二事業・費用・不服申立て
雇用保険には、給付とは別のもう1本の柱があります。それが雇用保険二事業です。
失業した人にお金を渡すのではなく、そもそも失業を生まないようにする。あるいは、働く人の能力を高める。そういう予防と育成の事業です。社労士の実務では助成金の申請が主要な業務領域の1つになるため、実務的にも重要な分野です。
簡単にいうと
目的条文の後半に出てきた言葉が、そのままここで再登場します。
【条文】雇用保険法第62条第1項
政府は、被保険者、被保険者であった者及び被保険者になろうとする者に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他雇用の安定を図るため、雇用安定事業を行うことができる。
キーワードは3つです。
・失業の予防
・雇用状態の是正
・雇用機会の増大
この3つは、目的条文である法1条の後半に出てきた言葉とそのまま重なります。目的条文で「あわせて」の後ろに置かれていた部分が、ここで具体化されているわけです。
対象となる者の範囲も確認しておきましょう。被保険者だけでなく、被保険者であった者、そして被保険者になろうとする者まで含まれます。まだ働いていない人も視野に入っているということです。
雇用安定事業のメインは、事業主に対する助成金の支給です。代表的なものを挙げます。
・雇用調整助成金
・早期再就職支援等助成金
・特定求職者雇用開発助成金
・トライアル雇用助成金
・地域雇用開発助成金
・キャリアアップ助成金 など
給付が労働者に対して支払われるのに対し、助成金は事業主に対して支払われる点が大きな違いです。労働者の雇用を守る事業主を支援することで、結果的に労働者を守るという構造になっています。
具体例
非正規雇用の従業員を正社員に転換した会社がキャリアアップ助成金を受け取るように、助成金は労働者本人ではなく事業主に支給されます。
試験のポイント
簡単にいうと
数ある助成金の中でもっとも有名なものです。要件の言い回しを押さえます。
助成金の代表格といえるのが雇用調整助成金です。
雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合において、労働者を休業させる事業主その他労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる事業主に対して支給されるものです。
要件を分解しておきましょう。
・きっかけ … 景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由
・状況 … 事業活動の縮小を余儀なくされたこと
・行動 … 労働者を休業させる、その他雇用の安定を図るために必要な措置を講ずること
仕事が減ったときに解雇するのではなく、休業させて雇用を維持する。その負担を国が助ける、というのがこの助成金の趣旨です。まさに「失業の予防」にあたる事業です。
注意したいのは、経済上の理由が求められている点です。天災による事業活動の縮小には別の枠組みがあります。
もう1つ、支給されない場合があります。試験では、雇用調整助成金は労働保険料の納付の状況が著しく不適切である事業主に対しては支給しない、という記述が正しいものとして出題されています(則120条の2)。
簡単にいうと
もう1つの事業です。条文の言い回しが独特なので、そこを押さえます。
【条文】雇用保険法第63条第1項
政府は、被保険者等に関し、職業生活の全期間を通じて、これらの者の能力を開発し、及び向上させることを促進するため、能力開発事業として、次の事業を行うことができる。
キーワードは「職業生活の全期間を通じて」です。若いときだけでも、失業したときだけでもなく、働いている期間の全体にわたって能力を高めていく、という考え方が示されています。
能力開発事業の具体例としては、公共職業能力開発施設及び職業能力開発総合大学校の設置及び運営を行う都道府県に対して、経費の補助を行ったりしています。
ここで補助の相手が都道府県である点に注目してください。雇用安定事業の助成金が事業主に支給されるのに対し、能力開発事業では都道府県への経費補助というルートもあるということです。
2つの事業を並べて整理しておきましょう。
・雇用安定事業 … 失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大。事業主への助成金が中心
・能力開発事業 … 職業生活の全期間を通じた能力の開発及び向上。訓練施設の整備や都道府県への補助など
雇用保険二事業という名前のとおり、この2つで構成されます。かつては雇用福祉事業を加えた三事業でしたが、現在は二事業です。
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保険料を納めていない事業主に助成金だけ出すわけにはいかない、という当然の帰結です。この考え方は他の助成金にも共通します。
具体例
受注が急減した製造業の会社が、従業員を解雇せずに一時的に休業させて休業手当を支払った場合、その費用の一部が雇用調整助成金として助成されます。
試験のポイント
条文の語尾がいずれも「行うことができる」となっている点も確認しておいてください。義務ではなく、政府の裁量に委ねられた事業です。
具体例
都道府県が運営する職業能力開発校の運営費の一部を国が補助するのは、能力開発事業として行われているものです。
試験のポイント
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