労災保険のしくみと適用
労災保険は「労働者を1人でも使えば当然に適用される」のが原則です。ところが、ごく一部だけ例外があり、そこが試験で問われます。
この節では、事業の側から見た適用(強制適用事業と暫定任意適用事業)と、人の側から見た適用(誰が労災保険の保護を受けるか)を、それぞれ分けて整理します。
簡単にいうと
労災保険に「入るかどうか選ぶ」余地は基本的にありません。例外の枠がとても狭いのがポイントです。
労災保険は、原則として労働者を使用するすべての事業に強制的に適用されます。これを強制適用事業といいます。事業主が加入を希望するかどうかは関係ありませんし、届出を出していなくても法律上は適用されています。
例外が、暫定任意適用事業です。個人経営で規模の小さい農林水産の事業については、現在のところ強制適用の対象とされていません。この場合、事業主は厚生労働大臣の認可を受けることで労災保険に加入することができます。
ここで押さえておきたいのは、例外にあたるための条件が二重になっていることです。
・個人経営であること(法人はこの時点で強制適用)
・農林水産の事業であって、規模が小さいこと
法人であれば、たとえ農業でも、たとえ労働者が1人でも強制適用事業です。「農林水産業は任意適用」と大雑把に覚えてしまうと、この個人経営という縛りを落としてしまいます。
具体例
家族と数人の手伝いで営む個人経営の果樹園は暫定任意適用事業になり得ますが、同じ規模でも株式会社にした瞬間に強制適用事業になります。
試験のポイント
簡単にいうと
「労基法上の労働者かどうか」だけが基準です。それ以外の事情は、原則として関係ありません。
労災保険の適用対象となるのは、労働基準法上の労働者です。判断の物差しがこれ1本なので、そこから先の枝分かれはありません。
したがって、次のいずれであっても適用対象になります。
・パートタイム労働者、アルバイト
・日雇いで働く人
・日本国籍を有しない人
労働時間の長短も、契約期間の長さも、在留資格の有無も、労災保険の適用そのものを左右しません。労働者として働いている以上、災害から保護されるべきだという考え方が徹底されています。
この点は、加入要件に週の所定労働時間や見込み期間の縛りがある雇用保険や社会保険と大きく違うところです。労災保険には被保険者という考え方がないという特徴と、セットで理解しておくと定着します。
具体例
1日だけ紹介された日雇いの現場作業で初日に転落したとしても、労基法上の労働者である限り労災保険の給付の対象になります。
簡単にいうと
「どの会社の労災を使うのか」で迷いやすい2パターン。結論だけ先に押さえてしまいましょう。
まず派遣労働者です。派遣先の指揮命令で働いていても、労災保険の適用事業となるのは派遣元事業主です。したがって、派遣先の工場でけがをした場合でも、労災保険の関係では派遣元の事業について保険関係が成立していると扱われます。
安衛法では危険防止措置などの多くが派遣先の義務とされていたのに対し、労災保険では派遣元が適用事業になる、という違いは意識しておきましょう。
次に、2以上の労災保険の適用事業に使用される労働者です。この場合は、それぞれの事業における労働時間数に関係なく、それぞれの事業において労災保険法が適用されます。
つまり、A社で週30時間、B社で週8時間という働き方であっても、A社だけが適用されるわけではありません。どちらの事業でも適用があり、どちらで災害が起きたかによって扱いが決まります。時間数の多い方に一本化されるといった処理はしない、と押さえてください。
具体例
平日は物流会社の社員、週末はカフェのアルバイトという働き方をしているゆかりさんは、どちらの勤務中の災害でもそれぞれの事業について労災保険が適用されます。
試験のポイント
簡単にいうと
公務員には別の法律が用意されています。その隙間に落ちる人だけが労災保険を使います。
公務員には、労災保険法に代わる制度として国家公務員災害補償法や地方公務員災害補償法が用意されています。そのため、公務員には原則として労災保険法が適用されません。二重に補償する必要がないからです。
ただし、例外が1つあります。現業かつ非常勤の地方公務員には、労災保険法が適用されます。地方公務員災害補償法の対象から外れてしまうため、労災保険で保護する必要があるのです。
覚え方としては、「現業」と「非常勤」の2つがそろったときだけ労災保険、と押さえます。常勤であれば対象外ですし、非現業であれば対象外です。
試験では『労災保険法は、市の経営する水道事業の非常勤職員には適用されない』という誤りの選択肢が出題されたことがあります。市の水道事業は現業であり、そこで働く非常勤職員はまさに例外にあたるため、労災保険法が適用されます。
具体例
市営バスの運転業務に非常勤で従事しているひろしさんが乗務中に事故に遭った場合、労災保険法の適用を受けます。同じ市役所でも常勤の事務職員であれば地方公務員災害補償法の対象です。
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試験のポイント
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