障害と死亡に対する給付
傷病が治ったのに障害が残ってしまった。そのときに支給されるのが障害補償給付です。「治ったのに給付が出る」というのは不思議に感じるかもしれませんが、労災でいう治ゆとは、これ以上治療しても良くならない状態(症状固定)を指します。
この節は数字の量が多い分野です。日数の表を丸暗記する前に、年金と一時金の分かれ目、そして併合繰上げの考え方という骨組みを先に作ってしまいましょう。
簡単にいうと
障害補償給付は2種類。重さで年金か一時金かが決まります。
障害補償給付には2つの種類があり、障害の程度によってどちらが支給されるかが決まります。
・障害の程度が重い場合(障害等級第1級から第7級) … 障害補償年金
・障害の程度が軽い場合(障害等級第8級から第14級) … 障害補償一時金
障害等級は第1級から第14級まであり、数字が小さいほど障害が重くなります。重い障害が残れば働いて収入を得ることが長期にわたって難しくなるため、継続的に支払われる年金の形をとります。比較的軽い障害であれば、一度きりの一時金で対応する仕組みです。
境目は第7級と第8級の間です。「7と8の間で切れる」と押さえてください。
なお、障害補償給付は傷病が治った後の給付です。まだ治っていない段階で重い状態が続いている場合は、前の節で見た傷病補償年金の領域になります。治ゆの前か後かで、担当する給付が入れ替わると理解しておきましょう。
具体例
片方の手の指を複数失って第7級と認定されたひとみさんには障害補償年金が支給されますが、第8級であれば障害補償一時金として一度に支払われます。
試験のポイント
簡単にいうと
覚える数字が多いところ。両端の数字を先に固定すると、間が入りやすくなります。
障害補償年金の額は、障害等級に応じて次のとおりです。
・第1級 … 給付基礎日額の313日分
・第2級 … 277日分
・第3級 … 245日分
・第4級 … 213日分
・第5級 … 184日分
・第6級 … 156日分
・第7級 … 131日分
障害補償一時金の額は次のとおりです。
・第8級 … 給付基礎日額の503日分
・第9級 … 391日分
・第10級 … 302日分
簡単にいうと
障害が2つ以上残った場合の処理です。足し算ではなく、等級を繰り上げる方式をとります。
同時に複数の身体障害が残った場合、そのすべての障害に対して給付が行われるわけではありません。重いほうの身体障害に基づいて給付が行われます。これを併合といいます。
ただし、一定の重さの障害が複数残った場合には、併合ではなく併合繰上げという処理が行われます。重いほうの障害の等級が、最大で3つ繰り上がる仕組みです。
・第13級以上に該当する身体障害が複数残った場合 … 重いほうを1級繰上げ
・第8級以上に該当する身体障害が複数残った場合 … 重いほうを2級繰上げ
・第5級以上に該当する身体障害が複数残った場合 … 重いほうを3級繰上げ
13・8・5という3つの数字と、1級・2級・3級という繰上げ幅がセットになっています。重い障害が重なるほど繰上げ幅が大きくなる、という素直な設計です。
注意点は、判定に使うのは「複数の障害がいずれもその等級以上か」という点です。たとえば第4級と第5級の2つの障害が残った場合、いずれも第5級以上ですから3級繰上げとなり、重いほうの第4級から3つ繰り上がって第1級になります。
試験では、第4級と第5級の2障害がある場合の障害等級を第2級とする誤りの選択肢が出題されたことがあります。正しくは3級繰り上がって第1級です(則14条3項)。
簡単にいうと
年金を待っていられない事情もあります。そのための前借りの仕組みです。
障害が残った被災労働者は、社会復帰に際して自宅の改造や身体障害者用物品の購入などのために、まとまった資金を必要とすることが少なくありません。毎月の年金では間に合わない出費があるということです。
そこで設けられているのが障害補償年金前払一時金です。将来受け取る年金の一部を前倒しで受け取ることができます。
当然ながら、前倒しで受け取った分は後から調整されます。障害補償年金前払一時金の支給を受けた場合には、支給された額に年金の累計が追いつくまでの間、障害補償年金の支給が停止されます。
もう1つ重要なのが請求の回数です。障害補償年金前払一時金は、同一の支給事由について1回しか請求できません。何度も繰り返し前借りすることはできない、ということです。
具体例
車いすでの生活に備えて玄関のスロープ工事をしたいというりえさんは、障害補償年金前払一時金を請求してまとまった資金を確保できますが、後日追加で足りなくなっても再度の請求はできません。
試験のポイント
簡単にいうと
年金を受け始めてすぐ亡くなると総額が少なくなってしまいます。それを埋める制度です。
障害補償年金の受給権者が早期に死亡すると、その人が受け取った給付の総額はどうしても少ないものになってしまいます。そこで、残された遺族に対し、最低限、労働基準法における障害補償の水準を保障しようというのが障害補償年金差額一時金です。
保障される水準は障害等級によって異なります。たとえば第1級の場合は給付基礎日額の1,340日分です。仮に生前に2年分の年金として給付基礎日額の626日分を受けていたのであれば、その差額である714日分が障害補償年金差額一時金として支給されることになります。
受給権者となれる遺族は、次の順序で決まります。まず、労働者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹が先順位となります。次に、生計を同じくしていなかった配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹が後順位となります。
つまり、生計同一の6人が先、生計非同一の6人が後で、それぞれの中では配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹の順です。全部で12の順位があるという形になります。
この並びは、後で学ぶ遺族補償一時金の順位とは違います。混同しやすいので、それぞれ別物として覚えてください。
具体例
第1級の障害補償年金を2年受けたところで亡くなった場合、生計を同じくしていた配偶者が差額分の一時金を受け取ることになります。
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・第12級 … 156日分
・第13級 … 101日分
・第14級 … 56日分
覚え方のコツは、まず両端を固定することです。年金は第1級の313日分から第7級の131日分まで、一時金は第8級の503日分から第14級の56日分までです。
そして、第1級から第3級の313・277・245は傷病補償年金と共通です。ここは一度覚えれば2か所で使えます。
もう1つ、年金の第6級と一時金の第12級がともに156日分である点も、記憶の手がかりになります。日数だけを見て年金か一時金かを判断することはできない、ということでもあります。
具体例
給付基礎日額1万円で第9級と認定されたら、1万円 × 391日 で391万円が障害補償一時金として一度に支払われます。
試験のポイント
第9級と第11級の障害が残った場合は、いずれも第13級以上なので1級繰上げとなり、重いほうの第9級から繰り上がって第8級として扱われます。
試験のポイント
試験のポイント
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