傷病に関する現物給付
保険証を出して3割払えばよい、という当たり前が使えない場面があります。資格取得届が出ていなくて被保険者だと証明できないとき、海外で治療を受けたとき、そもそも通院すること自体が難しいとき。そうした場面を埋めるのが、この節で扱う3つの給付です。
療養費・訪問看護療養費・移送費は、それぞれ現金給付・現物給付・現金給付と性質が分かれます。どれがどちらかを意識しながら読んでください。
簡単にいうと
現物給付が使えないときの受け皿。いったん全額払って、あとから請求します。
療養費は、次のいずれかに該当する場合に支給される現金給付です。
・療養の給付等を行うことが困難であると保険者が認めるとき
・被保険者が保険医療機関等以外の病院等から診療等を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるとき
いずれも「保険者が認める」という判断が挟まる点が共通しています。被保険者が勝手に選んで療養費にできるわけではありません。
仕組みとしては、医療機関でいったん医療費の全額を支払い、その後に申請することで現金による給付を受けます。窓口で3割だけ払う療養の給付とは、お金の動き方が逆になります。
第一の場面の典型が、事業主の被保険者資格取得届の提出の怠りにより、被保険者たる身分を証明することができない状態にあったため療養の給付等が受けられなかったときです。資格取得届が出ていなければ資格を証明する手段がないので、いったん全額払ったうえで療養費を請求することになります。
具体例
入社した月に会社が資格取得届を出し忘れ、社員が病院で全額を支払ったとします。この社員は、あとから療養費を申請することで、本来保険でまかなわれるはずだった部分を受け取れます。
試験のポイント
簡単にいうと
海外に日本の保険医療機関はありません。だから療養費になります。
海外において被保険者が疾病にかかり又は負傷した場合、当該被保険者に対し保険医療機関等を通じて保険給付を行うことは実質的に困難です。そのため、海外で保険給付の対象となる療養を受けた場合には、療養の給付等に代えて療養費が支給されます。
現地では医療費を全額支払うほかありませんが、帰国後に申請すれば療養費を受け取れます。
支払われる通貨は現地通貨ではなく日本円です。この場合、保険者が療養費の支給を決定した日のレート(外国為替換算率)を用いて換算します。「支払った日のレート」ではない点が出題ポイントです。
なお、海外療養費として支給される額は、日本国内で同じ治療を受けた場合の基準で計算されます。現地でかかった費用が日本の水準を大きく上回っていても、その全額が戻るわけではありません。
具体例
出張先で入院して現地で60万円相当を支払った被保険者が帰国後に申請すると、日本の基準で計算した額が、支給決定日のレートで円換算されて支払われます。
試験のポイント
簡単にいうと
自宅で看護を受けるための給付。医師と歯科医師は含まれません。
訪問看護療養費は、被保険者が指定訪問看護事業者から指定訪問看護を受けた場合であって、保険者が必要と認める場合に支給される現物給付です。
訪問看護とは、疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者が行う療養上の世話又は必要な診療の補助をいいます。
「看護師その他厚生労働省令で定める者」は次の7つです。
・看護師
・保健師
・助産師
・准看護師
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
注意すべきは、医師や歯科医師が含まれていないことです。試験では「訪問看護は、医師、歯科医師又は看護師のほか、保健師、助産師…が行う」という誤りの選択肢が出題されたことがあります。医師が居宅を訪ねて診察するのは訪問診療であり、訪問看護とは別のものです。
簡単にいうと
3つの要件を「いずれにも」満たすこと。1つ欠けたら出ません。
移送費は、被保険者が療養の給付等を受けるため、病院又は診療所に移送された場合において、次の3つのいずれにも該当すると保険者が認めるときに支給される現金給付です。
・移送により、健康保険法に基づく適切な療養を受けたこと
・移送の原因である疾病又は負傷により移動することが著しく困難であったこと
・緊急その他やむを得なかったこと
「いずれか」ではなく「いずれにも」である点が重要です。3つのうち1つでも欠ければ支給されません。
移送費の額は、最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の費用により算定した金額とされます。ただし、現に移送に要した費用の金額を超えることはできません。
つまり、実際に高額な手段を使っても経済的な経路の額しか出ず、逆に安く済んだのであればその実費が上限になる、という二重の枠がかかっています。
具体例
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被保険者側の負担割合は、療養の給付の一部負担金と同じ割合、すなわち原則3割です。
具体例
退院後も自宅で点滴の管理が必要な患者のもとに、訪問看護ステーションの看護師が週3回訪問するケースが典型です。この費用は訪問看護療養費として現物給付され、患者は3割相当を負担します。
試験のポイント
試験のポイント
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