通勤災害と予防の給付
労災保険の給付は、災害が起きた後に支給されるものばかりです。その中で1つだけ、災害が起きる前に働く給付があります。それが二次健康診断等給付です。
長時間労働やストレスによる脳血管疾患・心臓疾患の発生が増えていることを背景に設けられた制度で、安衛法の健康診断と労災保険がつながる接点にもなっています。請求先が他の給付と違う点も含めて、独自のルールが多い給付です。
簡単にいうと
この給付だけは「異常が1つでもあれば」ではありません。すべてに異常がある人が対象です。
二次健康診断等給付は、一次健康診断における業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する所定の検査を受けた労働者が、その検査のいずれの項目にも異常の所見があると診断されたときに、その労働者に対し、請求に基づいて行われます。
ここでいう一次健康診断とは、労働安全衛生法における一般健康診断のうち直近に行われたものをいいます。過去のどれでもよいわけではなく、直近のものが基準です。
所定の検査とは、具体的に次の4つの検査項目です。
・血圧の測定
・LDLコレステロール、HDLコレステロール又は血清トリグリセライドの量の検査
・血糖検査
・腹囲の検査又はBMIの測定
注意したいのは「いずれの項目にも異常の所見がある」という要件です。1つでも正常な項目があれば対象になりません。かなり絞られた要件だと理解してください。
もう1つ重要な例外があります。一次健康診断の結果その他の事情により、既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有すると認められる場合には、二次健康診断等給付は行われません。この給付の目的はあくまで疾病の予防であり、既に発症している人は直ちに療養に入るべきだからです。
具体例
定期健康診断で血圧・血中脂質・血糖・腹囲のすべてに異常の所見が出たまさみさんは二次健康診断等給付を請求できますが、既に狭心症と診断されている人は対象になりません。
試験のポイント
簡単にいうと
検査をして終わりではなく、その後の指導までが1セットになっています。
二次健康診断等給付の内容は、次の2つです。
・二次健康診断
血糖値検査やエコー検査など、脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査をいいます。医師により行われ、実施は1年度で1回が限度です。
・特定保健指導
二次健康診断の結果に基づき、脳血管疾患及び心臓疾患の発生の予防を図るため、面接により行われる保健指導です。栄養指導や生活指導などが含まれ、医師又は保健師によって行われます。実施は二次健康診断ごとに1回が限度です。
数え方の単位が違う点に注意してください。二次健康診断は1年度につき1回、特定保健指導は二次健康診断ごとに1回です。
また、実施する人にも違いがあります。二次健康診断は医師のみですが、特定保健指導は医師又は保健師が行います。細かい違いですが、そのまま出題される部分です。
具体例
簡単にいうと
他の給付と請求先が違う唯一の給付です。ここは確実に取りたいところ。
二次健康診断等給付を受けようとする者は、必要な事項を記載した請求書を、一次健康診断を受けた日から3か月以内に提出しなければなりません。
提出の経路は、二次健康診断等給付を受けようとする健診給付病院等を経由して、所轄都道府県労働局長に対して行います。
ここが最大のポイントです。他の保険給付の請求先はすべて所轄労働基準監督署長でしたが、二次健康診断等給付だけは所轄都道府県労働局長です。労災保険の事務は原則として都道府県労働局長が行い、保険給付だけが監督署長という分担でしたが、その原則どおりに戻るのがこの給付だと理解しておくとよいでしょう。
期限の3か月も忘れやすい数字です。一次健康診断を受けた日から起算します。二次健康診断を受けた日ではありません。
具体例
4月10日に定期健康診断を受けて4項目すべてに異常の所見が出た場合、7月10日までに健診給付病院等を経由して請求する必要があります。
試験のポイント
簡単にいうと
労災保険の話でありながら、事業者に義務が生じるのがこの給付の特徴です。
事業者は、二次健康診断の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければなりません。対象となるのは、二次健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限られます。
つまり、労働者が二次健康診断を受けて終わりではなく、その結果を踏まえて職場の側が動くところまでが制度の射程に入っています。
この構造は、安衛法で学んだ健康診断の事後措置とよく似ています。健康診断を実施したら、医師等の意見を聴き、必要なら就業場所の変更や労働時間の短縮などの措置を講じる、という流れです。二次健康診断等給付は、安衛法の健康診断制度と労災保険が接続する場所にある給付だと理解しておきましょう。
なお、この給付は脳血管疾患及び心臓疾患の発生を予防するための制度です。まだ災害が起きていない段階で働くという意味で、労災保険の中では異色の存在です。
具体例
二次健康診断で心臓に所見が見つかった従業員について、会社は医師の意見を聴き、必要に応じて深夜業や長時間の残業を控えさせるといった対応をとることになります。
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