遺族厚生年金
遺族厚生年金には短期要件と長期要件という2つの入口があります。どちらに当たるかで、保険料納付要件が必要かどうかと、額の計算方法が変わります。
短期要件は現役世代が亡くなった場面、長期要件は長く保険料を納めてきた人が亡くなった場面です。この違いが「300月みなしが使えるかどうか」という額の計算に直結します。
簡単にいうと
被保険者の死亡、資格喪失後5年以内の死亡、1級2級の障害厚生年金受給権者の死亡。
遺族厚生年金の支給を受けるためには、被保険者又は被保険者であった者が次のいずれかに該当することが必要です。このうち次の3つが短期要件になります。
・被保険者が死亡したとき(保険料納付要件が必要)
・被保険者であった者が、資格喪失後、被保険者期間中に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき(保険料納付要件が必要)
・障害等級1級又は2級に該当する障害厚生年金の受給権者が死亡したとき(保険料納付要件は不要)
2つ目は少し複雑です。在職中に初診を受けた傷病が原因で、退職後5年以内に亡くなった場合を拾う規定になります。在職中の傷病が死因なのだから、退職していても現役世代の死亡として扱おうという趣旨です。
3つ目には保険料納付要件がかかりません。すでに1級又は2級の障害厚生年金を受けている人なので、その受給権を取得した時点で納付要件は確認済みだからです。
試験では、障害等級1級又は2級に該当する障害厚生年金の受給権者が死亡したときは死亡した受給権者の保険料納付要件が問われることはない、という記述が正しいものとして出題されています。
具体例
在職中にがんと診断されて退職し、3年後に亡くなった人の遺族には、短期要件による遺族厚生年金が支給されます。初診日から5年を経過する前だからです。
試験のポイント
簡単にいうと
老齢基礎年金の10年とは別に、25年という数字が必要です。
長期要件は次の1つです。
・老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上である者に限る)又は保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上である者が死亡したとき
保険料納付要件はかかりません。すでに25年以上の期間を有している人なので、改めて滞納の有無を問う必要がないからです。
25年という数字に注意してください。老齢基礎年金の受給資格期間は平成29年に10年へ短縮されましたが、遺族給付の長期要件は25年のままです。この点は遺族基礎年金の(c)(d)の要件とも共通します。
短期要件と長期要件では、保険料納付要件の要否のほかにもう1つ大きな違いがあります。額の計算方法です。
・短期要件 … 給付乗率は定率、被保険者期間の月数は300月みなしあり
・長期要件 … 生年月日に応じた読み替えあり、被保険者期間は実際の月数
短期要件は現役世代の突然の死亡を想定しているので、加入期間が短くても300月として計算します。長期要件は十分な加入期間がある人なので、実際の月数で計算するという整理です。
つまり、どちらの要件に当たるかで年金額が変わることになります。
簡単にいうと
3分の2以上、または直近1年。基準日は死亡日の前日です。
支給要件の短期要件のうち、被保険者の死亡と資格喪失後5年以内の死亡については、死亡日の前日における保険料納付要件を満たしていることが必要です。
中身は障害厚生年金と同じです。原則として、死亡者における過去の被保険者期間のうち、保険料を滞納していない期間が全体の3分の2以上あることが必要になります。
この要件を満たしていなくても、当分の間、死亡者が65歳未満の者であり、死亡前の直近1年間に滞納期間がなければ、保険料納付要件を満たしたことになります。
判定の基準日が「死亡日の前日」である点も、障害給付の「初診日の前日」と同じ発想です。亡くなってから遺族が慌てて未納分を納めても間に合いません。
国民年金の遺族基礎年金でも、支給要件の(a)(b)についてまったく同じ納付要件がかかっていました。障害と遺族、国年と厚年で、納付要件の形はすべて共通しているということです。
2以上の種別の被保険者であった期間を有する者が死亡した場合の扱いも押さえておきます。
・短期要件に係る遺族厚生年金の額 … 期間を合算し、一の期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなして計算する
・長期要件に係る遺族厚生年金の額 … 各号の厚生年金被保険者期間に係る被保険者期間ごとに計算され、支給される
動画・テキスト・過去問・図解まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
具体例
会社員として35年働いて退職し、70歳で亡くなった人の遺族には長期要件による遺族厚生年金が支給されます。実際の420月で計算されます。
試験のポイント
具体例
自営業時代に保険料を滞納していた人が就職した年に亡くなった場合でも、直近1年に滞納がなければ遺族厚生年金が支給されます。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥7,800/ 購入日から1年間有効(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。