60歳台前半の老齢厚生年金
厚生年金保険で最も難度が高いのがこの分野です。60歳台前半の老齢厚生年金は、支給開始年齢を60歳から65歳へ引き上げる過程で生まれた経過措置で、生年月日ごとに扱いが変わります。
ただし表を丸暗記する必要はありません。テキスト自身が「数字の規則性と相関性を最大限利用しよう」と示しているとおり、3つの規則を押さえれば表を再現できます。まずは制度が生まれた経緯から入り、そのあと引上げの2段階を追いかけます。
簡単にいうと
60歳から65歳へ。いきなり動かせないので経過措置が置かれました。
60歳台前半の老齢厚生年金が誕生した経緯は、次の順序でたどれます。
・旧法時代(昭和61年3月以前)、被用者の老齢年金の支給は60歳スタートだった
・新法時代に入り、老齢基礎年金のスタートに合わせて65歳スタートにしようと決まった
・かといっていきなり65歳スタートにするわけにもいかないため(既得権を守るため)、経過措置として60歳台前半の老齢厚生年金が制度化された
・具体的には、まず1階部分(定額部分)のスタート年齢をゆっくり1歳ずつずらし
・それが完了した後で、次に2階部分(報酬比例部分)のスタート年齢をゆっくり1歳ずつずらす
引上げが2段階に分かれているのがこの制度の骨格です。定額部分を先に片付けてから、報酬比例部分に取りかかるという順序になります。
もうひとつ押さえておきたいのが女性の扱いです。旧法時代の年金は60歳スタートでしたが、第1号厚生年金被保険者期間を有する女子については55歳から支給されていました。そのため、第1号厚生年金被保険者期間を有する女子は、男性と比べて5年遅れで支給開始年齢の引上げが行われています。
もともと5年早く受け取れていたのだから、引き上げるのも5年遅らせる、という調整です。
具体例
昭和20年生まれの男性は、定額部分が63歳から、報酬比例部分が60歳から支給されました。昭和36年4月2日以後生まれの男性になると、60歳台前半の老齢厚生年金そのものがなくなり、65歳からの老齢厚生年金だけになります。
試験のポイント
簡単にいうと
1階部分の開始年齢が61歳・62歳とずれ、最後は消えます。
引上げの第1段階は、1階部分(定額部分)のスタート年齢を1歳ずつずらすことでした。
男子又は第2号から第4号厚生年金被保険者期間を有する女子の場合、生年月日と定額部分の開始年齢は次のようになります。
・昭和16年4月1日以前生まれ … 60歳(報酬比例部分・定額部分とも60歳から)
・昭和16年4月2日から昭和18年4月1日 … 61歳
・昭和18年4月2日から昭和20年4月1日 … 62歳
・昭和20年4月2日から昭和22年4月1日 … 63歳
・昭和22年4月2日から昭和24年4月1日 … 64歳
・昭和24年4月2日から昭和28年4月1日 … 定額部分なし(報酬比例部分のみ60歳から)
第1号厚生年金被保険者期間を有する女子は、これらがすべて5年後ろにずれます。昭和21年4月1日以前生まれが60歳、昭和21年4月2日から昭和23年4月1日が61歳、という具合です。
さらに特定警察職員等は、第1号女子からもう1年後ろにずれます。
簡単にいうと
男子は昭和36年4月2日以後生まれで完全に65歳スタートになります。
定額部分の引上げが完了した後、2階部分(報酬比例部分)のスタート年齢を1歳ずつずらしていきます。
男子又は第2号から第4号厚生年金被保険者期間を有する女子の場合は次のとおりです。
・昭和28年4月2日から昭和30年4月1日 … 61歳
・昭和30年4月2日から昭和32年4月1日 … 62歳
・昭和32年4月2日から昭和34年4月1日 … 63歳
・昭和34年4月2日から昭和36年4月1日 … 64歳
・昭和36年4月2日以後 … 支給なし(65歳から老齢厚生年金)
第1号厚生年金被保険者期間を有する女子は5年遅れなので、昭和41年4月2日以後生まれで支給なしになります。
ここで表を丸暗記しないための3つの規則性を押さえます。
・男子と第1号女子は5年ずれている(さらに特定警察職員等は1年ズレ)
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定額部分の引上げが完了すると、その世代は「報酬比例部分のみ60歳から」という状態になります。ここから第2段階に入ります。
具体例
昭和21年生まれの男性は、定額部分が63歳から、報酬比例部分が60歳から支給されました。同じ昭和21年生まれでも第1号厚生年金被保険者期間を有する女子なら、定額部分は60歳からです。
試験のポイント
・「男子 昭和24年4月2日から昭和28年4月1日」だけが唯一の4年ピッチ
この3つを知っていれば、起点さえ覚えれば表を再現できます。
試験では、昭和28年4月2日生まれの男性について「60歳から報酬比例部分のみが支給される」という誤りの選択肢が出題されたことがあります。表に当てはめると61歳からです。
具体例
昭和35年生まれの男性は、報酬比例部分が64歳から支給されます。昭和37年生まれになると60歳台前半の老齢厚生年金はなく、65歳まで待つことになります。

定額部分と報酬比例部分の引上げ表。丸暗記せずに済む3つの規則性(5年ズレ・2年ピッチ・唯一の4年ピッチ)を添えています
試験のポイント
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