給付額の土台
労災保険の給付額は、ほとんどが「給付基礎日額の◯日分」という形で決まります。つまり、給付基礎日額が土台になっているわけです。
ところがこの土台、1種類ではありません。休業用・年金用・一時金用の3つがあり、それぞれ物価や賃金の変動への対応の仕方が違います。ここは表で覚えるところなので、違いを対比しながら読んでください。
簡単にいうと
新しい言葉に見えますが、中身は労基法で学んだ平均賃金です。
給付基礎日額とは、給付を支給する場合のベースとなる1日当たりの金額のことです。原則として、労働基準法の平均賃金がそのまま給付基礎日額になります。
ただし、原則としてと書いたのには理由があります。次の2つの仕組みが働くため、必ずしも平均賃金と同額になるとは限らないからです。
・スライド制 … 賃金相場の変動に応じて保険給付の額が改定される仕組み
・年齢階層別の最低・最高限度額 … 年齢層ごとに下限と上限を設ける仕組み
なぜこうした調整が必要なのでしょうか。労災保険の給付は、年金のように何十年も続くことがあります。事故が起きた日の賃金水準のまま金額を固定してしまうと、時間が経つほど実態と合わなくなってしまいます。そこで、世間の賃金相場に合わせて調整する仕組みが用意されています。
なお、ここでいう平均給与額とは、厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月決まって支給する給与の額を基礎として算定した労働者1人当たりの給与の1か月平均額をいいます。要するに世間の賃金相場のことです。
具体例
災害が起きた年の平均賃金が1万円だったとしても、年金を受け続けている間に賃金相場が上がれば、その分だけ年金の計算に使う日額も引き上げられます。
試験のポイント
簡単にいうと
端数処理は他の科目と逆方向です。ここだけで1問取れることがあります。
給付基礎日額に1円未満の端数があるときは、これを1円に切り上げるものとされています。
端数処理は科目ごとにばらばらで、他の保険制度では「円未満四捨五入」や「円未満切捨て」とされていることが多くなっています。上の位に切り上げるという処理は、その中ではかなり珍しい部類です。
覚え方としては、被災労働者に有利な方向へ処理すると理解しておくとよいでしょう。切り上げれば1円分だけ給付が増えるからです。
試験では『年金たる保険給付の支給に係る給付基礎日額に1円未満の端数があるときは、その端数については切り捨てる』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。正しくは1円に切り上げます(法8条の5)。
具体例
平均賃金を計算した結果が9,876円54銭になったときの給付基礎日額は9,877円です。切り捨てて9,876円としてはいけません。
試験のポイント
簡単にいうと
3つの日額のうち、いちばん条件が細かいのがこれ。数字を1つずつ確認していきます。
休業給付基礎日額は、休業補償給付や休業給付の額のベースとして用いられる日額です。
まずスライド制です。ある四半期の平均給与額が、算定事由発生日の属する四半期の平均給与額と比較して10%を超えて上昇し、または低下した場合には、その翌々四半期の初日から休業給付基礎日額が改定されます。
・比較する単位 … 四半期
・改定される変動幅 … 10%を超える変動
・改定の時期 … 変動があった四半期の翌々四半期の初日から
たとえば1月から3月の四半期に事故が起きたとして、7月から9月の四半期で10%を超える変動があった場合、10月から12月ではなく、その次の1月から3月の初日からスライドが適用されます。1つ飛ばしになる点に注意してください。
次に年齢階層別の最低・最高限度額です。休業補償給付を支給すべき事由が生じた日が、その休業補償給付に係る療養を開始した日から起算して1年6か月を経過した日以後の日である場合に、限度額の適用を受けます。最初から適用されるわけではありません。
なお、年齢階層別の最低・最高限度額は、厚生労働省において作成する賃金構造基本統計の常用労働者について、年齢階層ごとに求めた1月当たりの決まって支給する現金給与額を基礎として算定されます。限度額が適用されるとは、最低限度額を下回ることはなく、最高限度額を超えることもない、という意味です。
簡単にいうと
残る2つはスライドの条件が同じ。違うのは限度額のかかり方だけです。
年金給付基礎日額は、年金タイプで支給される給付の額のベースとして用いられます。
スライド制については、ある年度の平均給与額が算定事由発生日の属する年度の平均給与額と比べてわずかでも変動した場合に、その翌年度の8月から適用されます。休業給付基礎日額が10%を超える変動を要件としていたのに対し、こちらは変動幅の要件がありません。
年齢階層別の最低・最高限度額については、休業給付基礎日額の場合とは異なり、最初の時点から適用を受けます。1年6か月の待ちがない、と押さえてください。
一時金の給付基礎日額は、一時金タイプで支給される給付の額のベースです。スライド制は年金給付基礎日額と同じ要領で、年度ごとの平均給与額を比較し、わずかでも変動があれば翌年度の8月から適用されます。
そして年齢階層別の最低・最高限度額については、適用がありません。3つの日額のうち、限度額がかからないのはこの一時金だけです。
整理すると、スライドの条件は「休業だけが厳しい(四半期・10%超)」、限度額は「一時金だけがかからない」という覚え方になります。
具体例
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具体例
3月に負傷して休業しているさおりさんの場合、その後の四半期で賃金相場が12%上がれば、その翌々四半期の初日から休業給付基礎日額が引き上げられます。休業が1年6か月を超えると、今度は年齢階層別の限度額もかかってきます。
試験のポイント

3つの給付基礎日額 ― スライド制と年齢階層別限度額の比較
試験のポイント
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