賃金と退職金を守る仕組み
会社が倒産すれば、働いた分の賃金も退職金も宙に浮きます。賃金支払確保法は、そうなる前に備えさせ、そうなった後に国が肩代わりする、という2段構えの法律です。
目的条文は「景気の変動、産業構造の変化その他の事情により企業経営が安定を欠くに至った場合及び労働者が事業を退職する場合における賃金の支払等の適正化を図るため」と始まります。備えの側が保全措置、肩代わりの側が未払賃金の立替払です。
簡単にいうと
似た2つの保全措置ですが、語尾が違います。
保全措置は2つあります。
貯蓄金の保全措置
事業主は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入れであるときは、厚生労働省令で定める場合を除き、毎年3月31日における受入預金額について、同日後1年間を通ずる貯蓄金の保全措置を講じなければなりません。
退職手当の保全措置
事業主は、労働契約又は労働協約、就業規則その他これらに準ずるものにおいて労働者に退職手当を支払うことを明らかにしたときは、当該退職手当の支払に充てるべき額として厚生労働省令で定める額について、貯蓄金の保全措置に準ずる措置を講ずるように努めなければなりません。
語尾が決定的に違います。
・貯蓄金 … 講じなければならない(義務)
・退職手当 … 講ずるように努めなければならない(努力義務)
貯蓄金は労働者から預かっているお金そのものなので、確実に返せるようにしておく必要があります。一方、退職手当は将来支払う約束であって、いま預かっているお金ではありません。この違いが語尾の違いになっています。
基準日にも注意が必要です。貯蓄金の保全措置は「毎年3月31日における受入預金額について、同日後1年間を通ずる」措置です。年度末の残高を基準に、その後1年間カバーする形になります。
具体例
社内預金を預かっている会社は3月31日時点の残高について保全措置が必須ですが、退職金規程がある会社の積立ては努力義務にとどまります。
試験のポイント
簡単にいうと
使えるかどうかは、退職した時期で決まります。
未払賃金の立替払は、次の要件を満たすときに、当該労働者の請求に基づいて行われます。
・労働者災害補償保険の適用事業の事業主であること
・その事業主が1年以上の期間にわたって当該事業を行っていたものであること
・その事業主が破産手続開始の決定を受ける等一定の事由に該当することとなった場合であること
・当該事業に従事する労働者が、破産手続開始等の申立てがあった日等の6月前の日から2年以内に退職したこと
数字が3つ出てきます。事業を行っていた期間が1年以上、退職時期の範囲が申立日等の6月前の日から2年以内、そして請求が必要だという点です。
「6月前の日から2年以内」という期間の取り方に注意が必要です。申立ての前後にまたがる幅で、倒産の少し前に見切りをつけて辞めた人も救うという趣旨になっています。
労災保険の適用事業であることが要件になっているのは、この制度が労災保険の社会復帰促進等事業として運営されているためです。財源も労災保険から出ています。労働者が1人でもいれば労災保険は当然適用されるので、実際にはほとんどの事業が対象になります。
請求に基づいて行われる点も押さえておきます。自動的に支払われるものではありません。
簡単にいうと
全額は出ません。8割で、しかも上限があります。
立替払の対象となる未払賃金は、未払賃金総額(労働者の退職日における年齢に応じ、一定の額を上限とする)の100分の80に相当する額です。
上限は基準退職日における年齢によって3段階に分かれます。
・30歳未満 … 未払賃金額の上限110万円、立替払の対象額の上限88万円
・30歳以上45歳未満 … 未払賃金額の上限220万円、立替払の対象額の上限176万円
・45歳以上 … 未払賃金額の上限370万円、立替払の対象額の上限296万円
右列の額は左列の100分の80です。110万円×0.8=88万円、220万円×0.8=176万円、370万円×0.8=296万円という関係になります。左の数字さえ覚えれば右は計算で出せるということです。
左の3つの数字にも規則性があります。110万円→220万円はちょうど2倍、220万円→370万円は150万円増です。
年齢で区切っているのは、年齢が上がるほど賃金水準も家族への責任も重くなるためです。同じ倒産でも、45歳以上の人のほうが失うものが大きいという考え方になります。
判定は「基準退職日における年齢」で行います。請求時点の年齢ではありません。
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具体例
破産手続開始の申立てがあった3か月前に退職した人も、申立日の6月前の日から2年以内に入るため立替払の対象になります。
試験のポイント
具体例
48歳で退職した人に400万円の未払賃金があっても、上限370万円の100分の80である296万円までしか立替払を受けられません。
試験のポイント
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