均等・両立支援の法令
男女雇用機会均等法1条は「法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり」という言葉から始まります。憲法14条1項を雇用の分野で具体化した法律だということです。
もうひとつの柱が母性の保護です。この法律は、雇用の現場における男女の機会均等について規定しているのはもちろんのこと、妊娠中及び産後の各種健康管理措置についても規定しています。差別の禁止と母性保護という2本立てで押さえると全体が見えてきます。
簡単にいうと
同じ差別禁止でも、場面によって条文の書きぶりが変わります。
直接差別の禁止は、場面によって2つの書き方に分かれています。
・募集及び採用 … 事業主は、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない
・配置、昇進、降格及び教育訓練、職種及び雇用形態の変更等 … 事業主は、性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない
募集・採用の段階ではまだ労働者ではないので「機会を与える」という形になり、雇い入れた後は「取扱いを差別しない」という形になる、という違いです。
禁止されるのは女性への差別だけではありません。男性に対する差別も同じように禁止されます。かつては女性保護の色が濃い法律でしたが、現在は双方向の規定になっています。
この原則には例外が置かれています。ポジティブ・アクションです。8条は「前3条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない」と定めています。
つまり、女性労働者と男性労働者との間に事実上の格差が生じている状況を改善する目的で行う、女性のみを対象にした措置や女性を有利に取り扱う措置は法違反となりません。認められるのは、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない(4割を下回っている)場合です。
女性を優遇することが違法にならないのはこの場合だけで、格差がないのに女性だけを優遇すれば男性差別になります。
具体例
女性管理職が全体の2割しかいない会社が、管理職候補の研修を女性のみ対象に行うことは、ポジティブ・アクションとして認められます。

性別・年齢・障害の3法を並べた表。年齢だけが採用後の待遇について規定を持たない点が最大の狙われどころです
試験のポイント
簡単にいうと
性別と書いていないのに、結果として女性を締め出してしまう条件があります。
一見すると性別による差別にみえない措置でも、次の3つについては間接差別となるとされ、事業主はこれを講じてはなりません。
❶労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの(身長・体重・体力要件)
❷労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であって、住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの(転勤要件)
❸労働者の昇進に関する措置であって、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの(転勤経験要件)
3つを覚えるコツは、対象となる場面が広がったり狭まったりする点に注目することです。
・❶身長・体重・体力 … 募集又は採用のみ
・❷転勤に応じられること … 募集若しくは採用、昇進又は職種の変更
・❸転勤経験があること … 昇進のみ
❷の具体例は「転勤に応じられることが入社の条件」とすること、❸の具体例は「転勤をしたことがないから、この人は昇進させられない」といった扱いをすることです。
簡単にいうと
妊娠をきっかけに降格させるのは原則アウト。ただし2つの抜け道があります。
事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として解雇してはなりません。
また、事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業を請求したり実際に取得したりした等を理由として、その女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。
この規定の射程を示したのが広島中央保健生活協同組合事件です。判決は、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は原則として禁止する取扱いに当たるとしたうえで、次の2つの場合には当たらないとしました。
・当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき
・降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、規定の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき
1つ目は本人の自由な意思、2つ目は業務上の必要性です。どちらも「客観的に」「特段の事情」といった重い言葉で限定されており、簡単には認められません。
本人が形だけ承諾書に署名していても、それだけでは足りません。有利な影響と不利な影響の内容や程度、事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして判断されます。
簡単にいうと
相談した人を不利に扱わないこと。これがセットで規定されています。
事業主は、労働者が「対価型のセクハラ」や「環境型のセクハラ」を受けることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
・対価型 … 直接的に労働条件(解雇、減給、異動)の不利益を受けること
・環境型 … 性的な言動により、労働者の就業環境が不快なものとなり能力の発揮に重大な悪影響が生じること
マタハラについても同様の措置義務があります。事業主は、職場において行われる女性労働者に対する、妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業を請求したり実際に取得したりしたことなどに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
これとセットで置かれているのが不利益取扱いの禁止です。事業主は、労働者が相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。セクハラ・マタハラのどちらにも同じ規定があります。
相談者だけでなく、調査に協力して事実を述べた人も守られる点が重要です。目撃者が証言をためらえば、制度そのものが機能しなくなるからです。
母性保護の措置も2つ置かれています。
・保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない
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試験では、男女雇用機会均等法7条には労働者の募集又は採用に関する措置であって身長、体重又は体力に関する事由を要件とするものが含まれる、という記述が正しいものとして出題されています。
具体例
警備の仕事で「身長170cm以上」を募集の条件にすると、業務上の必要性を説明できない限り間接差別に当たります。
試験のポイント
妊娠して軽易な業務に移った職員を副主任から外した場合、本人が十分な説明を受けたうえで自由な意思で承諾したと認められなければ違法になります。
試験のポイント
・その指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない
体制面では、事業主は、この法律に定める各種措置等の適切かつ有効な実施を図るための業務を担当する者として、男女雇用機会均等推進者を選任するように努めなければなりません。こちらは努力義務です。
具体例
セクハラの相談をした社員を閑職に異動させれば、それ自体が不利益取扱いとして禁止に触れます。
試験のポイント
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