集団的労使関係と紛争の解決
テキストは第3章の冒頭で「労働組合法と社会保険労務士法は、試験での登場頻度も高いので、完全にマスターしたい」と案内しています。労一の中でも得点源にしやすい2つが、この章に並んでいます。
労働組合法は、日本国憲法で保障されているいわゆる労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を具体化するための法律として位置づけられています。まずこの3つの権利を押さえ、そのうえで「労働者」の定義が労働基準法とどう違うかを確認するのが近道です。
簡単にいうと
組合を名乗れば組合になる、というわけではありません。
労働三権は次の3つです。
・団結権 … 労働者が労働条件の維持や改善のために団結する権利
・団体交渉権 … 労働者が労働条件の維持や改善のために団結して使用者と交渉する権利
・団体行動権 … 労働者が労働条件の維持や改善を求めて使用者に対してストライキなどを行う権利
労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいいます。
キーワードは「労働者が主体」「自主的に」「主たる目的」の3つです。この裏返しとして、労働組合と認められない団体が出てきます。
・解雇・昇進等の直接的権限を持つ監督的地位にある者が参加するような団体 …「自主的」でなくなる
・政治運動や社会運動がメインになってしまっている団体 … 経済的地位の向上が「主たる目的」でなくなる
政治活動との関係を示したのが国労広島地本事件です。判決は、政党や選挙による議員の活動は労働者の生活利益とは関係のない広範な領域にも及ぶものであるから、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかは投票の自由と表裏をなすものとして、組合員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断ないしは感情等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるとしました。
そのうえで、労働組合が組織として支持政党又はいわゆる統一候補を決定し、その選挙運動を推進すること自体は自由であるが、組合員に対してこれへの協力を強制することは許されないと判断しています。
決めることは自由、強制はできない。この線引きがそのまま結論になります。
具体例
組合が支持候補を決めて選挙運動をするのは自由ですが、組合員に投票や運動への参加を義務づけることはできません。
試験のポイント
簡単にいうと
労働基準法の定義と1語違うだけで、範囲がぐっと広がります。
労働組合法で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいいます。
労働基準法の「労働者」は、職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます。
並べると違いがはっきりします。
・労働基準法 … 事業に「使用される者」であること
・労働組合法 … 「使用される者」という要件がない
この1点の違いから、次の結論が導かれます。
・現在失業中の者も労働組合法上の労働者に含まれる
・使用従属関係が求められないため、プロスポーツ選手なども労働組合法上の労働者に該当する
試験では、プロ野球選手、プロサッカー選手等のスポーツ選手は労働組合法上の労働者に当たらないため、これらのスポーツ選手が労働組合を作っても団体交渉を行う権利は認められない、という誤りの選択肢が出題されたことがあります。プロスポーツ選手は労働組合法上の労働者に該当するので、労働組合を作ることができ、団体交渉を行う権利があります。
簡単にいうと
ストライキで損害が出ても、賠償を請求できません。
団体交渉の当事者について、労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者(代理人)は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有します。
ここで社会保険労務士の関わり方が問われます。社会保険労務士はこの「代理人」になることはできませんが、例えば打ち合わせに参加するなど、代理行為を行わない範囲で関与することはできます。
免責特権は2つあります。
刑事免責
労働組合法1条の目的を達成するためにした労働組合の団体交渉その他の正当な行為は、刑法における正当行為として違法性が否定されるため、刑罰を科されません。ただし、暴力の行使はいかなる場合においても、労働組合の正当な行為と解釈されてはなりません。
民事免責
使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものによって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができません。
例えば、ストライキによって会社の生産や売上が低下したり、得意先に納品ができなかったために損害賠償を請求された場合であっても、それを労働組合に賠償請求することはできません。
2つの免責に共通するのは「正当な」という限定です。正当でない行為、とりわけ暴力の行使は免責されません。ストライキは労働者に認められた武器ですが、無制限ではないということになります。
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具体例
解雇された人が地域合同労組に加入して復職を求めて団体交渉することも、労働組合法上は保護されます。
試験のポイント
労働協約についても押さえておきます。労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生じます。口頭の合意では効力が生じません。
期間には上限があります。労働協約には3年を超える有効期間の定をすることができず、3年を超える定をした労働協約は3年の有効期間の定をしたものとみなされます。
有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書によって相手方に予告して解約することができます。この予告は、解約しようとする日の少なくとも90日前にしなければなりません。
具体例
正当なストライキで納品が遅れて取引先から違約金を請求されても、会社は組合に賠償を求められません。
試験のポイント
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