賃金と退職金を守る仕組み
最低賃金法1条は、賃金の低廉な労働者について賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とすると定めています。
目的条文に「事業の公正な競争の確保」が入っているのが特徴です。安い賃金で人を使う会社が有利になってしまうと、まともに払っている会社が競争で負けます。最低賃金は労働者を守ると同時に、企業間の競争条件をそろえる役割も担っているということです。
簡単にいうと
日給や月給での表示は認められていません。ここが直接問われます。
最低賃金額は、時間によって定めるものとされています。以前は日によって定めることも可とされていましたが、現在は時間、すなわち時給での表記が義務化されています。
試験では、最低賃金法3条は最低賃金額を「時間又は日」によって定めるものとしている、という誤りの選択肢が出題されたことがあります。「又は日」の部分が誤りです。
効力についても押さえておきます。最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とされ、自動的に最低賃金額に引き上げられます。
この「無効となった部分は基準まで自動的に引き上げられる」という構造は、労働契約法の就業規則違反の労働契約と同じ形です。労働基準法13条の労働基準法違反の契約も同じ発想で、労働法にくり返し出てくる型になります。
なお、この法律における「労働者」「使用者」「賃金」の定義は、労働基準法のそれらと同じものです。労働契約法の「使用者」だけが狭かったのとは違います。
具体例
月給18万円で契約していても、労働時間で割った額が最低賃金を下回れば、その部分は無効となり最低賃金額まで引き上げられます。
試験のポイント
簡単にいうと
生計費・賃金・支払能力。労使双方の事情を見て決めます。
最低賃金は都道府県によって異なります。これを地域別最低賃金といいます。
地域別最低賃金は、次の要素を考慮して定められなければならないとされています。
・地域における労働者の生計費
・地域における労働者の賃金
・通常の事業の賃金支払能力
前2つは労働者側の事情、最後の1つは使用者側の事情です。生活できる水準を確保しつつ、企業が現実に払える範囲に収める、という両にらみの設計になっています。
生計費については、生活保護に係る施策との整合性に配慮する必要があります。これを怠ると、生活保護の水準を最低賃金が下回るという逆転現象が起きてしまうためです。働いて得られる額が生活保護より低ければ、働く意欲が損なわれてしまいます。
これとは別に特定最低賃金があります。労働者又は使用者の全部又は一部を代表する者は、地域別最低賃金の補完的役割を果たすものとして、関係労使の申出を受けた行政機関が最低賃金審議会の意見を聴いて、特定最低賃金の決定、改正若しくは廃止の決定をすることができるものとされています。
特定の産業について、地域別最低賃金より高い水準を労使の申出で設定する仕組みです。「補完的役割」という位置づけを押さえておきます。
簡単にいうと
特定最低賃金には最低賃金法の罰則がありません。裏道が用意されています。
罰則の構造がやや込み入っています。
地域別最低賃金額以上の賃金を支払わない場合
・使用者は50万円以下の罰金に処せられる(最低賃金法の罰則)
特定最低賃金以上の賃金を支払わなかった場合
・最低賃金法の罰則は適用されない
・ただし労働基準法24条の賃金の全額払違反となり、30万円以下の罰金に処せられる
特定最低賃金は労使の申出に基づいて設定されるものなので、最低賃金法自身の罰則の対象からは外れています。しかし、労働契約の内容として特定最低賃金が適用される以上、それを下回れば賃金の一部を払っていないことになり、労働基準法の全額払違反になるという理屈です。
金額を並べると、地域別が50万円、特定が30万円です。全国一律で守らせる地域別のほうが重くなっています。
申告の制度も置かれています。労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができます。
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具体例
同じ仕事でも東京都と地方の県では最低賃金が違うのは、生計費や通常の事業の賃金支払能力が地域ごとに異なるからです。
試験のポイント
具体例
特定最低賃金を下回る賃金しか払わなかった会社は、最低賃金法ではなく労働基準法の全額払違反として30万円以下の罰金の対象になります。
試験のポイント
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