個別の労働契約をめぐるルール
平成5年に施行された「パートタイム労働法」は、日本の経済や社会に重要な役割を果たすようになった短時間労働者の働く環境を整備するものでした。その後、いわゆる働き方改革関連法により有期雇用労働者も保護の対象に加わり、法律の名称も「パートタイム・有期雇用労働法」へと改称されて令和2年4月から施行されています。
この法律の中心にあるのが、いわゆる同一労働同一賃金の考え方です。8条と9条という2つの条文が、それぞれ違う角度から待遇の差を規制します。この2つの違いが最大の出題ポイントになります。
簡単にいうと
定義がゆるいので、思ったより広い範囲が対象になります。
短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者をいいます。
「比し短い」だけが要件です。何時間以上短くなければならない、という下限がありません。したがって、わずかでも短ければ短時間労働者に当たります。週40時間の会社で週39時間半働く人も短時間労働者です。
比較の相手は「同一の事業主に雇用される通常の労働者」です。他社の水準や法定労働時間ではなく、その会社の正社員の所定労働時間と比べるということです。
有期雇用労働者も、令和2年4月からこの法律の対象になりました。フルタイムで働く契約社員は短時間労働者ではありませんが、有期雇用労働者としてこの法律の保護を受けます。
雇入れ時には特別な明示義務がかかります。事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、労働基準法の労働条件明示とは別に、速やかに、次の特定事項を文書の交付等により明示しなければなりません。
❶昇給の有無
❷退職手当の有無
❸賞与の有無
❹短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する相談窓口
4つとも「ある・ない」を明らかにさせる項目です。金額まで示す必要はなく、制度の有無をはっきりさせるという趣旨になります。
具体例
所定労働時間が週40時間の会社で週38時間勤務する人も、2時間短いだけで短時間労働者に当たります。
試験のポイント
簡単にいうと
似た2つの条文ですが、対象も効果も違います。
8条は不合理な待遇の禁止です。事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、次の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはなりません。
・当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(=職務の内容)
・当該職務の内容及び配置の変更の範囲
・その他の事情
すべての短時間・有期雇用労働者が対象です。禁じられるのは「不合理と認められる相違」であって、合理的な相違であれば許されます。
9条は差別的取扱いの禁止です。事業主は、次の要件を満たす者(=通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて差別的取扱いをしてはなりません。
・職務の内容が通常の労働者と同一であること(職務内容同一短時間・有期雇用労働者)
・当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれること
簡単にいうと
「なぜ違うのか」を説明させる。それだけでも待遇は動きます。
短時間・有期雇用労働者は、通常の労働者に比べ労働時間や職務の内容が多様であり、その労働条件が不明確になりやすいため、通常の労働者の待遇との違いを生じさせている理由がわからず、不満を抱く場合も少なくない状況にありました。
そこで、事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、下記の項目に関する措置について、具体的に短時間・有期雇用労働者に説明しなければなりません。
・不合理な待遇の禁止
・通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止
・通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者以外の短時間・有期雇用労働者の待遇
・通常の労働者への転換
体制についても定めがあります。事業主は、常時10人以上の短時間・有期雇用労働者を雇用する事業所ごとに、指針に定める事項その他の短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項を管理させるため、短時間・有期雇用管理者を選任するように努めるものとされています。
就業規則についても手続が置かれています。事業主は、短時間労働者に係る事項についての就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めなければなりません。有期雇用労働者にも同様の規定があります。
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8条は「不合理な差はだめ」、9条は「差そのものがだめ」。対象の広さと効果の強さがちょうど逆になっていると覚えると整理しやすくなります。
この同一労働同一賃金の考え方は、労働者派遣法にも同様の規定として置かれています。
具体例
同じ仕事をしていても転勤の範囲が違うパートには8条の枠で差が許されますが、転勤の範囲まで正社員と同じパートには9条で差が一切許されません。

8条と9条の対比図。対象の広さと効果の強さがちょうど逆になっていることが一目で分かります
試験のポイント
具体例
短時間労働者を12人雇う店舗では短時間・有期雇用管理者を選任するよう努め、パート向けの就業規則を変えるときはパートの過半数代表の意見を聴くよう努めます。
試験のポイント
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