ケガと病気に対する給付
ここから業務災害に関する保険給付を1つずつ見ていきます。全部で7つありますが、最初に全体の地図を頭に入れておくと、あとがずっと楽になります。
そのうえで、この節では入口にあたる療養補償給付を扱います。ひとことでいえば「治療代がかからない」給付です。原則と例外の2パターンがあり、どちらの窓口に出すのかまで問われます。
簡単にいうと
細かい数字は後回しで大丈夫。まずは7つの給付がどこに位置するかをつかみます。
業務災害に関する保険給付は、次の7つです。
・療養補償給付
・休業補償給付
・障害補償給付
・遺族補償給付
・葬祭料
・傷病補償年金
・介護補償給付
この7つは、被災労働者の状態に沿って並べると理解しやすくなります。
負傷・疾病がまだ治っていない段階では、治療のための療養補償給付と、働けない間の所得を補う休業補償給付が出ます。療養開始後1年6か月を経過しても治らず、傷病等級第1級から第3級に該当する状態になると、休業補償給付に代わって傷病補償年金が支給されます。
傷病が治った後に障害が残れば障害補償給付、労働者が死亡すれば遺族補償給付と葬祭料が支給されます。介護補償給付は、傷病補償年金または障害補償年金の受給者につながる位置にあります。
つまり「治ゆ前」「治ゆ後」「死亡」という3つの局面に分けて、それぞれどの給付が出るかを押さえるのが体系図の読み方です。
具体例
工場で腰を負傷したかずおさんは、まず療養補償給付で治療を受け、働けない間は休業補償給付を受けます。1年6か月を過ぎても重い状態が続けば傷病補償年金へ、治って障害が残れば障害補償給付へと進みます。

業務災害に関する7つの保険給付の体系図
試験のポイント
簡単にいうと
条文をよく読むと、7つのうち2つだけがカッコで外されています。ここが後の時効の話につながります。
【条文】労働者災害補償保険法第12条の8第2項
前項第1号から第5号までに掲げる保険給付(傷病補償年金及び介護補償給付を除く。)は、労働基準法第75条から第77条まで、第79条及び第80条に規定する災害補償の事由又は船員法第89条第1項、第90条から第92条まで及び第93条に規定する災害補償の事由が生じた場合に、補償を受けるべき労働者若しくは遺族又は葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行う。
この条文が言っているのは2つです。
・業務災害に関する保険給付は、労基法や船員法の災害補償の事由が生じた場合に行われること
・その支給は、労働者や遺族などの請求に基づいて行われること
そしてカッコ書きで、傷病補償年金と介護補償給付が除かれています。この2つは労基法の災害補償にルーツを持たない、労災保険法が独自に用意した給付だからです。
この除外は後の学習でも効いてきます。とくに傷病補償年金は、労働者の請求ではなく労働基準監督署長の職権で支給が決定されるため、請求という行為が存在しません。時効の論点で「傷病補償年金には時効の問題が生じない」と説明されるのは、この条文の構造から来ています。
具体例
簡単にいうと
同じ療養補償給付でも、どこの病院にかかったかで形が変わります。
療養補償給付は、治療を受けた医療機関によって2つのパターンに分かれます。
・原則パターン … 療養の給付
指定病院等で治療を受ける場合です。政府が治療そのものを給付する現物給付になります。窓口でお金を払う必要がありません。
・例外パターン … 療養の費用の支給
指定病院等以外の病院等で治療を受けた場合です。いったん本人が費用を支払い、その費用が償還される現金給付になります。
どちらの場合も、給付の額は全額です。労働者の一部負担はありません。この点は、あとで学ぶ通勤災害の療養給付との重要な違いになります。
ここでいう指定病院等とは、社会復帰促進等事業として設置された病院もしくは診療所、または都道府県労働局長の指定する病院もしくは診療所、薬局もしくは訪問看護事業者をいいます。指定するのが都道府県労働局長である点を押さえてください。労働基準監督署長ではありません。
具体例
簡単にいうと
範囲は6つ。そして「どこを経由して出すか」が原則と例外で分かれます。
療養の給付の範囲は次の6つです。いずれも政府が必要と認めるものに限られます。
・診察
・薬剤又は治療材料の支給
・処置、手術その他の治療
・居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
・病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
・移送
療養の費用の支給の範囲も、これと同じです。
試験では『療養補償給付としての療養の給付の範囲には、病院又は診療所における療養に伴う世話その他の看護のうち政府が必要と認めるものは含まれるが、居宅における療養に伴う世話その他の看護が含まれることはない』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護も、きちんと範囲に含まれています(法13条2項)。
請求手続についても違いがあります。療養の給付、療養の費用の支給のいずれも請求先は所轄労働基準監督署長ですが、経路が異なります。
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療養補償給付や休業補償給付は本人が請求書を出して初めて支給されますが、傷病補償年金については本人が請求書を書く場面がありません。
試験のポイント
試験のポイント
・療養の費用の支給 … 直接、請求書を提出する
現物給付は病院が窓口になるので病院経由、現金給付は本人にお金が返ってくるので直接提出、と結びつけると覚えやすくなります。
具体例
労災指定病院にかかったみゆきさんは請求書を病院の窓口に出しますが、指定外の病院にかかった場合は自分で労働基準監督署へ提出します。
試験のポイント
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