雇用保険のしくみと被保険者
雇用保険には「被保険者」という考え方があります。労災保険にはなかったものです。したがって、誰が被保険者になり、誰がならないのかを線引きする必要が出てきます。
この節では、事業の側から見た適用と、人の側から見た被保険者の4分類、そして適用除外の6項目を押さえます。数字が多いところですが、択一で毎年のように問われる稼ぎどころです。
簡単にいうと
労働者が1人でもいれば適用される、が原則。例外の枠は労災保険とよく似ています。
原則として、労働者が1人でも雇用される事業は、雇用保険の強制適用事業とされます。
例外は暫定任意適用事業です。常時5人未満の労働者を雇用する個人経営の農林水産業は、当分の間、任意適用事業とされています。
ここで条件を分解しておきましょう。
・個人経営であること(法人はこの時点で強制適用)
・農林水産の事業であること
・常時5人未満であること
3つがそろって初めて任意適用です。試験では『雇用保険法の適用を受けない労働者のみを雇用する事業主の事業は、その労働者の数が常時5人以下であれば、任意適用事業となる』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。誤りが二重に仕込まれていて、任意適用となるのは農林水産の事業に限られること、そして人数は「5人以下」ではなく「5人未満」であることが正解のポイントです。
もう1つ例外の例外があります。水産の事業のうち、船員法第1条に規定する船員が雇用される事業は、任意適用ではなく強制適用の扱いになります。
具体例
家族と4人の従業員で営む個人経営の林業は暫定任意適用事業になり得ますが、同じ規模でも法人化すれば強制適用ですし、従業員が5人になれば強制適用です。
試験のポイント
簡単にいうと
役員・外務員・長期欠勤・掛け持ち。実務でも迷うところが、そのまま出題されます。
雇用保険の適用対象となる労働者を被保険者といいます。判断に迷う典型を整理しておきましょう。
・個人事業主や法人の代表取締役
被保険者となりません。使用される側ではないためです。
・法人の取締役
原則として被保険者となりません。ただし、代表者以外の役員であって、同時に会社の部長・支店長・工場長等の従業員としての身分を有し、労働の対償として給料が支給されるなど労働者的性格が強く、雇用関係があると認められる者は被保険者となります。いわゆる兼務役員です。
・生命保険の外務員
原則として被保険者となりません。ただし、その職務内容、服務の実態、給与の算出方法等から総合的に見て、雇用関係が明確に認められる者は被保険者となります。
・長期欠勤者
当該事業主との間で雇用関係が存続する限り、賃金の支払を受けているかいないかにかかわらず被保険者となります。試験でもこの記述が正しいものとして出題されています。なお、この長期欠勤している期間は、所定給付日数等を決定するための基礎となる算定基礎期間に算入されます。
簡単にいうと
同じ被保険者でも4つに分かれます。受けられる給付が変わるので、この分類が出発点になります。
雇用保険の被保険者は、次の4種類に分かれます。
・一般被保険者
高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の被保険者です。いちばん人数が多い、標準の区分です。
・高年齢被保険者
65歳以上の被保険者をいいます(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除きます)。
・短期雇用特例被保険者
季節的に雇用される者のうち、次のいずれにも該当しない者です(日雇労働被保険者を除きます)。
・4か月以内の期間を定めて雇用される者
・1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者
・日雇労働被保険者
被保険者である日雇労働者(日々雇用される者又は30日以内の期間を定めて雇用される者)であって、一定の要件を満たすものです。
簡単にいうと
ここは丸ごと覚えるところ。特に最初の2つは、どの科目とも比較される定番の数字です。
次に該当する者は、適用事業に雇用されていても、原則として被保険者になることができません。
・1週間の所定労働時間が20時間未満である者
・同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者
・季節的に雇用される者であって、4か月以内の期間を定めて雇用される者、又は1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者
・学校教育法に規定する学校、専修学校又は各種学校の学生又は生徒(一定の者を除く)
・船員であって、漁船に乗り組むため雇用される者(1年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く)
・国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に一定水準を超える退職給付を受けられる者
最初の2つ、すなわち週20時間未満と31日以上の見込みなし、が入口の二枚看板です。逆にいえば、週20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがあれば、パートでもアルバイトでも被保険者になります。
4番目の学生については、除外の除外があります。次の者は学生であっても被保険者となります。
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原則として、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみ被保険者となります。
最後の1つは労災保険と正反対です。労災保険では、2以上の適用事業に使用される労働者はそれぞれの事業において適用されました。雇用保険は「主たる賃金を受ける一の雇用関係のみ」です。ここは必ず対比で覚えてください。
具体例
平日は製造会社の正社員、週末は飲食店のアルバイトという人の場合、雇用保険の被保険者となるのは主たる賃金を受ける製造会社の雇用関係だけです。労災保険であれば両方で適用されます。
試験のポイント
短期雇用特例被保険者の定義がやや込み入っています。季節的に雇用される者のうち、上の2つに当てはまる人は「短期雇用特例被保険者にならない」という書き方です。なぜなら、この2つに当てはまる人はそもそも被保険者の適用除外にあたるからです。次のテーマで見る適用除外の3番目と、そのまま裏表の関係になっています。
4種類の区分は、それぞれ受けられる求職者給付が違います。一般被保険者は基本手当、高年齢被保険者は高年齢求職者給付金、短期雇用特例被保険者は特例一時金、日雇労働被保険者は日雇労働求職者給付金です。
具体例
スキー場で12月から3月まで働く人は、期間が4か月を超え、週30時間以上働くのであれば短期雇用特例被保険者になります。離職後に受けるのは基本手当ではなく特例一時金です。
試験のポイント
・休学中の者
・定時制の課程に在学する者
試験では、休学中の者は他の要件を満たす限り雇用保険法の被保険者となる、という記述が正しいものとして出題されています。学生だから一律に対象外、とはならない点に注意してください。
具体例
週25時間・1年契約のパートで働く人は被保険者になります。一方、週15時間の勤務であれば、契約が何年続いても被保険者になりません。
試験のポイント
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