雇用保険のしくみと被保険者
雇用保険は被保険者を特定して管理する制度なので、事業主の届出が制度の背骨になります。誰がいつ入って、いつ抜けたのか。これを届け出てもらわないと制度が動きません。
この節では届出の種類と期限、そして離職証明書と確認の仕組みを押さえます。期限の数字が細かいので、表で整理して覚えるのが近道です。
簡単にいうと
取得は「翌月10日」、喪失は「10日以内」。よく似ていますが数え方が違います。
事業主は、次の届出を、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所長、すなわち所轄公共職業安定所長に対して行わなければなりません。
・被保険者資格取得届 … 事実のあった日の属する月の翌月10日まで
・被保険者資格喪失届 … 事実のあった日の翌日から起算して10日以内
・被保険者転勤届 … 事実のあった日の翌日から起算して10日以内
・個人番号変更届 … 速やかに
・被保険者休業開始時賃金証明書 … 育児休業等の給付の申請書を提出する日
取得届と喪失届の違いに注意してください。取得届は「事実のあった日の属する月の翌月10日」までなので、月の初めに入社した人でも翌月10日まで余裕があります。これに対して喪失届は「事実のあった日の翌日から起算して10日以内」で、こちらは日数でカウントします。
入るときはゆるく、抜けるときは厳しい、と覚えるとよいでしょう。失業給付の手続きに直結するため、喪失のほうが急がれるという発想です。
提出先はいずれも所轄公共職業安定所長です。事業所の所在地が基準であって、労働者の住所地ではありません。労働者本人が失業の認定を受けに行くのは住所地を管轄する管轄公共職業安定所ですから、両者を混同しないようにしてください。
具体例
4月1日入社の人の資格取得届は5月10日までに提出すればよいのに対し、4月1日退職の人の資格喪失届は4月11日までに提出しなければなりません。
試験のポイント
簡単にいうと
退職の届出には、もう1枚の書類がセットで付きます。ここに年齢の例外があります。
事業主は、適用事業に係る被保険者でなくなったことの原因が離職であるときは、資格喪失届に被保険者離職証明書を添えなければなりません。
この離職証明書をもとに、公共職業安定所から本人へ離職票が交付されます。離職票は、本人が求職の申込みをするときに提出する重要な書類です。
原則として、被保険者が離職票の交付を希望しないときは、離職証明書を添えないことができます。基本手当を受け取るつもりがなければ、書類を作る必要がないという趣旨です。
ところが例外があります。離職の日において59歳以上である被保険者については、本人が離職票の交付を希望しない場合であっても、資格喪失届に離職証明書を添えなければなりません。
理由は、高年齢雇用継続給付の計算にあります。60歳到達時の賃金を確定させておかないと、後で給付額を計算できなくなってしまうためです。試験でもこの記述が正しいものとして繰り返し出題されています。
もう1つ、事業主は、被保険者が離職票の交付を希望する場合には、その者に基本手当、高年齢求職者給付金又は特例一時金の受給資格がないときであっても、離職証明書を提出しなければなりません。受給資格の有無を事業主が判断して省略することはできない、ということです。
具体例
簡単にいうと
届出を出しただけでは終わりません。役所が「確認」して初めて効果が生じます。
厚生労働大臣(権限は公共職業安定所長に委任されています)は、次の場合に、被保険者となったこと又は被保険者でなくなったことの確認を行います。
・事業主が資格の得喪の届出をした場合
・被保険者又は被保険者であった者からの確認の請求があった場合
・職権による場合
この確認によって、被保険者資格の取得や喪失といった法律上の効果が生ずるとされています。届出は確認のきっかけにすぎず、効果を生むのは確認のほうだという構造です。
注目したいのは2つ目です。事業主が届出を怠っていても、労働者の側から確認の請求ができます。会社が手続きをしてくれなかったために給付が受けられない、という事態を防ぐための仕組みです。
3つ目の職権による確認も同じ趣旨で、行政の側が自分から動くこともできます。
この3つのルートがあることで、事業主の届出だけに依存しない設計になっています。労災保険に被保険者の概念がなく届出の有無を問わず保護されたのに対し、雇用保険では確認という手続きを置いて同じ結果を確保している、と理解しておくとよいでしょう。
具体例
簡単にいうと
保管年数は科目ごとに違います。雇用保険は2種類あるので要注意です。
事業主は、雇用保険に関する書類をその完結の日から2年間保管しなければなりません。ただし、被保険者に関する書類にあっては4年間です。
2つの年数がある点が雇用保険の特徴です。原則は2年、被保険者関係だけ4年、と押さえてください。
他の科目と比べておきましょう。
・労働基準法の記録の保存 … 原則5年(当分の間3年)
・労働安全衛生法の健康診断個人票 … 原則5年
・労災保険法に関する書類 … 完結の日から3年間
・雇用保険法に関する書類 … 完結の日から2年間(被保険者に関する書類は4年間)
数字だけ並べると混ざりやすいので、科目名とセットで覚えるのが安全です。
被保険者に関する書類を長く保管させるのは、被保険者期間や算定基礎期間の確認に必要だからです。基本手当の所定給付日数は勤続年数で変わりますから、過去の記録がなければ計算できません。制度の趣旨から逆算できる数字でもあります。
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58歳で退職し離職票が要らないと言った人については離職証明書を省略できますが、59歳の人であれば本人が要らないと言っても添付が必要です。
試験のポイント
会社が資格取得届を出してくれないまま働いていた人でも、自分で公共職業安定所に確認の請求をすることで、さかのぼって被保険者であったことを確認してもらえます。
試験のポイント
資格取得届や離職証明書の控えといった被保険者に関する書類は4年間、それ以外の雇用保険関係の書類は2年間の保管が必要です。
試験のポイント
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