることで、請求内容が適正かどうかのチェックが働きます。保険者が個別に病院と直接やりとりするのではない点が特徴です。
具体例
簡単にいうと
細かいところですが、そのまま択一で出ます。
療養の給付については、次のような通達上の取扱いが繰り返し問われています。
・被保険者の資格取得が適正である限り、その資格取得前の疾病又は負傷に対しても保険給付を行う
・定期健康診断時の検査費用は保険給付の対象とならない
・単に経済的理由により医師の人工妊娠中絶手術を受けた場合は、療養の給付の対象とならない
・身体に違和感があるとして診察を受けたが、結果的に何ら疾病と認めるべき兆候がない場合にも、その診察は療養の給付と認められる
第一の取扱いは重要です。入社前からある持病であっても、資格を正しく取得している以上、健康保険で治療を受けられます。民間の医療保険のように既往症を理由に給付を断られることはありません。
また、定期健康診断の結果、疾病の疑いがあると診断された被保険者が精密検査を受けた場合、その精密検査が定期的健康診査の一環としてあらかじめ予定されたものでなければ、当該精密検査は療養の給付の対象となります。
具体例
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腹痛で受診して検査した結果、異常なしと診断された場合でも、その診察は療養の給付として扱われます。一方、会社の定期健康診断の費用は、そもそも治療ではないので健康保険から出ません。
試験のポイント
試験のポイント
医療費が3万円かかった場合、患者が窓口で9,000円を払い、残る21,000円は病院から支払基金へ請求され、審査を経て保険者から支払われて病院に届きます。
試験のポイント
試験のポイント
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