通勤災害と予防の給付
通勤災害に関する保険給付は、業務災害に関する保険給付とほとんど同じ内容です。ですから、ここで新しく覚えることはそう多くありません。
大事なのは「どこが違うか」だけです。違いは名称、一部負担金、そして待期期間中の事業主の義務の3つ。この3点に絞って押さえていきましょう。
簡単にいうと
業務災害の給付名と見比べると、きれいに2文字だけ抜けています。理由も一緒に押さえましょう。
通勤災害に関する保険給付の体系は、業務災害に関する保険給付の体系とほとんど同じです。異なるのは保険給付の名称です。
業務災害の「療養補償給付」は、通勤災害では「療養給付」となります。つまり、補償という2文字が使われません。
これには理由があります。業務災害に関する保険給付は、労働基準法等の災害補償責任を肩代わりするものでした。ところが通勤災害は、通勤の途中に起きた出来事であって、事業主に災害補償の責任があるわけではありません。したがって「補償」という言葉を使わないのです。
対応関係は次のとおりです。
・療養補償給付 → 療養給付
・休業補償給付 → 休業給付
・障害補償給付 → 障害給付(障害年金・障害一時金)
・遺族補償給付 → 遺族給付(遺族年金・遺族一時金)
・傷病補償年金 → 傷病年金
・介護補償給付 → 介護給付
そして、業務災害の「葬祭料」に対応するのは「葬祭給付」です。ここだけは補償の2文字を抜くのではなく、言葉そのものが入れ替わります。名称の変換ルールから外れる唯一の例なので、注意してください。
具体例
通勤途中の事故で治療を受けたのぞみさんが請求するのは療養補償給付ではなく療養給付、休業中に請求するのは休業補償給付ではなく休業給付です。
試験のポイント
簡単にいうと
業務災害では「治療代がかからない」でした。通勤災害では少しだけ本人が負担します。
業務災害の療養補償給付は、労働者の一部負担がなく治療代がかかりませんでした。これに対し、通勤災害の療養給付では被災労働者に負担を求めます。これが一部負担金です。
理由は2つあります。
・通勤災害は事業主に責任がないこと
・労災保険の保険料は100%事業主が負担していること
事業主に責任のない災害について、事業主が全額を負担した保険料だけを元手に給付を行うのはバランスが悪い、という発想です。そこで、受益者である労働者にもわずかながら負担を求めています。
一部負担金の額は、原則として200円です。ごく少額ですが、通勤災害と業務災害を分ける象徴的な違いとして繰り返し問われます。
徴収の方法も独特です。一部負担金は、労働者に支給すべき最初の休業給付の額から控除される、つまり天引きされます。病院の窓口で支払うわけではありません。この点をきちんと押さえておきましょう。
具体例
簡単にいうと
200円を取らないケースが決まっています。ここは列挙で覚えます。
一部負担金は最初の休業給付から天引きされる仕組みなので、そもそも休業給付を受けない者からは徴収できません。したがって、休業給付を受けない者からは一部負担金は徴収しないこととされています。
そのほか、次の者からも徴収されません。
・療養の開始後3日以内に死亡した者
・第三者の行為によって生じた事故により療養給付を受ける者
・同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した者
第三者行為災害で徴収しないのは、本来の責任が加害者にあり、政府が加害者へ求償する仕組みが別に用意されているためです。
試験では『政府は、同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した者からは、一部負担金を徴収しない』という記述が正しいものとして出題されています(則44条の2第1項3号)。一部負担金は最初の休業給付から控除されるものであり、2回目以降は控除しないという意味です。同じ災害について何度も200円を取られることはありません。
具体例
簡単にいうと
待期そのものは業務災害と同じ。違うのは、その3日間を誰も補償しないという点です。
休業給付が支給されるのは、3日間の待期が明けた第4日目からです。ここは休業補償給付とまったく同じです。
違うのは待期期間中の扱いです。業務災害の場合、待期の3日間については事業主が自ら労働基準法による休業補償を行わなければなりませんでした。ところが通勤災害の場合、待期の3日間について事業主に労働基準法上の休業補償の義務はありません。
理由は一部負担金のところと同じで、通勤災害には事業主の災害補償責任がないためです。労基法の休業補償はあくまで業務上の負傷等に対する使用者の責任として定められているものなので、通勤災害には及びません。
したがって、通勤災害で休業した労働者にとって、最初の3日間は無給になり得ます。もっとも、年次有給休暇を充てるなど、他の方法で対応することは可能です。
業務災害と通勤災害の違いは、名称・一部負担金・待期中の事業主の義務の3点に集約されます。逆にいえば、この3つ以外は業務災害で学んだ内容がそのまま使えるということです。
具体例
通勤中の負傷で3日間休んだ場合、その3日分について会社が労基法上の休業補償を行う義務はなく、労災保険からも支給されません。
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試験のポイント
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