集団的労使関係と紛争の解決
不当労働行為は、使用者が労働三権を実質的に奪おうとする行為を4つの類型で禁じたものです。条文だけを読むと抽象的ですが、判例が具体的な線引きを示しているため、判例とセットで押さえるのが早道になります。
あわせて、労働協約が組合員以外にまで及ぶ一般的拘束力もこの節で扱います。4分の3という数字が出てくるので、労働組合法の中でも数字として問われやすいところです。
簡単にいうと
「援助」に当たるかどうかは、お金の出どころで決まります。
使用者は、次のような行為(不当労働行為)をしてはなりません。
❶労働者が労働組合の組合員であること等を理由に、その労働者を解雇し、その他その労働者に対して不利益な取扱いをすること
❷労働者が労働組合に加入しないこと等を雇用条件とする契約を結ぶこと
❸使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと
❹労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること
❶が不利益取扱い、❷が黄犬契約、❸が団体交渉拒否、❹が支配介入と経費援助です。
❹の「経理上の援助」は、線引きが問われます。
経理上の援助に該当するもの
・組合用務のための出張旅費、手当を支給すること
・組合専従役職員の賃金を負担すること
経理上の援助に該当しないと考えられているもの
・就業時間中の労使間の協議や団体交渉に対し、その間の賃金を差し引かないこと
・組合費を組合員の給与から差し引いて組合に渡すこと(チェック・オフ)
分かれ目は、組合の活動費そのものを会社が肩代わりしているかどうかです。組合専従者の給料を会社が払えば、組合は会社に頭が上がらなくなります。一方、団体交渉の時間の賃金を引かないことや、チェック・オフは、組合の財政を会社が支えているわけではありません。
団体交渉拒否については、範囲が広く取られています。使用者はその雇用する労働者が加入している労働組合であれば、いわゆる地域合同労組など企業の外部を拠点に組織されている労働組合との団体交渉にも応ずる義務があり、これを正当な理由がなくて拒否すれば不当労働行為となります。社内に組合がないから応じなくてよい、とはならないということです。
具体例
組合の専従役員の給料を会社が払えば経理上の援助になりますが、団体交渉に出た時間の賃金を控除しないことは援助になりません。
試験のポイント
簡単にいうと
2つの組合があるときは、どちらにも同じ態度で臨む必要があります。
複数の組合がある場合の使用者の態度を示したのが日産自動車事件です。
判決は、複数組合併存下にあっては、各組合はそれぞれ独自の存在意義を認められ、固有の団体交渉権及び労働協約締結権を保障されているものであるから、その当然の帰結として、使用者はいずれの組合との関係においても誠実に団体交渉を行うべきことが義務づけられているとしました。
さらに、単に団体交渉の場面に限らず、すべての場面で使用者は各組合に対し中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重すべきものであり、各組合の性格、傾向や従来の運動路線のいかんによって差別的な取扱いをすることは許されないと述べています。
押さえどころは2つです。
・いずれの組合とも「誠実に」団体交渉を行う義務がある
・団体交渉の場面に限らず「すべての場面」で中立的態度を保持する
多数派組合とだけ話をして少数派組合を軽く扱う、といった対応が禁じられるということです。
次に、使用者の発言がどこから支配介入になるかを示したのがプリマハム事件です。
判決は、組合に対する使用者の言論が不当労働行為に該当するかどうかは、言論の内容、発表の手段、方法、発表の時期、発表者の地位、身分、言論発表の与える影響などを総合して判断し、当該言論が組合員に対し威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼすような場合は支配介入となるとしました。
簡単にいうと
組合に入っていない人にも適用されることがあります。
労働協約には2つの効力があります。
基準の効力(規範的効力)
労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効とされます。この場合において無効となった部分は、基準の定めるところによります。
注意したいのは「違反する」部分が無効になるという書き方です。労働協約よりも有利な労働契約についても認められないということになります。就業規則の場合は「基準に達しない」部分が無効となり、有利な契約はそのまま有効でした。労働協約は上にも下にもはみ出せない、という違いがあります。
一般的拘束力
一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が拡張適用されます。
試験では、労働協約はそれを締結した労働組合の組合員の労働契約を規律するものであり、当該労働組合に加入していない労働者の労働契約を規律する効力をもつことはあり得ない、という誤りの選択肢が出題されたことがあります。一般的拘束力により、組合に加入していない労働者にも及ぶことがあります。
4分の3という数字は、労働基準法の労使協定の締結当事者(過半数)や、就業規則の意見聴取(過半数)とは違います。労働組合法の一般的拘束力だけが4分の3です。
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試験では、この内容がそのまま正しいものとして出題されています。
使用者にも言論の自由はありますが、経営者という立場からの発言は組合員に強い影響を与えます。総合判断のうえで「威嚇的効果」が認められれば支配介入になる、という枠組みです。
具体例
社長が朝礼で「組合に入ると評価に響く」と述べれば、内容と立場から威嚇的効果があるとして支配介入になり得ます。
試験のポイント
具体例
300人の工場で240人が加入する組合の労働協約は、残る60人の同種の労働者にも適用されます。
試験のポイント
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