何が労災になるか
けがであれば「いつ・どこで」がはっきりしますが、病気はそうはいきません。じわじわ進むので、どこまでが仕事のせいなのかが見えにくいのです。
そこで法令は、あらかじめ業務上の疾病を列挙しておく方式をとりました。さらに、脳・心臓疾患と精神障害については具体的な認定基準が示されています。数値がたくさん出てきますが、選択式で空欄になる数値でもあるので、ここは正確に覚えてしまいましょう。
簡単にいうと
病気が労災になるかどうかは、労働基準法施行規則の別表で決まります。3つの層に分けて見ると整理できます。
ある疾病が業務上の疾病といえるかどうかは、業務が他の競合する原因と比較して相対的に有力な原因として認められるかどうかで判断されます。私生活の要因と比べて、仕事の要因のほうが有力といえるかどうか、という比較です。
具体的な範囲は、労働基準法施行規則の別表第1の2に第1号から第11号まで定められています。中身は3つの層に分けて理解すると見通しがよくなります。
・第1号 業務上の負傷に起因する疾病
業務上のけがが原因で起きた病気です。たとえば業務上の頭部の負傷による慢性硬膜下血腫などが該当します。
・第2号から第10号 職業性の疾病
いつ罹患したのかの立証が難しい病気について、あらかじめ想定される疾病を例示列挙しておき、迅速に被災労働者を保護しようという仕組みです。過重労働に起因する脳・心臓疾患は第8号、業務によるストレスに起因する精神障害は第9号に位置づけられています。
・第11号 その他業務に起因することの明らかな疾病
列挙されていない疾病でも包括的に救済するための受け皿です。ただしこの号による場合には、労働者側に立証責任があります。
試験では『業務上の疾病の範囲は、労働基準法施行規則別表第一の二の各号に掲げられているものに限定されている』という記述が正しいものとして出題されたことがあります。第11号という包括規定があるため実質的には限定されないように見えますが、その包括規定も別表の中に置かれているので、範囲は別表に定められていることになります。
具体例
有機溶剤を扱う塗装工程で長く働いてきたたかしさんが中毒症状を発症した場合は、例示列挙された職業性の疾病として比較的スムーズに認定されます。一方、列挙にない疾病で第11号による認定を求める場合は、本人の側で業務との関係を立証する必要があります。
試験のポイント
簡単にいうと
いわゆる過労死の認定基準です。負荷のかかり方を3つの時間軸で見ます。
次の3つのいずれかの業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、労基則別表第1の2第8号に該当する疾病として取り扱われます。
・異常な出来事
発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る出来事に遭遇したこと。
・短期間の過重業務
発症に近接した時期、具体的には発症前おおむね1週間において、特に過重な業務に就労したこと。
・長期間の過重業務
発症前の長期間、具体的には発症前おおむね6か月間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと。
3つを並べると、直前・1週間・6か月という時間の幅の違いで整理されていることが分かります。どれか1つに当てはまれば足りるのであって、3つすべてを満たす必要はありません。
期間の数字がそれぞれ違うので、「異常な出来事は前日まで」「短期間はおおむね1週間」「長期間はおおむね6か月」という組み合わせで覚えるのが安全です。
簡単にいうと
労働時間の数字は、この科目でもっとも問われやすい部類。3つの数字をセットで押さえます。
長期間の過重業務でいう「疲労の蓄積」をもたらす最も重要な要因は労働時間だと考えられています。そこで、時間外労働の時間数に着目した評価の目安が示されています。
・発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合
→ 業務と発症との関連性が弱い
・おおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど
→ 業務と発症との関連性が徐々に強まる
・発症前1か月間におおむね100時間、又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合
→ 業務と発症との関連性が強い
数字の役割を取り違えないことが大切です。45時間は「これを超えると徐々に関連性が強まっていく」という出発点であって、45時間を超えたら即認定というものではありません。一方、直前1か月で100時間、または2か月から6か月の平均で80時間というラインに達すると、関連性が強いと評価されます。
1か月なら100時間、複数月の平均なら80時間、という対応関係で覚えると混ざりません。
簡単にいうと
こちらは3つの要件をすべて満たす必要があります。脳・心臓疾患が「どれか1つ」だったのと対照的です。
次の3つのいずれの要件も満たす対象疾病は、労基則別表第1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱われます。
・対象疾病を発病していること
・対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
・業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと
3つ目の要件は、私生活での出来事や本人の既往歴などが原因だと認められないこと、という意味です。仕事の負荷があったというだけでなく、他の原因では説明がつかないことまで求められています。
ここで注意したいのは、脳・心臓疾患の基準が3つの過重負荷のいずれかに該当すればよかったのに対し、精神障害の基準は3要件のすべてを満たす必要がある点です。「いずれか」と「いずれも」の違いが、そのまま出題ポイントになります。
また、評価の対象期間は発病前おおむね6か月です。脳・心臓疾患の長期間の過重業務も発症前おおむね6か月でしたので、こちらは同じ数字になります。
具体例
簡単にいうと
本人がつらかったかどうかでは決まりません。物差しは「同じ立場の人ならどう受け止めるか」です。
強い心理的負荷にあたるかどうかは、精神障害を発病した労働者がその出来事や出来事後の状況を主観的にどう受け止めたかで決めるのではありません。同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価されます。
ここでいう同種の労働者とは、職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者をいいます。本人の感じ方ではなく、同じような立場の人を基準にする客観的な物差しだと理解してください。
評価の道具として、心理的負荷の強度を「強」「中」「弱」の3段階に区分する業務による心理的負荷評価表が用いられます。総合評価の結果が「強」と判断されれば、強い心理的負荷があったと認定されます。
判断の手順は次のとおりです。
・発病前おおむね6か月の間に「特別な出来事」があれば、その時点で総合評価は「強」
・「特別な出来事」がない場合は、実際の出来事を評価表に当てはめて「強」「中」「弱」のいずれかを判断する
特別な出来事の代表例が極度の長時間労働です。これは、発症直前の1か月におおむね160時間を超えるような時間外労働、またはこれに満たない期間にこれと同程度の時間外労働、たとえば3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合をいいます。ただし、休憩時間は少ないものの手待時間が多いなど、労働密度が特に低い場合は除かれます。
具体例
動画・テキスト・過去問・図解まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
深夜の緊急対応で高温の現場に長時間立ち会った翌朝に倒れたケースは異常な出来事、納期直前の1週間だけ連日徹夜が続いた後に倒れたケースは短期間の過重業務として検討されます。
試験のポイント
具体例
発症前6か月の時間外労働が毎月85時間だったケースでは、2か月ないし6か月の平均が80時間を超えているため、業務と発症との関連性が強いと評価される方向に働きます。
試験のポイント
半年の間に繰り返し人格を否定する叱責を受けていたゆうこさんがうつ病を発病し、私生活に大きな出来事もなかったという場合、3要件を満たすものとして検討されます。
試験のポイント
3週間で130時間の時間外労働が続いた後に発病したケースは、極度の長時間労働という特別な出来事にあたり、その時点で総合評価は「強」と判断されます。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥7,800/ 購入日から1年間有効(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。